*舞台向かって右が上、左が下。基本役者はαラインまでを舞台とする。なお●記号は一拍の間のことである。


                  「神の駅」

女*佐々木 由紀 
男*四ッ谷 貴明 
女*杉浦 真理子 
男*渡辺 幸也  
女*島本 聡香:F 

皆:神の駅、はじまります。

***暗転***

***明転***
(下手から入ってくる二人)
佐々木:今日ね、すっごくっ疲れたの。ほんっと、ストレスで食べちゃいそう!(オボンをテーブルに置きながら、お腹を気にしつつ)

渡辺:そういえば。今日、資料室の整理しなきゃいけなかったんだっけ?(二人同時に座る)

佐々木:もぉ、何であれちょくちょく整理しないわけ?いきなりやれって言われて、綺麗になる程度のごちゃごちゃじゃなかったわよ!?あっ、幸也いいな。ウズラ入ってる、(幸也のお皿を指さしながら)

渡辺:佐々木のはいってねーの?●●っま、やらねーけどな。

佐々木:うっわ、ひっどーい。今は紳士がモテるんだよ!

渡辺:佐々木にウズラをあげても俺はモテません。っていうか、食堂に来る時間を間違えたな。人が異様に多い。

佐々木:まあ、テスト期間とかぶるからね。お昼の時間も勿体ないって感じなのかな。

渡辺:お前がもうちょっと早く資料室の整理を終わらせたら、いつもの席に座れたんだけどなーー。

佐々木:はいはい、悪かったわね。あ、そうそう!聞いてよ、幸也。あのね、今日資料室のファイルを整理してるときに見つけたんだけど、大島聡香って子知ってる?あの、一昨年かに失踪しちゃった子。(飲み物を飲む)●●あの子のファイルがあったの。

渡辺:え。あぁ、うん。知ってるよ。高校生で失踪って言ってかなり騒がれたからな。

佐々木:そうそう。ずいぶん色々言われてたけど、あの事件って全く手つかずで、今もその大島聡香って見つかってないじゃない?

渡辺:あぁ、生きてるのか生きていないのかも解らないらしいからな。でも、ふつうに考えて高校生が失踪ってないよな。●ファイルの中身は見た?

佐々木:見たんだけど、ふつうだった。別に、特別変なこととか無かったし・・・

渡辺:ふーん。●なんでだろーな。

四ッ谷:あの~、すみません。(貴明が一人で入ってきて渡辺に話しかける、渡辺話しかけられ振り返る)相席いいですか?他、空いてなくて。

渡辺:え?あ、どーぞ。
(渡辺と佐々木、椅子の上の荷物をどける)

四ッ谷:ありがとっ、
(さっさと座るが、食べない)(この間、渡辺と佐々木は無口で何か食べたりしている)

杉浦:(続いて杉浦が入ってくる。見回して四ッ谷を見つけるとかけよる)人多いねっ。(座ろうとして、佐々木の方を見る)あ、ゆきちゃん!?

四ッ谷:知り合い?

杉浦:そうだよ。(佐々木を手で示す)幼なじみのゆきちゃん。前話さなかったけ?すっごい偶然っ

佐々木:まりこー!ひさしぶりっ。

杉浦:ひさしぶりだね!そういえば、なんだかんだで会ってなかったね、●●ゆきちゃん、こっちが、あっきー。(四ッ谷を示す)

佐々木:あ、佐々木由紀です。よろしく。・・・あっきー?

四ッ谷:四ッ谷貴明です。こちらこそ、

佐々木:四ッ谷って珍しい名前だね。そうだ、幸也のことは二人とも知らないよね。

杉浦:ゆきちゃんの彼ーーっ?(杉浦、佐々木のことを小突く)

渡辺:違いますよ。(笑っている)どうも、渡辺幸也です。佐々木とは部活が一緒で、

杉浦:そうなんですか。演劇部!?・・・。ゆきちゃんをよろしくおねがいします!!

佐々木:だから、そんなんじゃないって(杉浦クスクス笑う)

四ッ谷:そーれにしても、今日は混んでるねー。(あたりを見回す)まりーいい加減、いただきまーすしないか?

