昨夜のこと。
僕が買い物に行く途中のこと。
線路沿いの小道を、
女の子が歩いていた。

五歳くらいの子だろうか。
その少し先には、お母さん。
線路ぎわにならぶ水銀灯が、
小道に母と娘の二つの影を落としていた。

広場をはさんだこっちの舗道から、
僕はその風景を眺めていた。
てくてく歩く女の子の足取りは
とてもゆるやかだ。
その子の、今のゆっくりとした
成長を思わせるよう。
何も急ぐことがない丁寧な時間が、
丁寧に女の子の中に流れていた。

突然、電車が、
轟音とともに現われた。
電車は、家路を急ぐ乗客で込み合っていた。
それぞれの忙しい人生が重なり合ったまま、
電車は女の子のそばを駆け抜けていった。

電車は走り去り、また静寂が戻った。
母娘は角を曲がって、僕の視界から消えて行った。
買い物に行く途中の僕も、歩き始めた。
何も急ぐこともない、僕の時間を思い出しながら。