《カウンセリング》
退院する前に、臨床心理士さんと話しをする機会が設けられた。
臨床心理士という職業のかたに出会うのは生まれてはじめてだった。
病室に入ってきた人はとてもやわらかい空気をまとった女性だった。
私はそのやわらかい雰囲気によっかかり、せきをきったようにはなしはじめた。
《私の思い》
これは何かの 罰なのか。
それとも、障がい児だったら育てられないと思ったから
神様が願いをかなえたのか?
私は入院中、やろうと思えば携帯でゲームできた。
不謹慎かと思ってしなかったけど、やろうと思えば、できた。
いつも、そう。悲しくても嬉しくても、私は100%同じ気持ちになれない。
つらくて泣いてたら看護師さんが肩を抱いて慰めてくれた、そんなときも
この人は女優の〇〇に似ているな、とか、香水つけてるな、とか
そんなことを考えてる自分もいる。
子どもを亡くすなんて、こんな、これ以上ないだろうことがあっても
やっぱり100%になれなかった。
悲しくて悲しくて気が狂ってしまえるお母さんがいたなら
その人はきっと子どもを心から愛してる、情の深い人なんだと、うらやましく思う。
私の友達で数人、大切な人を亡くした人がいる。
旦那さんだったり、子どもだったり。
その時、私はその人が望めばできることはなんでもしたい、と、そうしてきた。
ずっと一緒にいたり、話をきいたり。
10年経った今でもその時のことを、ありがとうって言ってくれる人もいる。
だけど、今は思う。
あのとき自分はどうだったか。
人の役に立てることを自分の存在意義にしてなかったか?優越感になってなかったか?
私は幸せなんだ、と、自分の幸せを再認識する道具にしてなかったか、
今となってはそんな気持ちは全くなかったと自信を持って言い切れない。
そして、今自分はその時のツケをはらっているのか。
今度は優越感のネタにされる番なのか。
私は今まで夫のことを、この人に相談してもしょうがないって思っていた。
相談しても的外れな返事だったりするとがっかりして
がっかりしたくないから言いたいことは言わないで全部ママ友に相談していた
でも、今回のことで、私は自分の醜い気持ちも弱さも全部夫に話せた
そしてそれを夫は全部受け止めてくれて、今まで言葉にしなかっただけで彼は私のことをすごく考えてくれていたんだと思えた。
これからはなんでも話せるって思えた。
なのに、はるちゃんと対面したとき、
夫は真っ先にはるちゃんかわいい!って言った
夫はぐちゃぐちゃ考える私と正反対で、いつもシンプルだ。
自分の中でこれだと思ったことに対していつも誠実で嘘偽りがない。
だから、はるちゃんをかわいい!と言った気持ちに嘘がないことはよくわかる。
だから私はその時、
あんなに夫と分かり合えたと思ったのに、また一人になったと思った。
なんでも言えると思えた矢先、
はるちゃんをかわいいと思えない自分の本心を夫に言えなかった。
ふやけてしまい、頭には破水させたときはさみが刺さった傷があった
顔は、私には、おだやかに見えなかった。
恨んでいる顔にさえみえた。
怖かった。
ずっと一緒にいてあげたい、って思えない
これ以上痛んでしまう前に早く燃やしてあげたい。
私の赤ちゃんはこれじゃない。
自分は頭がおかしいのか。
自分が冷酷に思えて、人間の形してるのに人間じゃないようなものに思えて怖い。
《心理士さんからの言葉》
心理士さんは支離滅裂な私の話を聞いてくれて
そして話してくれた。
貴方は冷酷ではありません。
自分の中に自分が何人もいるようだ、とのことですが
それは貴方が自分の中のいろんな気持ちに全部向き合おうとするからです。
私は、貴方はとても率直で素直な人だと思います。
お友達が悲しい思いをされているとき、自分に優越感があったのではないかと思うんですね
自分の中にそんな気持ちがあるかもしれないなんて思うこともしないで
慈善事業をされている人は世の中に大勢いますよ。
普通は気付かないようにしていたり、蓋をしていたりするような
自分の醜い気持ちや、見たくない感情も
全部さらけ出して向き合おうとする、それが貴方です。
プラス自分に批判的なところがあるから苦しいんじゃないでしょうか、それが気がかりです。
赤ちゃんがかわいいと思えなかったとのこと、
それは母親だからですよ
お母さんだけが生きている赤ちゃんを知っています。
他の人はそれを知らない。だから生まれてきた赤ちゃんが赤ちゃんです
貴方だけが生き生きとした赤ちゃんをおなかの中で感じていました。
だからそうではなかった赤ちゃんが、自分の赤ちゃんと違うように見えても、それは当然の気持ちです
お母さんならではの感情なのですよ。