実は入院して2日目の2013/12/10
3日目の12/11の記憶が、ほとんどといっていいほど、ない。
12/12のことを記録します。
《破水》
この日は両親がきた。
きてくれたときは、病院のご飯が美味しいとか、
日曜日はオプションプラス20円でカレーにできるからカレーにしたいとか、
どーでもいいことを話してた。
お昼になり、母は残って父と夫で外にお昼を食べに行くというので
いいから!みんなで行っといで!私は大丈夫!なんも起こらんってこの分やと!
そう言って3人で行かせた。
なんとなく、1人になりたかったのもある。
入院して3日目、今までの経過としては
朝から促進剤を10からはじめて徐々にあげていき、夕方に110
上限いっぱい促進剤をあげてもまともな陣痛がこずに夜は点滴を外し、朝がきて。
子宮破裂のリスクがあるので、前日110マックスまで入れててもまた10からの仕切り直し。
バルーンいれてみたりしたのに、
毎回内診で子宮口ぐりんぐりんされて痛いのに、
なんも進まないことに嫌気がさしていた。
これだけ出てこないってのは赤ちゃんは1人でいきたくないのかも。
私についてきてほしいのかとさえ思うようになっていた。
入院初日あれだけ頭にずっとあった、ひろの笑顔も声も、どこか遠くに感じはじめていた。
そんな私の様子が精神的に限界と判断されたのか、
3人がご飯を食べに外出して20分後くらいだっただろうか、
主治医が訪ねてきた。
まだ破水されられるまでの状態ではありませんが、無理矢理やってみようと思います。ホントはだめなやつです。
僕は自信がありません。そこで部長にやってもらおうと思ってます。
無理矢理、とか、自信がない、とか、不安に思うような言葉に思えるが、
その時のわたしはこれで少しでもなにか進むなら!とそっちの気持ちが強く、迷うことなくお願いした。
ご主人が戻ってくるまで待ちましょうかとも言われたが大丈夫ですと告げ、内診室へ。
いかにも部長な、割腹の良いおじいさん先生が入り口にいて、
看護婦二人は『つぼさんどこ?電話してみて!』と話していた。
わたしは、
先生つぼさんって呼ばれてるんだw(←主治医の名前は坪内先生)
夫が戻ってきたら教えてあげよっと!とか、
そんなことを考えていたらつぼさん走って登場。
内診室で破水させることになる。
痛いなんてもんじゃない。
まだひらききってない子宮口を傷つけないようおそらく、クスコでかなり広げられていて、
指を何本もつっこまれ、ハサミをいれられた。
痛くて思わず力がはいりとじてしまう足を看護師さんに押さえつけられ、
息をゆっくりはいて~力脱いて~と言われる。
毎度の内診は確かにそうやってしのいでたが…これは無理。
そのうち、バシャーッとあたたかいものが流れ出てきた。
とにかくあたたかかった。
その時の感覚、感情はずっと忘れないだろうな。
確かに妊婦だったという実感。
私の夢や希望に満ちたあったかい未来が
全部流れていってしまったような喪失感。
声を出して泣いた。
処置が終わったあと
主治医や看護婦は痛かったでしょ、ごめんねって労わってくれた。
私は痛いのはいいんです、ただ、悲しくなっちゃって…と言った。
看護婦さんは病室まで付き添って、身体を抱きしめさすってくれた。
《出産》
夫たちが戻ってきた。
わたしはどんどん陣痛がついてきた。
破水させたので大量に羊水が流れ出てくる。
自分では満足に動けず、夫がトイレでおおきなナプキンを変えてくれた。
女性である実の母親がいるのに、当然のごとく夫がかえてくれて
私自身、母親にやってもらうほうを想像したらそっちのほうがよっぽど抵抗を感じてる自分に気付いた。
だいぶ陣痛が強まってきて
両親へあいさつもそこそこ、部屋を移動。
夫も付き添う。
主治医登場。
破水からの劇的な前進に思わず
わたし『破水すごいね!』
先生、ハハッって笑ってた。珍しい。
痛みが激しくなってきて、うめく。
助産師さんがピンポイントで腰を押してくれる。さすがだ。
もういきんでいいかと聞いたら少しずつやってみましょう、と言われた。
背中の管に冷たい感触があった。麻酔が入ってきている。のに、普通に痛い。
私は下半身麻酔のようなものを想像してたのに
なんだ、普通に痛いんじゃん!