杉浦:あっ、ごめん。いただきます。

四ッ谷:いただきまーす。

渡辺:はあ、それにしても、俺たちには関係ないんだけどねぇ。なんか、こっちまでピリピリが伝わってくる。(周りを見回しながら)

佐々木:なんか、肩身せまいよね。
ねぇ、そういえば、さっきまでなんの話ししてたんだっけ?おもしろい話ししてたじゃん

杉浦:おもしろい話し?ききたい!

渡辺:別におもしろい話しじゃなくないか。
あれ、去年失踪した大島聡子の話し。

佐々木:そうそう。そうだ。幸也記憶力いい♪●二人とも大島聡香って知ってる?

杉浦:知ってる。知ってる。あの子の話しって、直接校長先生からされたよね。なんか、くれぐれも下校時に怪しい人会ったら、“気をつけるように”みたいな注意と一緒に。

渡辺:そういえば、そうだったな。いつもごちゃごちゃ訳がわからんこと言ってる校長が自棄にハキハキしてた。

佐々木:みんなで、驚いたわよね。四ッ谷君は?知ってる?

四ッ谷:うん。置き手紙も、なーんにも無かったから、親戚全員で驚いたよ。

佐々木:え?
(四ッ谷は佐々木と渡辺の方はいっさい見ず黙々と食べ続ける)

杉浦:(気まずそうに話の中に入る)貴明は、聡香さんの従兄なんだよ。

渡辺:大島聡香の!?じゃあ、四ッ谷って・・・

四ッ谷:まあ、でも戻ってこないから

渡辺:いや、でも。

佐々木:なんの話し?

渡辺:何でもないよ、それにしてもこんな時間か(時計を確認する、あたりを見回す)

佐々木:ごまかさないでよね

杉浦:人も少なくなってきたね・・・貴明、今日って午後一なんだったけ?

四ッ谷:数学だよー、古関先生の

杉浦:うそ!やばいじゃん!

渡辺:・・・古関先生・・・って、いそがなきゃだめじゃない?

佐々木:今すぐ行った方がいいわね

杉浦:そうよね、

佐々木:まりちゃん、今日放課後空いてる?

杉浦:空いてるよ~、古関ティーチャーが女神のような優しさで、居残り組から解放してくれたらだけど。

佐々木:そう、OK。赤座布団だけはもらわないでね。じゃ、放課後部活後に演劇部の部室ね。

杉浦:え、なんで?

佐々木:このあと、その謎だらけの事件を解決するためよ!

四ッ谷:謎だらけって・・・

佐々木:いいの!とりあえず私は気になることがあるのよ!じゃっ、私たち、台本読まなきゃなんないから!
(佐々木、さっさと下手からでてしまう)

渡辺:ごめんね。じゃあ、また
(渡辺も後を追う、残った二人はなにも会話せず黙々と食べる。気まずい雰囲気。)

***暗転(1)***
***明転(1)***

杉浦:・・・・失礼します(上手から入る、)

四ッ谷:ああ、まり。遅かった、な。

杉浦:あれ、まだ誰も来てないの?

四ッ谷:なーんかまだ、やってる

杉浦:ハードそうだね。

四ッ谷:あの二人ね、シリアス系の劇自主練でやってるんだってさ

杉浦:え、渡辺くんと二人で???●●やっぱり、なんかあの二人怪しい。

四ッ谷:●●●なぁ、聡香の話しって、何の話しするんだ?

杉浦:(ふと、真面目な表情になる)何も話さないわ。

四ッ谷:・・・じゃあ、何でここに来たんだ

杉浦:ゆきちゃんと話したかったからよ。

四ッ谷:はあ、なぁ。

杉浦:うるさいわね。あのゆきちゃんが適当なことを言って信じると思う?しかもあの渡辺くんて子もそうよ。

四ッ谷:でも、嘘を言って信じる相手でもないんだろ?話す必要なんてどこにも無いんじゃないか?

