永井豪 鬼-2889年の反乱-
先日デビルマンの記事を書きましたが、今日は同作者の短編漫画鬼-2889年の反乱について書きます!前回、作者の別の作品読む気はないとか書きましたが・・・コレはデビルマン以前の作品なので・・・ネタバレ注意です29世紀驚異的な文明の進歩が人間を仕事から解放し生命の神秘をも解き明かし無機質からの合成による完全なる「人間」を作り出すことに成功した。人間は人間と合成人間を見分けるため、彼らに「角」をあたえ彼らを「鬼」とよんだ。グリアスという男は人間が鬼を殺してもいいという法律がなくならないこと、それは十数世紀前の奴隷の時代と変わらないこと、人間は働かなくてよくなり暇をもてあまし、刺激を求めて鬼を道具のように扱っていることを嘆く。鬼たちは人間によってローマ時代の剣闘士のように殺し合いをさせられ、野獣の檻へ投げ込まれ、スポーツ競技として裸で森の中へ放たれ猟犬に追われ、狩られた。「鬼はきみたちではない。人間の心こそが血に狂った鬼だ」と、家に住まわせている鬼の青年に話すグリアス。鬼の青年は、このような時代に鬼をかばっていてくれる人が私のそばにいてくれて幸せですと涙を流した。そんな鬼の青年はグリアスの娘と恋に落ちるが鬼は人間に作られた。鬼にとって人間は神。神である人間と結婚することなどできない。そう言う青年に娘は「あなたのように立派な人はいない。父だってわかってくれる」と青年を説得する。しかし、鬼が虐げられている時代を嘆いていたグリアスは手のひらを返したように鬼の青年を詰った。「鬼が!人間のような生活をさせてやったらのぼせやがって!娘をたぶらかしたな!」娘は「パパは人と鬼は平等と言った。それならば自分の娘をやれないはずがない!偽善者だ!!」と反抗する。屋敷から追い出される鬼。なぜ俺は人間のいうことをきかねばならない。俺は、いや、俺たち鬼は自分の意志で生きたことがあるのか!人間に作られたといっても鬼は機械じゃない!人間と同じ感情をもった生き物だ。喜びも悲しみも知っている。生き物なら生き物らしく、自分の意志で生きてやるっ屋敷に戻り娘を連れ出そうとする鬼。鬼の分際で人間に逆らう気かというグリアスに「鬼は人間だ!!」と殴りかかり、娘とともに屋敷を去った。三年後平和に暮らしていた鬼と娘のもとに娘を奪い返そうとグリアスが部下を率いて訪れる。「私たち子供がいるんです。あなたの孫です、抱いてあげてください」娘が抱える、娘に良く似たかわいい孫。その子がかぶっている帽子。その帽子を取ると、その子には角があった。鬼だと発狂するグリアス。壁に叩き付け、床に落ちたところを銃で撃つが、子をかばった娘の首が飛ぶ。「殺したな・・・妻を、子を」と涙を流す鬼に、「お前のせいだ!お前が殺したんだ!お前が鬼のくせに美しく作られたから・・・お前が醜く作られていれば娘はこいをせずにすんだものを」そういって鬼の顔を刃物で醜く切り刻む。そして鬼は剣闘士にさせられた。そこで毎日毎日、仲間を、同士を、親友を殺した。生きるために。復讐するために。そして時を経て・・・鬼たちはついに反乱を起こし都市を襲撃する。グリアスの妻子の首を手に彼の前に現れる鬼。「お前はとうとう本当の鬼になったのか!!」と罵るグリアスに「俺の心を鬼にしたのは貴様ら人間だ!」と鬼。そこへ仲間の鬼が人間が非常時に隠していた軍隊のせいで反乱軍が敗走しはじめたことを告げる。笑うグリアス。人間が虫けらである鬼に負けるはずがないと。死ね化け物!!と、鬼はグリアス首を吹っ飛ばす。しかし次々に人間にやられていく鬼の反乱軍。敗走の道をすすむ鬼たち。つかまった鬼たちは次々と虐殺され、反乱に参加した鬼たちはひとり残らず殺されるだろう。いまの人間の科学力には勝てない!いまの人間の・・・そうだ!今の人間には勝てない。しかし文明の進んでいない過去の人間になら勝てる!地球文明を未開のままに終わらせるのだ!こんな時代が来ないように!西暦1000年代天皇家と藤原氏によって栄えていた王朝貴族の文化平安京そこに未来から来た鬼たちが足を踏み入れ人間を抹殺していくしかしいつの時代もそうであるように、人間同士の醜い争いはすでに鬼があらわれる前から現出していたことは言うまでもない。人間を老若男女問わず殺しまくって鬼はふと思う。未来の人々が俺たちにとって悪鬼だったように、古代の人々にとって俺たちは残虐極まりない、完全な鬼なのだ。だが人類の歴史は抹消しなければならない鬼になりきって あくまで殺戮をつづけねばならないそして西暦19××年未来人が鬼によせた偏見と侮蔑それとまったくおなじ行為がおこなわれていないと断言できるひとはいるだろうか「そんな人はいないさ」とヒューマニズムにあふれたような、そしてひとごとのような顔でアメリカにおける黒人問題をあげるのはやさしいだがもっと身近な自身の周囲いや、自分自身をほんとうに見つめたときいったいあなたは何を見 いや何を感じるだろうかあなたの一つ一つの行為が未来においてだれを追い詰め誰かをあのはてしなき殺戮にかりたてようとしてはいないだろうかいやすでに現実において人類の歴史を抹消する殺戮がはじめられ私たちのあすがいやきょうまでもがなくなってしまわないと誰が保証できるであろうか・・・完1970年の作品