「黄色い目の魚」@佐藤多佳子~新潮文庫~
この本は友人から生徒へとプレゼントされた数冊の内の一つ。
学級文庫に置こう!と教室に持っていったら、
題名に興味を示す子供たち。
しかしその後がいけない。
厚さを見て、「長い話しは読めないんです!」とあっさり断られてしまう。
この本は、友人のお薦めだから「面白くないはずはない!」
こちらも頂いたものをそのまま置こう!としたからいけない。
読んでみることに。。
この本の帯に
「ひとりでは見えなかったこと
ふたりだと少しだけ見えてくる
だから今は一緒にいたいんだ。」
と、あります。
表紙は背中を向けた制服姿の二人の高校生の男女」。
☆読んでみての感想☆
まず題名。魅力的です。
「黄色い目の魚」
「黄色い目の…」ときたら、次の言葉は何を想像しますか!?
私なら「猫」です。
魚??だから、題名として生徒も惹かれたんですね。
魚の目の絵本といえば「スイミー」です。小学校1年生の教科書にも載ってましたね。
「ちいさな赤い魚の兄弟たちのなかで、1匹だけ真っ黒の魚の『スイミー』」
絵本作家のレオ・レオニーだって、魚の目は黒です。
ここからも普通ではない。
常識ではない、そんな話を予想します。
この本、最初の所からぐいぐい読者を惹きこみます。
10歳の悟(サトル)は行く方知れずだった父「テッセイ」に突然会うことに。
サトルは母子家庭で妹の「玲美」と母「歩美」の3人暮らし。
サトルの心情と情景描写が丁寧に書かれていて、このお父さんは何で今ひょっこり現れるの!?
この父親の江古田の安アパートに行くのです。
もう、この時点でどんな父親で、暮らしぶりも想像できます。
やはり親子。
全く離れていても、共通のものがあるんです。
「絵がどうしょうもない位好きだ!」ということ。
サトルはこの父の部屋を観て二つの感情が沸きます。
次の章は、突然主人公が中学生の女の子「村田みのり」
彼女は普通の家庭の次女。
両親と姉の4人家族。
みのりは、自分は家族とそりが合わず、家族は自分を嫌いだと思っています。
性格ははっきりしていて、自分の自我を通す女の子のように見受けられます。
しかし、イラストレーターで漫画家の叔父の「通(とおる)ちゃん」にはちがうんです。
小学生の頃に描いた「黄色い目の魚」の画を褒めてくれて通ちゃんのアトリエの玄関に額に入れて飾ってくれているんです。
ほとんど毎日通っていて、まるで家政婦兼アシスタントの様な放課後です。
二人は湘南の高校生になって同じクラスで出会います。
その出会いから高校生活の日常も丁寧に描き、読者の共感と郷愁に誘われました。
主人公二人に共通している環境。
絵を描くことが大好きで、自由人の様な生活を続ける大人の男性がいること。
それぞれの主人公は、自分らもいずれ「大人になるわけ」で、この二人を自分の将来像の何らかのお手本であり、鏡にしているように思えます。
「こうありたい。いや、絶対にいや。」
私にもいました。
「ミステリアスな親戚の叔父が。」
近寄って話を聞きたいし、仲良くしたいけれど恐い。
その大人らは「決して子供扱いはしない。対等に扱ってくれる。話を真摯に聞いてくれる。」
世間の常識を教えようとする保護者に
自分は何者でどう生きていこうか、不安を押し隠してもがきながら
「自分探しの旅」をしているそんな「サトルとみのり」との「家族や仲間」の交流の物語です。
この小説の感想を書きだしたら、止まらなくなりそうです。
とにかく面白いし、読みやすい小説でした。
中学生から大人まで、本当に楽しめるお薦め小説です。
今日の昼間、舞台「ドレッサー」を観るために遠征してきた友人夫婦にお会いして楽しいひと時を過ごしたいと思っています。
夜は、劇団ベースボールの「クジラの歌」を観劇してきます。
皆様にとっても素敵な一日になりますように。