杉浦:そうね。言ったらどうなるかっていう興味かもしれない。ねえ、あき?あきも何か知ってるでしょ。そうじゃないとあなたがここに来た理由がないもの。

(外から、

佐々木:だから辻君はそうゆうキャラじゃないって!

渡辺:じゃ、なんだよ。

佐々木:だから、あれよ!もっとなんていうの)

四ッ谷:お前、変なこと絶対に言うなよ。(外から二人の声が聞こえて慌てて、)

杉浦:変なこと?(ひそひそ声)

佐々木:ツッカレターーー!(上手から勢い良くでてくる)

渡辺:疲れたなどといいう言葉を軽々しく口にするな。お前はいつもそう。俺に心配ばかり

佐々木:はいはーい、辻君。そろそろ、役から抜けようか。(渡辺の頭を叩く)

渡辺:(ハッと我に返ったような表情。その後笑顔になりテヘペロをする)

佐々木:キモ。あ、お二人っさーん。来てるじゃない。

渡辺:すまない。マスメディアが私たちを蟻のように囲んでいたので、遅れてしまったのだ。(勢いよくハキハキと胸を張って)

皆皆様:●●・・・(シーンと静まり変える)

四ッ谷:・・・嘘付け!貴様が女とインラブだったから遅れたのだろう!(いきなり立ち上がり渡辺につかみかかる)

渡辺:それは断じて違う!(最初驚くが、四ッ谷が気を利かせて自分の一人芝居に参加してくれているのに気づき、芝居を再会する)

四ッ谷:じゃあ、その首もとについた口紅は何だ!

渡辺:いや、待て(おろおろとした演技をする)

杉浦:違うのよ!この人は悪くない!この人はただ私を“好き”(小さい声で)といっただけなのよ!(私が・・・という時にわらってしまう。続いて皆笑う)

渡杉四:ははは

四ッ谷:やっぱ、そうじゃねーか。

渡辺:これはこれは。フォローしてくれるのかと思ったら

佐々木:二人とも演劇部に是非!きてほしい!!

四ッ谷:いえいえ。めっそうもない。

佐々木:ねえ、幸也!あのさっきの劇に二人を入れたらとっても良いと思うんだけど!

渡辺:確かにさっきカットしなくちゃいけなかった部分も、この二人が入ればどうにかなりそうだ

佐々木:幸也!

渡辺:佐々木!(二人ともおかしなテンションで抱き合う)

杉四:戻ってこようか

渡辺:あぁ。ごめんごめん
(二人も空いている席に座る、稽古のあとらしく少し汗を流している、佐々木もそれにならい座る)

杉浦:なんか変な感じだね。なんでこの四人で集まってるんだろ

渡辺:なんか、初めて会った気がしないよな。

佐々木:ほんと、偶然。変だね

四ッ谷:まぁ。俺たちがここに居合わせる理由があいつってゆーのが変な感じがするのかな

佐々木:そういえば、そうだよね。私が偶然罰を受けて資料室の整理をしなかったら私たちはきっと会ってないわよね。

渡辺:やっぱり罰だったのか。

佐々木:あっ。もう、どうでも良いじゃない。

渡辺:そうじゃねーかとは思ってたんだけどな。(表情はにやにやしているがどこか暗い)

佐々木:ふん。

渡辺:でもさ、四ッ谷。本当に坂本聡香の行方ってわかってないのか?親戚だけ知ってることってありそうだけどな。

四ッ谷:なにも聞いてないな。

渡辺:そうか・・・。

佐々木:その、聡香って子ってどんな子だったの?

四ッ谷:普通かな

佐々木:普通って・・・(杉浦を見る)

杉浦:うーん。さとちゃんは、背が高いよ。

佐々木:だからそーゆうことじゃなくて。性格!

杉浦:えぇっ。ああ。うーん。

四ッ谷:可愛いよ(しれっと)

渡辺・佐々木・杉浦:えっ

四ッ谷:・・・?どうかした?

渡辺:何でもない。(小さく)

佐々木:ねね。咽乾いちゃった。

杉浦:あ、私も!