背中の痒みを3日我慢したのに!と思ったが
実際はあれがないともっといたかったのかなあ。
確かに余裕はあった。少なくともひろの時と比べれば。
陣痛が逃げた時は天井になんか書いてあってそれを読もうとしてみたり
こっちは必死で呼吸を整えてるのに近くにいる夫がタバコくさくていらっとして反対向いたり。
どんどん、岩のようなものが下に降りてきてるのがわかる。
ちょっとずついきんでもいいといわれたが
いつから本気だしていいかわからなかった。
でもそうこう思ってるうちに、大きな痛みがきて、いきんだ。
あっ、生まれる!って思ったらすっごい中途半端なところで陣痛が逃げた!
やばい!そこで止まったら!確実裂けた!あー!と思った。
先生は次は自然な陣痛の痛みででてくるから!いきまなくていいから!あと一回だよ!と言った。
MAX陣痛がきてるのにいきまないなんて不可能…
きたきたーと思ったら主治医が私の左足を曲げて押さえつけた。
ずるん!
私の身体中の力が抜ける。
赤ちゃんは、やっぱり泣かなかったけど
私はやっと終わった、と思った。
夫は始終泣いてた。
やっと終わったと思ったのに、
ごめんちょっとおなか触るよってグリグリ。
私の身体も、終わったはずなのにまだ陣痛が。なんで?
バタバタとせわしなく周りの人が動いてる。エコーをする。
ごめんね、まだ中に胎盤が残ってて出てこないから、
麻酔を追加して子宮に腕をいれて胎盤つかんでとるからね
恐ろしいことを言われる。
私は半泣きでヤダ、怖い!怖い!と言ってるうちに
ギャーーー!!
ずるん!
二度目のずるん。弓なりになっていた身体の力が抜ける。
子どもを亡くして不謹慎かと思うが、とにかくこのずるん!は気持ちがいい。
お産の時はアドレナリンが出るからか?達成感と爽快感。
後の処置をされながら、お母さん上手だったから裂けてないよ!と言われた。
赤ちゃんは、すぐは対面したくなくて、キレイにしてから病室に連れてきてもらうことになっていた。
しばらくは、分娩台で静かな時間が流れた。
主治医は、夫と話をしていた。
隣の部屋に胎盤と臍帯があるらしい。
主治医の説明では、臍帯は捻れが多すぎても、少なすぎても血栓ができやすくなる。
私の場合は少なすぎたということがわかった。
そして、臍帯の真ん中から右と左で明らかに色が違った。
(あとでわたしも見せてもらった)
左側は赤く真ん中で明らかに色が変わり、右は真っ白。
つまり真ん中で詰まっていた。
臍帯はソーセージのように、ねじれがなかった。
捻れについては、受精の時に決まることで、
お母さんがどうこうしてどうなるものでもないです。
たまたま、です。
と、言われた。
私の血がドロドロで、そのせいで血栓ができたのでは?ときくと、
臍帯を通って赤ちゃんにいく血とお母さんの血は別物です。
更に言うと貴方の血はけしてドロドロではないです、と。
臍の緒はとっておきましょうか?と言われたが、
死因になったところだから…いいです、と告げた。
《分娩後》
話が終わったあと、ベッドに乗せられて部屋に戻った。
両親は、夫が私が無事なのを告げ、帰ってもらったとのことだった。
私は達成感があった。
母にしか出来ない仕事をやり遂げた
出産直後の興奮状態もあったと思う。
また、死因がハッキリしたことで、
夫が最初からずっと言っていた
『はるちゃんは授かった寿命を全うした』というのが、あながち間違ってないと思わせた。
だからこそ。
なかなか、はるちゃんと対面出来ない自分がいた。
姿を見たら、私はきっとまた揺さぶられる。
また、激しい感情が押し寄せてくる。
今だけ、あと少しだけ、産んであげれた達成感だけでいさせてほしい。
夫は女の人はすごいな、と何回かつぶやいた。
夫には夫の辛さがあるんやろな。
私にはまだやることがあった。産んであげるって目標が。
叫びながら泣かない子を産む私の手を握る夫は、もしかしたら無力感に苛まれていたのかもしれない。
ドアをノックする音が聞こえた。
看護師さんが、赤ちゃん連れてきましょうか?!とニコニコの顔できた。
私は、もう少しあとで…と言った。
普通はすぐ会いたいと思うんだよね…きっと。
ついで?に、トイレに行ってみることにした。
出産後二時間で立ち上がってトイレに行けるか試してみることになっているらしい。
起き上がったら多少ふらつくものの、スタスタ歩ける!
