仮に、不正選挙が行われておらず、投票率も公式発表通り低く、今回自民を勝たせた参議院選挙での得票数が総務省の発表通りだったとして、それでもこのように自民以外の党や候補に入れた人の方が多かったのはご存知のとおりです。

クリックでリツイートできる画面に飛びます。


”自民党は得票数で500万票も負けていた。
 野党票2767万票 52.1% 自民党2268万票 42.7% ”

テレビが何度も何度も何度も連呼したような”圧勝”でしょうか(-。-;)

この選挙区での得票数が多かった党が有利になるルールで全国比例も決められてしまうため、たとえば17万6千票以上得票して比例の個人名では26番目(定員180名中)であった三宅洋平氏が落選したり、7万票で一度は選挙区で落選していたはずのワタミの渡辺美樹氏が自民候補として繰り上げ当選したりしたのはご存知のとおりです。

6割という過半数の議席を単独で勝ち取ったという自民党ですが、得票数そのものは、毎回少しずつ減っており、今回は有権者の3割しか支持していないのです。

つまり、多数決ではなくて少数決
升永英俊


前回投稿で登場した升永英俊(ますながひでとし)弁護士に言わせれば、

「国民少数決によって選ばれた国会議員に指名された首相は、無資格なんです」

「日本という国は、国家権力を行使する正当な資格を持たない人が国会議員をやり、その無資格国会議員が選んだ無資格首相が憲法を改正しようとしている、デタラメ国家なんだよ」


ということになります。

で、升永さんが率いる弁護士グループは前述のように47都道府県すべての選挙区で、一人一票の平等が実現されていない今回の選挙を無効とするための提訴が行われたわけですが、これは過去の「一票の格差是正」を求める裁判とは位置づけが違います。

格差是正どころではなく、一人一票が実現しないならば、民主国家として国が機能していない、即ち、この国に民主主義を確立するための闘いなのです。(一度も確立していないので、「取り戻す」のではありません。)

いまの公職選挙法を正す必要があるわけですが、この不平等のお陰で議員なれた人たちで構成する国会には是正する能力も動機もありません。そもそも”紛争の「当事者」は『紛争を解決するための審判官』にはなれない”わけです。

このことは、日弁連の雑誌、自由と正義(2009年8月号)に寄稿された、升永さんの「一票の不平等についての一考察(PDF)」に出てきます。




提訴しているのは、現行の公職選挙法が違憲で無効だという視点からなので、

”『衆議院選挙で最大・2倍強、衆議院選挙で最大・4倍強の「一票の不平等」を定める公職選挙法の下で当選した国会議員が、国会議員としての地位を有しているか否か』という争点との関係では、「一票の不平等」のお陰で当選した国会議員は、正に「当事者」である”

わけです。(数値は2009年のものですが、2013年7月の選挙でもこの格差はあまり変わりません。)

我々有権者が投票で選んだはずの国会議員には、公選法を変える力も動機もないわけです。

制度自体が、多数政党が次の選挙でも有利になるようにできていますが、共産党以外の党は「政党助成金」などというふざけたものを税金の中から議員数に応じて受け取ることができます。これまでみてきたように、マスコミを操るカネの力でも大政党がダントツになるわけです。

では、どうしたらいいのか。

日本がまだ法治国家の体を辛うじてなしているとすると、これを変えられるのは司法だけなのです。


最高裁は、違憲立法審査権を有している。最高裁は、「『一票の不平等』を定める公職選挙法は、違憲・無効である」との判決を下すことによって、公職選挙法を無効にできる。このように、最高裁は、「一人一票」という「法」を「支配」させる力、すなわち、違憲立法審査権(憲法81条)を持っているのである。この最高裁の違憲判決が、有権者のレベルで、「少数決」ではなく、「多数決」で、立法できるように、公職選挙法を変える『魔法の鍵』である。

そして、最高裁の裁判官の審査を行うのは国民、すなわち有権者なのです。

ただし、これまでは裁判官についての情報を与えられることなく、また、バツ印を記入しなければ積極的に信任したことになってしまうことも十分知ることなく、有権者の多くが「審査」すなわち投票してきました。