佐々木:部の冷蔵庫が隣の部屋にあるから取りにいかない?

杉浦:そんなのあるの?いくいく。あっきーたちは?

四ッ谷:俺はいいや。

渡辺:俺もいいや。

佐々木:そう。じゃ、行きましょ(妙にせかせかして)

杉浦:いってきまーす。(上手からでる)

渡辺:あいつら、絶対なんか話しに行ったぞ。なっ?

四ッ谷:たぶん。●●まぁ、渡辺君の話だと思うけど

渡辺:え?俺!?

四ッ谷:だって、渡辺くんの反応凄い怪しかったし

渡辺:え?

四ッ谷:聡香の話の時の話しだよ。

渡辺:いや、違うんだよ。

四ッ谷:聡香のこと知ってるんでしょ?

渡辺:●●●なんで、それが?

四ッ谷:まぁ、あいつも演劇部だったから。知らないわけないよね。同い年だから少なくとも少しは部活の期間がかぶってるんじゃないか?

渡辺:●●人が悪いな。●●知ってる?「神様の指輪」●って。聡香が主役だったんだ。凄かった。(酔ってる)

四ッ谷:うん。知ってる。確か、舞台はどこかの駅だった。

渡辺:あの戯曲はあいつが書いたんだ。

四ッ谷:そうなのか?

渡辺:あの独自の世界感と物語性。俺は一瞬で、ファンになったよ。
(外から足音が聞こえて黙る。四ッ谷、目をふせる)

佐々木:けっこう、重いね。

杉浦:重いね、ただいま~(杉浦と佐々木が帰ってくる。上手)

佐々木:はぁ、疲れた(何本かジュースを持っている)

渡辺:あっ。お前それ!俺が冷蔵庫んなかに入れといたやつ!

佐々木:なによ。すこしくらい良いじゃない

渡辺:楽しみにしてたのに。あ、そうだ。佐々木っ!神様の指輪って作品知ってる?

佐々木:え?聞いたことない

渡辺:三年前の戯曲なんだけど。●●ちょっと、探してくるっ!(走り去る。)

佐々木:なんなの?

四ッ谷:いや。聡香が書いた脚本があるって言ったら・・・

佐々木:え!?

杉浦:そんなのあるの!?読みたい!さとちゃんってやっぱりすごい。

佐々木:●●え、。じゃあ、その島本聡香って演劇部だったの?

四ッ谷:知らなかった?

佐々木:知らないわ。だって、私去年転校してきたんだもの。じゃあ、もしかして幸也は知ってる?

四ッ谷:●●あぁ。知ってるよ。

佐々木:●(絶句)そんなっ、酷い・・・●さっきから色々知ってて話してたってこと!?

杉浦:ゆきちゃん落ち着いて。渡辺くんも悪気があったわけじゃないって。

渡辺:(息を切らし走って入ってくる)っは。あった。

佐々木:何で、私に知らないふりしたの!?

渡辺:え?(そして気づいたように、四ッ谷をにらむ。四ッ谷肩をすくめる)いや、言いづらかったんだ。彼女うちのスターだったし(それを聞き佐々木は唇をかみしめる)

四ッ谷:やけに早かったな。台本は?

渡辺:(脱力したように四ッ谷にわたす)はい。

渡辺:登場人物は。

佐々木:四人

杉浦:ねぇ、この劇直接見たことある?(渡辺と四ッ谷がうなずく)

四ッ谷:聡香が主役だった劇だ。

杉浦:じゃあさ、やってみることできるってこと?●やって見ようよ

四ッ谷:無理だよ。劇なんてやったことがない

佐々木:大丈夫よ。読み合わせくらいなら(脱力した表情で投げやりに刺々しく)

渡辺:良いかもしれない

佐々木:なに言ってるのよ。最初からそのつもりだったくせに

渡辺:はは。ばれてたか。今、偶然ここに四部台本がある。

四ッ谷:確信犯かよ

渡辺:やるよな?