トイレに行って用を足し、恐る恐る拭いてみる。
あれ??
『縫ってないんですか?』
トイレの外で待っててくれた看護師さん。
『縫ってないよ!どっこも!』
『あれ?そうなの?』
後の処理の時、いきなり、チクッとして『痛い!』と叫んでしまい、
『ごめんね!』と言われて
(縫うなら縫いますよって言ってからにしてよー)と思ったんだが…
でも、そういえば確かにあの時、裂けてないって言ってたよな。あれれ?
後で夫に聞いたら
あれは誤って器具かなにかを落として私に当たったっぽい、だって。おいおい!
それにしても、ひろの時、会陰切開するも間に合わず裂傷三度
分娩後カンガルーケアを希望してたのにそれどころじゃないって感じで、
1時間半かかって産道縫合。麻酔なし…
さらに抜糸に二ヶ月かかって相当辛かったので、
今回分娩後二時間で歩いてトイレなんて奇跡のようだった。
はるちゃんは親孝行してくれたんかな?なんて思えた。
しばらくしてまた、他の看護師さんがきて、
手続きの話をはじめた。
そしたらまたさっきの看護師が入ってきて
赤ちゃん、つれてきましょうか??
なんか、責められてるような気持ちになった。
笑顔で、連れてきましょうか?って、
生きてても亡くなってても、かわいい赤ちゃんでしょ?を強制させられてるような。
その通りです。けど、かわいい、そう思えないかもしれない、それが怖い私。
それでも本当に母親なの?って言われてる気がした…
今から火葬の話とか赤ちゃんに聞かせたくないから、
話が終わったらこちらのタイミングで赤ちゃんお願いしてもいいですかって、
もっともらしく言った。
《対面》
死産届けや火葬の話とかが終わり、
『赤ちゃん、会おうか。』
夫に告げた。
そして、夫に『ごめん、先に会ってくれるかな』と言った。
『いいけど、いいの?』
『お願いします。』
いよいよ、はるちゃんが、きた。
ドアがあく音。
すでに私のこころはグラグラ。
カーテンの向こうにはるちゃんがいる。
夫がカーテンの向こうに行った。
嗚咽が聞こえる。
『かわいいよ!すごく、かわいいよ!』
夫はそう、泣きながら笑っていた。
カーテンを開けて、ベッドサイドにきたはるちゃん。
顔をみた。
1番悲しい時間がきた。
私に似た赤ちゃんの亡骸。
まるで生きてるようだ、なんて到底思えない、
はじめてみる赤ちゃんの亡骸。
私の娘…
看護師さんが『穏やかな顔してますね!』と言った。
わたしは『ほんと?ほんとに?そう見えるの?』
夫『かわいいね!顔はママに似てるね!耳はひろと一緒で俺だな』
看護師さんは、はるちゃんは穏やかだという。
夫はかわいい、会えて嬉しい。はるちゃんありがとうって、こころから言ってる。
私は、はるちゃんの顔が穏やかに見えなかった。
私を、責めてるように、見えた。
抱っこしてあげてと言われ、抱っこした。
はるちゃんに、色々お話してみたけど、
私はこの時、ただ、心からかわいいと言う2人を前に、置いてきぼりだった。
母親なのに。
わたしが1番可愛いって思ってあげなくちゃいけないのに!
やっぱり奈落に突き落とされた。
はるちゃんに、どう詫びていいのか。
最後まで大事にしてあげれなかった
愛せてあげれなかったと思った。