升永さんは、この裁判官の”国民審査権は、日本国民の『参政権』である”と言います。

ここでは現在でも100%一人一票という憲法が保障する平等が守られ、私たち、つまり

日本国民(有権者)は、憲法79条2項、3項に基づき、それぞれ、最高裁判所裁判官に対する『国民審査権』(すなわち、全国の投票済有権者の過半数の不信任投票により最高裁裁判官を罷免する権利)を有する

のです。

"VIII 最後に"をそのまま引用します。

1 最高裁裁判官に対する国民審査権(憲法79条)は、日本の現状の下では、「一人一票」の民主主義を実現するための唯一の手段である。

2 司法は違憲立法審査権という「法の支配」の実現手段を行使して、日本を『一人一票』を土台とする民主主義国家に対する使命を負っている

3 多くの国民は、これまで、最高裁裁判官に対する国民審査の際の投票用紙にX印を記入する行為が、『参政権』の行使であることを知らなかった。国民は、「国民審査の際の要旨への記入行為が『国民審査権』の行使である」と知るべきである。

4 「一人一票」未満の「一人前以下の日本人」も「一人一票」の「一人前の日本人」もない。皆同じ「一人一票」の「一人前の日本人」である。同じ日本国民の中に、1票未満の「二流市民」があってはならない

5 我々日本人は、自覚的に「国民審査権」を行使することによって、日本を民主主義国家に変えるという歴史の1頁を開くことができる。現在と将来の日本のために。


ここまで読まれても、まだ、「どうせ弁護士は…」とか、「どうせ何も変わらない」と思われる人が多いと思います。

でも、升永さんの人となりや考え方、今後の具体的戦略を読んでも同じでしょうか。

本気で国会をひっくり返すのは、青色LED裁判で闘った辣腕弁護士

別ブログの記事ですが、アエラ7.29号の記事4ページ分の写真(原寸大拡大可能)を貼って、書き起こしリンクもつけています。

今回の参院選について、7月22日に47都道府県で起こした訴訟のうち前回衆院選の提訴と同じ14の高裁で選挙違憲・違法・無効などの判決が勝ち取れると升永さんは見ています。そして今後の戦略も考えてあります。

ちょっと抜き出します。

”…さらに2016年の参院選では、300小選挙区のすべてで提訴を予定している。悉皆で提訴するのは、事情判決の法理を封じるためである。

だが、仮に最高裁が違憲無効判決を出したとしても、国会は弥縫的な数字で合わせてお茶を濁すだろうと升永は読む。そこで、少人数で第1次の国家賠償訴訟を起こす。

国家公務員である国会議員の不作為に対する訴訟だ。これに勝訴したら、今度は新聞の意見広告に委任状を印刷して一般市民の代理人を無料で請け負う

仮に2千万人の委任状を集めて勝訴し、原告ひとり当たり5千円の賠償金を勝ち取れば、賠償金の総額は1千億円にも達する。国は個々の国会議員に求償できるから、もしそうなれば、国会議員の個人資産が差し押さえられる事態になる。”


司法にしかできないことを進めてくれているわけですが、これは我々自身の闘いととるべきです。現在の最高裁では15人のうち公選法をそのまま認めて、選挙やり直しを命じない裁判官が過半数いるからこその目に余る現状です。このままでは、この先、我々一般市民が新聞の委任状を切り抜いて、無料で一流の弁護士たちに代理人として訴訟に立ってもらうことになります。

最高裁の判決は中長期では市井の状況が影響します。ご存知のとおり、裁判官にも為政者にとって都合のいい人間が追加されていくわけですが、まだ全員買われているわけではありません。利権層から圧力を受けていても、国民が関心を持って見ている限り、民意を全く無視するような判決はできません。

また、今回の動きは、ニューヨークタイムスやエコノミストなどを通して、海外の法曹界からも注目されています。日本が民主主義を確立できるかどうかに関わる裁判で、どういう判決を下したかは歴史に残るようになるのです。


AERA 2013年 7/29号