***暗転(2)***
(休み時間)
「神の指輪」
***明転(2)***

(暗い照明の中、Fは座り込んでいる。絶望した表情での台詞)

F:私は動く人形である。私には意志がないのであって、他の人、の意志が私の行動に反映されているだけなのだ。
私は我儘な人形である。私の行動すべてがその我儘なのである。歩くことも喋ることも、することも、したいことも、我儘なのであって、何も理解していないただの人形のすることは全て間違っているのである。私には“意志”が無いのでそうも思わないが、私を動かす他の人から見たらそれはただの我儘なのである。人形の戯言なのだ。
 私は、私を動かす他の人のことは嫌いではない。しかし、所詮人形する戯けなど、私を動かす他の人から見ればそれはやはり“我儘”なのであって、私を見るその目には私など“人形”にしか見えないのである。
私は人形。ただの人形。
私のするべきことはなんですか?他の人に認めてもらうことですか。他の人に認めてもらうためにはどうすればいいですか?他の人の意志をきくことですか?(意志で利くことですか。)他の人の意志をきけば、私は認められるのですか?
本当にそれは認められたことになるのですか?
 このまま私は、人形ですか。

<VR1>
神様1:いいえ。あなたは、人形なのではありません。あなたは“子供”なのです。

<VR2>
神様2:私たちにはわかります。あなたが本当にいるべきところが、

F:あなたたちは誰ですか!?

<VR3>
神様3:私たちはここにいます。あの駅であなたを待っています。

F:あの駅とは、どこですか!?

<VR4>
神様4:あなたにならわかるはずです。あなたが行くべきところです。

神様1:その前に一つ約束してください。

F:はい!

<VR5>
神様2:すべてを書いておきなさい。

F:すべて、とは?

<VR6>
神様3:あなたがしたこと、考えたこと、それがすべてです。

F:それは、なんのためですか、


…聞いているのですか?
私をお見捨てになったのですか。
お願いです、ちがうのです。
私は、ただ。
(泣き出す)


<VR7>
神様4:聞いております。

神様1:あなたはただこちらに来ればいいのです。あなたのポケットには指輪がはいっています。その指輪があなたをこちらに招きます。

神様2:そして、それが、あなたへの答えになります。

F:ポケット?なにも入ってないわ!(ポケットを確認、そして指輪を出す)ぁ。これですか!(泣きながら)わかりました。

<VR8>
神様3:あれを書き忘れないで。かならず、書いて。それがあなたのすべてなのだから。

F:わかりました。

***暗転(3)***

(注※私=わたくし、と読む)
四ツ谷=事ノ神(コトノカミ)
渡辺=花ノ神(ハナノカミ)
佐々木=気ノ神(キノカミ)
杉浦=雷ノ神(ライノカミ)
神には性別はないので中性的であることを心得ること。

<VR9>
神様1、2、3、4:では、また。

<VR10>
Q:私(わたし)は本当は死んだはずなんだけどね。まだこうして言葉だけで存在している、ある日記帳の魂だ。一つ興味深い話をしてあげよう。良くおきき、
あるところに、どこにあるか誰も知らないし、見ようとしても、誰にも見えない駅があるそうだ。その名は神の駅。どうやら、神隠しの駅に神様が住み着いた、という噂でね。静かな場所に、確かにその駅はあるのだけど、それは誰にも見えない。神の駅の住人以外は…。そう神にしか見えない駅なんだよ。

