浄められた夜 日本語訳 | 須藤千晴 official blog

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明日演奏するシェーンベルクの浄められた夜。
もともとは弦楽六重奏のための作品ですが、明日は珍しいピアノトリオ版での演奏です。

先ほど枝並千花ちゃんと古川展生さんとのリハーサルが終わり、改めて曲の素晴らしさに感激。。。

いらして下さる方の予備知識として、もとになったリヒャルトデーメルの詩の日本語訳を載せておきます。

ベーゼンドルファーの響きと浄夜という作品がどのように絡み合うのかとても楽しみです。


Die Verklärte Nacht Gedicht von Richard Dehmel,(aus “Weib und Welt ) ~浄められた夜~ リヒャルト・デーメル“女と世界”より


二人の人間が葉の落ちた寒々とした林苑を歩んでいる。
月は歩みをともにし、彼らは月に見入る。
月は高い樫の木の上にかかり、
一片の雲さえこの天の光を曇らさずにいる。
その光のなかに黒い枝が達している。
女の声が語る。


私は子供を宿しています。でもあなたの子供ではありません。
私は罪を背負ってあなたのお側を歩いています。
私はひどい過ちを犯してしまったのです。
もはや幸福があるとは思いませんでしたが
でもどうしても思いを絶てなかったのです、
生きる張り合い、母親の喜びと義務を。
それで思い切って身を委ねてしまったのです、
身震いしながらも、私は見知らぬ人に我が身を任せてしまい、
そんな自分を祝福さえしたのです。
それなのに、今になって、人生は復習したのです、
今になって私はあなたと、ああ、あなたと巡り会ったのです。


彼女はこわばった足取りで歩く。
彼女は空を見上げる。
月はともに歩む。
彼女の黒い眼差しは光のなかに溢れる。


男の声が語る。
きみの授かった子供を
きみの魂の重荷にしてはならない。
見たまえ、この天地万物がなんと澄んだ光を放っていることか。
万物が輝きに包まれている。
きみは僕とともに冷たい海の上を渡っていく、
だが特別な温かさがきらきら輝きながら、
きみから僕へ、僕からきみへと行き交う。
この温かみが見知らぬ子を浄めるだろう。
きみはその子を僕のため、僕の子として産んでおくれ。
きみはこの輝きを僕に運び、
きみは僕をも子供にしてしまったのだ。


彼は彼女の厚い腰に手を回し、
彼らの吐息は微風のなかで口づけをかわす。
二人の人間が明るく高い夜空のなかを歩いていく。