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ツレが弁護士になりまして

アラフォーで妻子持ちの公平が、長年務めた会社を退職してまで挑んだ司法試験に見事突破した、までは良かったのだが、その先にあったものは・・・

突然、ドイツの偉大な作曲家であるルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの交響曲第5番ハ短調作品67、いわゆる「運命」と呼ばれる有名な曲が部屋に流れた。

電話の着信音なので軽快なコミカルな音調ではあるが、それでもあの独特の重厚感が響いた。


知恵は落としそうになりながら子機を取った。

「はい」

普通の人なら電話に出たら、もしもしとか、はい○○ですとか、言うところだろうが、知恵はいつも「はい」としか言わなかった。


「あ、あ、あった!あったんだよ、番号あったよ!」

受話器からは誰とも名乗らず慌てた声が聞こえた。

知恵は、一瞬冷たいものが背中に走った感覚を得た。


「もしもし?知恵?」


「あ、あったの?すごいね、合格したってことなの?」

知恵は慌てて聞き返した。


「番号、あったんだよ。間違いない、何度も見たから。う、う、受かったんだよ。」

電話の先で泣いているのか、その声は詰まって聞きづらくなっていた。

「本当に?すごいね、すごいね・・よく頑張ったね」

さっきとは逆に、今度は温かいものが頭部を包んで、知恵の目に涙が浮かんだ。

知恵にはこれ以上の言葉は浮かばなかった。


「よく頑張ったね、すごいね、とにかく早く帰っておいでよ」

「なんだか涙が出てきた、うん、今から帰るね」

電話を切った途端、子機を置く前に知恵の目からボトボトと涙があふれでてきた。