三日目*ゲネプロ | 心と体をラクにするピアノ奏法

心と体をラクにするピアノ奏法

ピアニストでピアノ講師の荒井千裕が
ピアノの奏法、呼吸法、身体の使い方をお届けします。

昨日のお話のとおり、私が一番。


ゲネプロ=総通し練習だけど、昨日細かく詰められなかった分、私の時は駒切れにピアノ・オケ共に練って行きました。

「もっとそこはねばって!」だの「もっとそこ音出して!」
「そこ、音価通りに弾かないで!」などという指示が私に。

オケメンには「シューマンのピアコンは、ピアノと各楽器、特にチェロ、オーボエ、クラリネットのソロの掛け合いあので、皆さんそれぞれがオケの一員ではなくソリストのように、自由に思い切り歌ってください。」と。


つまり、自分で思っている以上に、過剰なくらいに!だ。

エレノア先生が常々仰っている事と同じだ。


私はここにきて、ようやく

「オケと合わせること(アンサンブルをすること)」の極意と言ったら大げさかもしれないけれど、その一番大事な事がわかった気がする。

ピアノだけでコンチェルトのレッスンを受けていた時と、実際にオケと合わせるのでは違う。そりゃそうだ、だけど。

ご自身もオケとコンチェルトの経験を多く持ち、優れた弟子たちは毎年プロオケとコンチェルトを競演している(それをご指導されている)師匠だけれど。


つまり、コンチェルトをやるにあたり必要なことは

・自分自身の音楽表現の確立

だけじゃなく!

指揮者さんのその曲に対する想いとソリストの想いと、オケの各パートの方々の想いをぶつけ合い、より良い音楽を皆で創り上げて行くわけで、ソリストも指揮者も絶対ではないのだ(と、思った)。


私がこの三日間、何度も指揮者さんに言われたことは

「指揮に合わせなくていい。
 もちろん、キメ・ポイントは見てもらわないと困るけども。
 指揮者は、その先を予測して(ソリストの演奏を聴きながら)
 振っているのだから、それに合わせられると、ソリストの基盤の流れが滞る。」

と言うような事を、言い方は違ったと思いますがニュアンスはこんな感じで。



「ココは(テナーは)メロディだから、ココを出す、ここのラインを大事に」と

師匠に言われていたフレーズも、実際にオケと合わせてみれば・・・


同じフレーズをまずピアノ・ソロで。

;続いてピアノはそのメロディがテナーにくるけど、そのメロディを操るのはチェロなのだ。

そして他の楽器へと受け継がれていく。

それなのに、いつまでも「私が!私が!」と弾いていたのでは、他の楽器とのバランスというものが取れなくなってしまう。

そこのメインはチェロなのだ、とわかって、私の左横でそれを奏でているチェロ奏者さんの音を良く聴きながら弾くと、全てがバランス良くきれいに響き合ってくるようになる。


もちろん、その、他の楽器奏者さんの歌い方や音量、ホールでの響き具合によってもまた変わってくるのだ、ということは大前提で。


私が終始メインなのだけれども、ヘミオラの長いセクションが二回あって、非常に忙しい。

そこも、周りの(オケの数少ない)音と動きをよく聴きながら弾くのと、一人で突っ走るのでは、大きく違う。

少し、私の世界がワイドになった気がした。


(注:私は普段、「ワイド」なんて日本語で言いませんけども、笑。
   昔、愚息がまだチビッ子だった頃、日本へ遊びに行った時、
   日本語に英単語が混ざる感じでしゃべっていて、それがいたくウケタらしい
   友人が、今でも言うのだ。
   「あの時、ビア坊は<道がワイドで>って言うてたなー」って。
   ちょっと思い出して使ってみました。笑)




と、そんなことを感じ、自分の中で一つ何かの殻が弾けた音が聴こえた。