ん…?なになに?ちがう…?他の誰かにも見えるはずだ、と?んん。
しょうがない、教えてあげよう。この駅を見る方法だ。それはいたって簡単。駅の中のものを持ってさえいればいい。触った相手には、その駅が見えるようになり、持っていればその者は駅のなかに入れる。
だから、時々見えてしまう人がいるんだよ。この神の駅を。
ここのなかにいる神様たちは、とても面倒くさがりでね、
神様の仕事は勿論、人を助けることなんだけど、自分たちで出向かないで、神の駅の物をポンと私たちの世界に落とすんだよ。かれらは下界と呼ぶがね。
神の駅の物はね、神の力が宿っているからエネルギー的にとても強いんだ。だから、神の駅の物は神の駅に帰ろうとするんだよ。その時、それを触った人も一緒につれてこさせるっていう寸法。彼らはそうやって仕事をしてるんだ。
そうやって、連れてこられた人のことを神様たちは“悩み人”って呼ばれている。なぜ、“悩み人”ていう名前かっていうと、それぞれ、その人たちは問題を抱えている人たちだからなんだと。
ああ、いけない。しゃべりすぎたね。
え、まだ、聞きたい?
困ったな。しょうがない、これ以上話すとね、私はこうして存在できなくなってしまうんだよ。だから、あなたたちにちょっとだけ、神の言葉をあげよう。触るだけだよ、
そうすれば、神様たちのことをちょっと覗くことができる。
よくおきき、いくよ。
“神の駅の悩み人は、そう簡単に帰れない”
忘れてはいけないよ。絶対にだめだ。あなたたちも帰れなくなってしまうかもしれない。これを書いたあの子みたいに・・・・


***明転(3)***

(四人の神様は、それぞれ思い思いの場所でくつろぎながら話している。下界は後ろにあるという設定。)

四ツ谷:最近人が来ないわね

渡辺:来るわけないじゃないか。最近なにも落としてないんだ。

四ツ谷:なによ。えらそーに。

杉浦:最後に落としたのは、あれだよ。指輪。指輪が最後

四ツ谷:何、この駅も最近不景気なわけ?

渡辺:事の神みたいに、いちいち下界に降りて遊びでおとしたりしねーんだよ

四ツ谷:私(わたくし)の神聖な行いを遊びというつもり?華ノ神なんて、ポンと落とすだけなくせに、良く言うっ

渡辺:何が、神聖だ。この駅の中のものばら撒いて、この駅に人を集めてるだけじゃないか。人は我々みたいに簡単に出入りできないんだぞ?

佐々木:そんなッカッカしないでよ。この立場にいる以上、これ以外のしかたでは、人は救えないのよ。

四ツ谷:ほんと、そうよ。これ以外のしかたでどう、人を救おうっていうの?それとも救わないつもり?

佐々木:そういえば、あなたが救っているのは見たことがないわ

杉浦:華ノ神は救ってますよ。先週の指輪は華ノ神が落とされてきたものですもの。

四ツ谷:…なんと

杉浦:拾ってこられたのは、確か女だったような

佐々木:ん、女だった。妙に落ち着いて。目の下に濃い隈ができてた。

四ツ谷:華ノ神は面食いなのかね、えらいべっぴんだったよーな

佐々木:でもその子、結構色々あったみたいで。

杉浦:意外に華ノ神は、“悩み人”を選ぶのが上手みたいね

四ツ谷:私(わたくし)よりもか?

佐々木:事の神よりも、に決まっているじゃないですか。事の神が連れてこられる方は確かに悩み人ですけど、隠れた悩みばかりなんですよ

佐々木:そうそう。この前事の神がつれきた陽気なおじいさんを見たときはびっくりしたわ。

渡辺:あれは肝が冷えた。悩み人じゃなかったらどうするつもりなのかとっ・・・

四ツ谷:何をいう。見えない悩みこそが命取りなのだよ!??

佐々木:はいはい。

杉浦:それにしても、そのあとあの子どうなったのよ。ちゃんと帰ったの??

渡辺:それが、帰せなくなってしまって、

佐々木:はああ!?ウソでしょ!?あのこ、まだ若いのよ?そんなに早くからこっちにたら…一生かえれなくなるじゃない!?

四ツ谷:まさか、華ノ神の“落し物”を無くしたとかじゃないよな…

渡辺:すまない

杉浦:!何を無くしたんですか、

渡辺:指輪だ。いつも指にしてた。

(華ノ神の話をきき、皆驚愕の表情)

四ツ谷:なぜそんなものを!落し物のなかでも最上位のものだぞ?そんなものを、人間が無くしたら…どんな罰がくだるか

佐々木:まさか、落し物の上位が上がれば上がるほど、その人間はこの駅に縛られることを知らなかったわけじゃないわよね!?

