三木清 妻の一周忌の追悼文集

「幼き者の為に」より

こちらを私の気持ちに置き換えて、
命日の言葉とします。

(原文)
やさしい言葉をかけたことも
ほとんどなかったが
今彼女に 先立たれてみると
私はやはり 彼女を愛していたのだということを
しみじみと感じるのである
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やさしい言葉をかけたことも
ほとんどなかったが
娘に先立たれてみると
私はやはり娘を愛していたのだということを
しみじみ感じるのである
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(原文)
彼女の存命中に彼女に対して
誇り得るような仕事の
できなかったことは遺憾である
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彼女の存命中に彼女に対して
誇り得るような母としての振る舞いが
できなかったことは遺憾である
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(原文)
私がなにか立派な著述をすることを願って
多くのものを
犠牲にして顧みなかった彼女のために

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私がそれまでの生き方·価値観を再考することを願って
自らの命までもを
犠牲にして顧みなかった彼女のために

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私は今後
私に残された生涯において
能う限りの仕事をしたいものだ

そしてそれを土産にして
待たせたね、と云って
彼女の後を追うことにしたいと思う

「人生論ノート」より「死について」

過去は何よりもまず死せるものとして絶対的なものである

この絶対的なものは
ただ絶対的な死であるか
それとも絶対的な生命であるか

死せるものは
今生きているもののように
生長することもなければ
老衰することもない

そこで死者の生命が信ぜられるならば
それは絶対的な生命でなければならぬ

この絶対的な生命は真理にほかならない