コンコン。
果穂はびくっとした。
「大丈夫?入るよ?」
「・・・」
カチャッ
「気分はどう?どっか痛いとこない?」
「ごめんなさい・・・迷惑かけて・・・」
「大丈夫だよ・・・勝手に心配したのは僕の方だから・・・」
「そんな事っ・・・ジェジュン・・・仕事は?・・・・明日早いんじゃないの?」
「昼からだから大丈夫だよ」
「うん・・・」
「何か飲む?何かもってこようか?」
「ううん・・・話が・・・」
僕はゆっくりとベッドに座り、彼女の冷たく緊張して震える手を両手で握った。
彼女は大きく深呼吸をして話し始めた。
「あの・・・ね・・・腕の傷の・・・・・事なんだけど・・・・」
「うん・・・ゆっくりでいいから・・・」
「5年前にね・・・私がデザイナーになった頃にね・・・初めてのお給料で・・・パパとママに旅行をプレゼントしたの・・・」
「うん」
「パパとママはね・・・私がジュエリーデザイナーになる事を応援してくれたから・・・何かしたくて・・・」
「うん」
「パパとママが新婚旅行で行った・・・・ハワイ旅行を・・・プレゼントしたの」
「うん」
「パパとママは凄く喜んでくれて旅行に行ったの・・・」
「うん」
「パパとママは・・・ハワイで私が予約した・・・クルーザーに乗ってクルージングを・・・してたの」
「うん」
「・・・そのクルーザー・・・が海難事故で・・・沈んじゃって・・・」
「・・・」
「二人・・・とも・・・死んじゃ・・・って」
「・・・」
「私が・・・パパとママを・・・・殺した・・・の・・・」
「それは違うっ・・・」
「私が・・・プレゼントさえ・・・しなければ・・・パパと・・ママは・・・死なないで・・・すんだのに・・・」
「そんなっ・・・」
彼女の目が・・・人形みたいに感情が無くなっていく・・・
こうやって彼女は全部自分のせいにしてきたんだ・・・自分を責めて・・・こんな辛い話をしてても涙も流さないなんて・・・きっと泣く事も出来ないくらい・・・暗闇を彷徨ってたんだ・・・
そんな彼女を見るのが辛くて僕はぎゅっと果穂を抱きしめた。
「それからは・・・地獄の・・・ような日々・・・だった・・・」
「・・・」
「死にたくて・・・死にたくて・・・パパとママの所へ行きたくて・・・気が付いたら腕を切っては・・・病院に・・・運ばれて・・・死にたいのに死ぬこともできないの・・・・・」
「・・・」
言葉が見つからない・・・僕は想像以上の辛い過去を知って・・・声にならない感情が・・・彼女を抱きしめる力を強めた。
「そんなんだから・・・彼氏も離れていっちゃって・・・当たり前なんだけど・・・人殺しの彼女なんて・・・嫌だよね…普通・・・友達もみんな・・・」
「人殺しなんかじゃないっ!!」
「美夏だけ・・・が私の傍にいて・・・くれて・・・助けてくれた・・・・」
「うん」
「・・・リストカットは・・・しなくなったけど・・・今度は・・・大切な人を失う・・・恐怖が襲ってくるの・・・・・・」
「・・・うん」
「静かな夜が怖くて怖くて・・・毎晩夢を見るの・・・友達や知り合いが・・・人殺し・・・って言いながら・・・・私から離れていく夢を・・・」
「・・・っ」
「だから・・・友達も・・・恋人も・・・家族も・・・・私が大切にしている人が・・・・私のせいで居なくなるんだったら・・・・もう誰もいらないって・・・一人で生きてくって・・・・決めたのに・・・」
「そんな・・・悲しい事・・・言わないでっ」
「ジェジュンに傷・・・見られちゃって・・・」
「うん・・・」
「今までは・・・傷を見られたら・・・みんな腫れものでも触るような目で・・・私を見るの・・・だから・・・正直言うとそっちの方が楽だった・・・近くならなくてすんだから・・・」
「・・・そんなっ」
「でも・・・ジェジュンは・・・違うくって・・・どうしていいか・・・」
「・・・ごめん・・・僕が・・・苦しめてたなんて・・・」
「違うっ・・・ジェジュンが悪いんじゃない・・・」
「・・・」
「一人で生きてくってきめたのに・・・・気が付いたら・・・ジェジュンの事ばっかり考えてて・・・私がなんかが好きになったらダメって・・・そしたら色んな感情が出てきて・・・分からなくなっちゃって・・・」
ジェジュンは果穂から身体を離し果穂の肩を掴むと
「私なんかがなんて・・・言うなよ・・・僕は果穂を守りたいっ。僕がそうしたいんだよ」
果穂は一筋の涙を流した。
「・・・やっと泣いたね・・・辛い時は泣かなきゃ・・・苦しい時は苦しいって言わなきゃ・・・果穂は一人じゃないからっ・・・涙も出ないくらい・・・苦しかったんだね・・・」
そう言って果穂を力強くそして優しく抱きしめた。
果穂はジェジュンの腕の中で声を出してまるで子供のように泣きじゃくっていた。
まるで今までの苦しみや寂しさ悲しさを全部洗い流すかのように・・・
続く・・・