杉浦:指輪ですから…しかも、いつもつけてたとなると、エネルギーが強すぎます。

渡辺:強くないと、だめだったんだ。

四ツ谷:それほどの人間だったってことか?

渡辺:悩みの光が強かった。そのままでは生ける屍となる予兆があった。我々は救うのが仕事だろう?ほおってはおけなかった。

杉浦:その若さで…なんでそんなに大切なものを彼女は無くしたのでしょう。

四ツ谷:華ノ神、もしかして彼女は…

渡辺:そうだ。

四ツ谷:自分からなくしたと?

渡辺:そんなはしては、いけかったんだ。自分で自分の行く道を狭めるなんて彼女は戦うべきだった。でも、彼女が救われる道はそれしかなかった。彼女がそう望んだんだ。
でも、最近。気づいたようだ、私は(私は)彼女の未来にかけた、彼女が書いた文を送ったのだ。彼女の過去に。

佐々木:送った?しかも、過去に?何年前のよ!

渡辺:3年前、送っても大丈夫であろうと判断した。未来が変わるとしても、彼女がここに来ないだけの話だ…。彼女には、頑張ってほしいんだ。彼女には光るものがある。

杉浦:そうね。彼女には暗い中に何か光るものが見えた気がする。

佐々木:そんな。でも、そうよね。長い時間人間をこの中に閉じ込めるわけにはいかない。100年単位の過去かとおもったから心配したけど。3年ならそんなに時空は乱れないわね。

杉浦:そうですね。それで、送ったのって、なんの文なんですか?

渡辺:日記のようなものだった。なにやら、昔から書いていたものらしい。とても大事そうにしてたな。

杉浦:そんなものを。では、もし送ってしまったことが、上に知られたら。

渡辺:…私(わたくし)は、切られるのう。
…雷ノ神、気ノ神、事の神。このことについてはだまっていてくれないか。
彼女には頑張ってほしいんだ。(それぞれを見ながら、皆黙り込む)

杉浦:なんのことかしら?とんと検討がつかないわ?気ノ神にはわかる?

佐々木:私(わたくし)にも、とんと

四ツ谷:まったく、ひまじゃひまじゃ。

渡辺:すまない。ありがとう。こんな神友がいてほんとたすかる。

四ツ谷:気持ちわるい略し方しないでくださいよ。したのものにわらわれますよ。

佐々木:ホント恥ずかしい(杉浦笑っている)

***暗転(4)***

皆:拍手

***明転(4)***

(部室に戻って席についている)

渡辺:いやいや、さすがだね

佐々木:私たちが見込んだだけあるわ!四ツ谷君の演技力半端ない!

渡辺:たった30分でこれだけだ!今度また、やろう。

杉浦:それにしても、聡ちゃんの脚本面白いね。良くわかんないけど…

四ツ谷:ほんとー。世界観が独特すぎる

渡辺:(時計をみる)あ、もう。こんな時間!

佐々木:ホントだ!私帰ってやることがあるのよ

渡辺:俺もだ!

佐々木:幸也!

渡辺:佐々木!!

佐々木、渡辺:行こう!

渡辺:じゃ、お二方!またなっ

佐々木:んじゃ、またね。お二人さんいい夜を!♪

(スキップで二人とも出ていく、唖然としている四ツ谷と杉浦)

杉浦:なんか、忘れている気がする。

四ツ谷:この劇なんのためにやったんだっけ?

杉浦:聡ちゃんの過去を探るため、

四ツ谷:やられたな。

杉浦:ホントよね。

四ツ谷:だれも考えるはずがないな。この台本が、…聡香の日記だなんて。

杉浦:いや、それは誰かが気づいてるんじゃない?
気づいてないのはむしろ、

四ツ谷:俺たちも台本ってことか?(にやっ)


***暗転(5)***

杉浦:彼女は帰ってくるかしら?

四ツ谷:いや、彼女が選んだ道に進むんだ

***明転(5)***
皆:ありがとうございました。 FIN

2011年06月25日

脚本・演出 chick