法律的なことを知らない人でも、なんとなく「感覚」で分かるんじゃないかな~と思うことでも、そうではないこともあります。
相談会に一組のご夫婦が来られました。
70歳代だそうで、ご主人には90歳代のお母様がいらっしゃいます。
ご主人には弟さんがいましたが、弟さんは亡くなっており、そこにはお子さん2人いらしゃいます。
(説明のため事例を少し変えています)
相談は「お母様」が亡くなった際の相続について。
ご夫婦とお母様は別居されているようですが、お母様のお家の固定資産税を支払ったり、高齢のために1人で出来ないことなどのお手伝いをされてきたそうです。
お母様も、相談者である長男に唯一の財産であるお家(土地、建物)を譲ろうと考え、遺言書を書かれているとか。
遺言書がなければ、法定相続になり、土地、建物は長男に2/4、次男の子供1人あたり1/4ずつ相続されてしまいますから、お母様の思いを伝えるには遺言書は大事なものになっています。
相談は、
「自分で書いた遺言書でも効果はありますか?」
だったのすが、話を伺っていくうちに、奥様が
「うちの主人が、義母より先に亡くなったら、私にその分は相続されるのですよね」
と・・・。
遺言書に、「長男が先に亡くなっていた場合には、その妻に遺贈する・・・」と予備的に書かれていれば別ですが、書いていなければ、奥様には義母の財産に対する相続権はありません。
この方、法廷相続でも、本来、ご主人がもらえたはずの相続分だけは、妻に相続されると思っていたようです。
私は筆記員をしていたのですが、先輩が説明すると、奥様は驚きやら、落胆やら・・・
形相が変わっていく様子が見れました。怒りに近い感じ・・・。
「でも、お孫さんにあたるお二人のお子さんには代襲相続されますよ」
と説明しても、
「ああ、私たちの子供にはいくのですね」ではなく、「え~、私には、一銭もないの?」と言わんばかりの表情なのです。
「義母に対する相続権はないやろ~」
と今では、普通に思ってしまっている私ですが、そういえば、初めて勉強したとき、今ほど終活関係やおひとりさまの本もなかったですし、テキストを読んで
「ああ、嫁には、義母の相続権はないのね~」
と思っていた自分を思い出しました。
この奥様、厳しいお姑さんのお世話をしてきた様子。それだけにショックなんだろうな~と、奥さんに内心、同情している私がいました