ー私はその何度でも開かれる目が嫌いだった。ー

机の上に何本ものペンを立てて倒すことを繰り返す。カタンッという机にペンが倒れる音はこのうるさすぎるこの場所では響かない。私の耳に入るのはさっきから雑音ばかりだ。
そのことに別段腹を立てていたいた訳では無いが、隣に座る彼女は私がいつ怒鳴り出すか気が気でないようだ。先程から何度も隣で私の表情を確認しているのがわかる。
「提出日は今日なの?」
覚悟を決めたのか彼女は口を開いた。多分、この質問に意味は無いのだろう。口を開く口実、もしくわ私に話しかける口実だ。どちらにせよ、彼女が口を開いたことには変わりが無かった。
「明日だよ」
私が答えたことに安堵を覚えたのか彼女の顔に笑みが浮かぶ。ストレートの黒髪を掻き上げる仕草をすると「そっか」と私の言葉に返答を返した。
そこで会話が終わる。
そういえば私たちは良く二人でいるくせに、あまり会話という会話をしないことに気づく。のくせ、気まずい雰囲気ならないのが不思議だ。
静かになった彼女の方を見ると、もぐもぐと口を動かしていた。うるさい子供がお菓子を与えられて静かにしているのにとても良く似ている。
彼女の赤い実を彷彿させる小さな唇と、漆黒の瞳の周りを縁取る睫は、瞳より、より黒い陰を落としていた。カラスの碧光する羽を思い出させた。
彼女の外見を一言で表すとしたら、美人。
この言葉が似合う。“美しい人”これ程ぴったりくる言葉は多分これ以外、存在しないだろう。
華奢な躰は程良く脂肪がついており、女性的な色気もある。それを隠すようにきる彼女の黒いコートは邪魔な様であるが、彼女なりにバランスをとっているいる様で、只単に彼女に服のセンスがないわけではないようだ。
すらっとした黒いタイツを履いた彼女の足がいきなり音を立てて立ち上がった。