先日観た映画「NO」の感想。


「トニー・マネロ」のパブロ・ラライン監督によるチリ独裁政権3部作の完結編。1988年ピノチェト政権末期を舞台に、資本主義の象徴ともいえる広告業界を通じて当時の映像を交錯させながら、独裁政権の終焉を見つめる。出演は「モーターサイクル・ダイアリーズ」のガエル・ガルシア・ベルナル、「グロリアの青春」のマルシアル・タグレ。2012年10月25日に東京国際映画祭コンペティション部門にて映画祭上映された。

誰もが悲惨な思いを語りたがる中で、前向きな未来を思い描けるCMを作るって発想の勝利でしたね。独裁政権末期。政治に対して何も希望が持てず、諦めてしまっていた人々が、ノリのいいCMを見て、楽しく「ノー・モア・ピノチェト!」と声を挙げ始めるという展開が面白く、思わず身を乗り出して観てしまいました。もちろん、YES側の嫌がらせや暴力シーンも皆無ではありませんが、この映画の焦点はあくまで、選挙キャンペーン。乾いた視点でドキュメンタリー風に語られていきます。流れているのは、実際に使われたキャンペーンの映像で、その他のシーンでも、わざわざ80年代のカメラを取り寄せて、古臭い映像にしたというこだわりようで、ラライン監督のこの作品に懸ける想いが伝わってきました。
中東で起こった数々の反体制派運動も、21世紀のメディア、フェイスブックがきっかけだったように、この88年の選挙運動も、80年代ポップスの軽いノリが、チリの人々の心に火を付けたのでしょう。このブームを生む手法が果たして正しかったのかは、判断出来ませんが、時代に乗ったということでは、意味あるキャンペーンだったのだと思います。