今から773年前の春、建長5年4月28日のこと。
千葉県の清澄山に、昇る朝日に向かってお題目を唱える、一人の若きお坊さまがいらっしゃいました。
それが日蓮大聖人です。
当時は、地震や飢饉が続き、誰もが「どう生きていけばいいのか」と震えていた時代でした。
その暗闇のような世の中に、「南無妙法蓮華経というお題目こそが、皆を救う光になるのだ」と力強く宣言された。
これが「立教開宗」です。
それは、新しい宗教を作ろうという野心ではなく、「苦しんでいる人を一人も置き去りにしたくない」という、慈悲の心からあふれ出た叫びでもあったのです。
大聖人は、私たちが「人」として生きていく上で、一番大切なことは「恩を知ること(知恩)」だとお教えになりました。
私たちは、自分ひとりの力で生きているように思いがちですが、実はたくさんの「おかげさま」に支えられています。
命を繋いでくれたご両親やご先祖さま。
毎日を支えてくれる周りの人々。
生かしてくれる大自然や社会。
そして、心の拠り所となる仏さまの教え。
これらを「四恩(しおん)」と呼びます。
「ああ、私はこんなにも多くのものに守られ、生かされていたんだな」と気づくこと。その気づきが、私たちの心を温かく、豊かにしてくれます。
この「恩」に気づくと、自然と「何かお返しがしたい」という気持ちが湧いてきます。
これが「報恩」です。
では、私たちに何ができるでしょうか?
大聖人は、お題目を唱え、その喜びを周りの人にも伝えていくことこそが、最高の恩返しになるとおっしゃいました。
「ありがとう」という感謝の心でお題目を唱える。
そして、その優しい気持ちで隣の人に接する。
そんな小さなお返しの積み重ねが、自分自身を、そして世界を明るく照らしていくのです。
立教開宗の精神は、遠い昔の出来事ではありません。
私たちが「生かされていること」に感謝し、誰かのために手を合わせるその瞬間に、大聖人の心は私たちのうちに蘇ります。
どうぞ、今日という日を「当たり前」と思わず、「ありがたい」という心で、大切に過ごしてまいりましょう。
