この度、林英臣先生がご出版された古事記の絵本『やまとことば神話』の出版記念並びに一般社団法人綜學社やまとことば語り部養成協会設立記念祝賀会に先立ち、私が開会宣言を務めさせて頂きました。昨年の『京都綜學院』設立記念式典と同じくド迫力の宣言となりました。

一文字一文字に意味のある『やまとことば』とは、言霊信仰のもと、祝詞、呪文共に大いなる力を発するものとして、安易にこれを扱う事を、上古より日本人は畏れ謹んできました。
日本人が長らく文字を必要としなかったのもその為で、偉大な呪術を書き残す等、タブー視されたからであるのは言うまでもありません。
それほどまでに、非常に慎重に発せねばならぬ『やまとことば』の系譜を踏む我々が日常的に話す日本語もまた同じくで、不言実行とは、言霊信仰に根源ある日本特有の理念です。
いつもお天道様が見ていると信じた古代日本人は、言霊の力を畏れ、決して嘘はつかなかった。
だからこそ、口伝伝承の文化が成立し得た訳で、これは日本以外には類を見ぬ思考であります。
中国の歴史を鑑みれば、易姓革命の頻発によって度重なる焚書坑儒に遭い、その後の歴史文化は新しい為政者によって書き換えられてしまい、文字には真実は残らなかったことは明らかです。

その点、嘘を大いに畏れた日本では、口伝伝承で一言も違う事無く子々孫々に亘り歴史文化を伝えていった訳ですが、その役目を代々担ってきたのが稗田阿礼を出した稗田氏でした。
これを『古事記』『日本書紀』として文字化した事蹟は、言霊信仰の日本では非常に画期的な事であったと言えましょう。

それ程までに、文字よりも口伝を重視してきたからこそ、寺社や各地郷土に根ざす伝承は、非常に信憑に足る史料であり、これを否定するのはとんでもない傲慢な誤りです。
残念ながら、昨今の歴史学者の中には、机上の歴史史料のみを崇拝し、寺社の伝承は史料として認めないという強硬な姿勢を見せる者も多くいます。
歴史とは、本来、長い年月の積み重ねであり、年月とは、何事にも勝るものであり、何事にも替えられぬものであります。
科学技術医学等のジャンルであれば、『最新の研究』というものは重視せねばなりませんが、歴史学での『最新の研究』とは何ぞや。
歴史と最新という相反するものを信奉する戦後の歴史学者が席巻するからこそ、もはや『仁徳天皇陵』すら『大仙古墳』と名称を替えさせられた訳です。
戦後の歴史学界には失望しています。

明治天皇の御製に
文字をのみ 読み習ひつつ 読む書の 心を得たる 人ぞ少なき
今の世に 思ひ比べて石上 ふりにしふみを 読むぞ楽しき
我が為に 言ひしことさへ 思ひいでぬ 昔の人の ふみをよみつつ
とあります。
先日の『京都綜學勉強会』の教本『学術維新原理日本(蓑田胸喜著)』にて掲げられた御製。

机上の書物ばかりでは、歴史の真実は決して分かり得ない。
明治天皇もそう仰せになられています。
現代人は今一度、胸に手を当てて、顧みてもらいたいと切に願ってやみません。
さっきまで発言した内容を次の瞬間には無かった事とし行動に移す事をしない。
約束を守らず、平気で口から出まかせを言う。
こんな日本人だらけになった昨今、日本人の民度も下がる所まで下がってしまったのか、と怒髪天を衝く思いに駆られる日々です。

扨、これ程までに非常に大切な言霊を有する我々日本人が『やまとことば』の意味が理解できていないというのは誠に由々しき事と考えます。
かくして、戦後には、古事記も歴史から封印されていく事となりました。

修理固成~この漂えるクニを修め理り固め成せ~
「世界を我が事として捉え、大宇宙を進化させていく」 この人類の大使命こそが、古事記が伝えんとした主題。
戦後のGHQによる愚民化政策以後、現代学校教育において、古事記は封印されてしまいました。
しかし、元来、古事記が説く共生の在り方は、祖父母から両親へ、両親から子供達へ、子供達から子々孫々へと、脈々と受け継がねばならぬ日本民族の魂そのものです。
そうして培われてきた民族の精神によって「お天道様がみている」「利他の心」なる観念のもと、日本は「道義国家」たり得たのです。
ところが今、大切な民族の精神性の存続は危機的状況に瀕しているのです。

一方、この民族の魂消失の危機にあって、日本精神の中興を願う人々も増えてきています。
そこで私も学ばせて頂いております『一般社団法人綜學社』は、日本神話である古事記を正しく伝承していくことで、我が国に受け継がれてきた日本の心を甦らせるという事を理念としています。
殊、古事記伝承活動に於いては、大切な民族の精神性が二度と失われる事の無きよう、次の世代へしっかりと受け継ぎ、国民文化として定着させていく事に焦点を当てていく事になるのですが、その為にはまず、稗田阿礼の如き古事記伝承者『語り部』の養成に力を入れていく事に決しました。

日本民族精神の中興を願う皆様におかれましては、是非とも古事記の語り部として、共に日本の再生にお取り組みいただきたく、ここに「やまとことば語り部養成講座」へのご参加をご案内申し上げる次第です。

一般社団法人綜學社やまとことば語り部養成協会は絵本「やまとことば神話」の語り部を養成します。
絵本「やまとことば神話」は今まで解説されることのなかった古事記の冒頭部分を小学生にも分かり易く伝える絵本でありながら、大人にも読みごたえのある解説をつけた絵本です。 
当協会では、この絵本「やまとことば神話」の” 語り部 ” と ” 語り部を育成する講師 ”を養成します。
全国各地でこの絵本の「読み聞かせ会」を開催することで古事記の冒頭部分を正しく伝承し精神哲学として根付かせていきます。

 実は、古事記の冒頭部分「天地はじめてひらけしとき」では、「宇宙の生成」「地球の成立」「人類の誕生」が描かれ、壮大な宇宙論や人間に与えられた大使命が明記され、森羅万象の絶対的哲理を説いています。

しかし、多くの古事記の解説書などにはこの冒頭部分は神々の名前の連呼のみに終始しており、肝心なる宇宙絶対の哲理とそのもとにある人間の大使命については記述は皆無です。
だからこそ私共がしっかりと正確に民族の哲理を伝承していく必要があるのです。

 語り部を育成する講師である「言本師(ことのもとし)」又は、語り部である「言伝師(言伝師)」となり、 古事記が未来に亘って途絶える事の無き様に伝承して頂けることを願っています。

 養成講座のなかでは、 冒頭部分を読み解くのに必要な「やまとことば」や、 なぜこの時代に古事記を伝えていくことが必要なのかを「文明法則史学」をもってお伝えいたします。 
ただ古事記の冒頭部分の解説を知るだけでなく、その背景にある重要な学問を学ぶことでより骨太で深みのある解釈が得られ、かつ「読み聞かせ会」を開催して伝承していく能力を身につけていって頂けるようになります。

一人でも多くの方々に、古事記伝承者たる言本師、言伝師となって我々の同志としてご活動して頂きたいと願っております。
もし活動は苦手という方でしたら、受講生を紹介するという形でご協力くださいますならば、望外の幸せに存じます。
もし身近に「この人こそは」という方がいらっしゃいましたら下記にご紹介連絡を頂きますれば幸甚に存じます。
何卒宜しくお願い申し上げます。