《グリーフケア》
入院した日に、冊子を渡された。
気が向いたらでいいから、良かったら読んでみてね、と言われた。
流産・死産・新生児死でお子様を亡くされた家族の方へ
コピーした紙をホチキスで止めた
手作りの冊子だった。
「入院中の赤ちゃんとの過ごし方」
(以下抜粋)
だっこする、添い寝、パパと三人で川の字で寝る、
母子同質、家族で一緒に過ごす時間を持つ、沐浴、身体付記、服やおむつを替える
カンガルーケア、授乳、搾乳、話しかけてあげる、絵本をよんであげる
歌を歌ってあげる、何か手作りのものを作ってあげる、手紙を書く
やってみたいけどやり方がわからない。
そんなときはスタッフがアドバイスやお手伝いします
(中略)
赤ちゃんと会うことをためらっている方へ
事実に向き合うのはとても勇気がいることです。
赤ちゃんと会うのが怖いと思われるかもしれません。
しかし、その時に赤ちゃんとしっかり会わなければ後に後悔することがあります。
面会しなかったほうがよかったと言われた方は今までいません。
わが子のいとおしさに胸がいっぱい、かけがえのない出会いを感じるひとときを持てると思います。
合える時間は限られています。
よく考えて決められることをおすすめします。
「悲しみの心」
赤ちゃんを亡くし、おかあさん、おとうさん、おじいちゃん、おばあちゃん、きょうだい・・・
多くの方が悲しまれていることと思います。
しかし、それぞれの立場で悲しみが違うことを知ってください。
これから家族で支え合っていくにはとても大事なことなのです。
以下は家族の方にも読んでもらってください。
おかあさん
はじめは事実を受け入れられなかったり、怒りを感じたり、無気力になることがあります。
医療者に「決しておかあさんのせいではないですよ」と言われても
「あの時ああしていれば・・・」と自分を責めてしまうかもしれません。
赤ちゃんと過ごすうちに事実を認められるようになっても、
こころは常に動揺し、落ち着きがなく、考えをまとめることができない、
幻覚や幻聴がみられることもあります。
周囲の人とつきあいを持たなくないり、ひきこもり、感情の表出もなくなるかもしれません。
これらのことは当然起こりうるこころの反応です。起こっていいのです。
なかったことにし、こころに蓋をしてはいけません。
すぐに次の子を切望したり、その他の活動を通して前向きにがんばって生きようとしたりしなくていいのです。
また悲しみは個人差が大きいものです。少し良くなったと思うと、再び前のように戻ったりすることもあります。
それでもいいのです。
しっかり悲しみと向き合い、喪の仕事をすることによって、悲しみはかたちを変え、こころが回復していきます。
それが行われないと精神症状が強く出たり、長引いたりします。
泣きたいときは泣きたいだけ泣いてもいいのです。
あなたはママなのですから。
短い時間だったとは思いますが、たしかに赤ちゃんは存在したのです。
すっと忘れないであげてください。
おかあさんが大事に想ってくれる・・・こどもにとってこの上もない幸福ではないでしょうか。
もしかしたら、またママのところに戻ってきてくれるかもしれません。
あなたは一人ではありません。
赤ちゃんとの思い出を胸に、これからも家族に支えられて歩んでいくことができます。
おとうさん
夫は妻を支えなければいけない、自分がしっかりしなければと思っていませんか?
でもそれは奥様が望んでいることではありません。
産んだ母親が一番つらいはずと、がんばって支えようとしたり、自分は泣くのを我慢したりしなくていいのです。
おとうさんも泣きたい時に泣きたいだけ泣いてください。
母親は夫の泣く姿を見て、わが子への愛情や悲しみを知ります。
入院中はなるべく奥様のそばにいて、ともに赤ちゃんと過ごしましょう。
夫婦で寄り添っていくことが悲しみのこころを回復させていきます。
火葬後は、ご心痛のところ仕事に戻らなくてはいけません。
日常生活に戻った夫の姿を見て、奥様は取り残されたような気持ちになることがあります。
こころの回復には長い時間がかかるものです。
その回復の仕方やかかる時間も人それぞれ違います。
時に夫婦で分かり合えない時期もあるかもしれませんが、それでも寄り添い続けてください。
家族(おじいちゃん、おばあちゃんなど)
ご自分の娘さん、息子さんがこのようなことになってしまい、ご心痛のことと思います。
そして本人たちにどう接していいのか途方にくれていることと思います。
親ならわが子のことを忘れたくない、誰かに話したいと思うものです。
本人たちに「そんな話はしなくていいよ。つらいでしょう」と言わず、
ただ、一緒に涙を流したり、聞いてあげてください。
見守ってくれる家族がいる、そのことが本人たちの悲しみを癒したり、支えることになります。
そして、いつまでも赤ちゃんのことを、大事なお孫さんとしていつまでも覚えていてあげてください。
きょうだい
おにいちゃん、おねえちゃんのいる場合、できれば事実を話し、実際に会ってもらうことをおすすめします。
その場かぎりの嘘をつくと子どもたちとは亡くなった赤ちゃんの話ができないばかりか、母親もきちんと事実に向き合うことができなくなるかもしれません。
自分のせいで弟や妹は亡くなってしまったのではと思ってしまう子もいます。
対面したら怖がるのではないかと心配されるかもしれませんが、多くの子は素直に「かわいい」と受け入れてくれるものです。
その様子に母親も安心し、また勇気づけられます。
そうすることで、亡くなった赤ちゃんも家族の一員になれるのではないでしょうか?
今は小さなおにいちゃんおねえちゃんでも、大きくなったときに自分に弟や妹がいたことを知ると喜ぶと思います。
案外、「そんな感じがしてた」と言う子もいるかもしれません。
(以上、抜粋)
《私が思うグリーフケア》
入院中、陣痛促進剤の量を少しずつあげていくという方法をとられていたので
30分~1時間ごとに体温と血圧を測り促進剤の量を調節していた。
なので、ほんとうに頻繁にいろんなスタッフが入れ替わり立ち代り。
そんな中、ある看護師さんがきた時に、つらくて気持ちを吐露してしまった時があった。
たぶん新人さんだった。
身をよじらせて嗚咽する私をただ立ちすくんで見ていた。
声をかけるでもなく、手を差し伸べるでもなく。
その方は泣きながら、
「私は子どもを産んだことがないので・・・。お母さんの気持ちが分かってあげれなくて・・・なんて言っていいのかわからないです。ごめんなさい。」そう言って走り去っていった。
私は、嬉しかった。
「おなかの中の赤ちゃんは分かってますよ!」
「ママの味方ですよ!大丈夫!」
いろんなことをいろんなスタッフに言ってもらったけど、
この看護師さんから言われたことがもしかしたら一番嬉しかったかもしれない。
彼女はきっと何か言葉を探したんだろう。
ほんとうは手を差し伸べてさすったり握ったりしようと思ってくれてたに違いない。
でも、できなかったんだと思う。
私がどれだけ悲しいか、スタッフとしてではなく一人の人間として考えたら
とても、なすすべがなかったのではないか。
泣きながら、できることがなくてごめんなさい、と謝る彼女の顔は
こんなに悲しい人を前に自分は無力だ、という表情だった。
私は、それが嬉しかった。
人として、私に寄り添ってくれた人だと思った。
その行為は医療のプロとしてはもしかしたら半人前なのかも?しれないけど、
私はあの涙に、あの言葉に救われたのだから、れっきとしたグリーフケアだったんだと思う。