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 風が勢い良く後ろから私に吹きつけてくる。冷たい、頬を叩くような風だった。
 私が持っているゴミ袋は風に押されて、私の力を借りずに前に持っていかれる。ゴミ袋は重かったので、正直助かった。
 くるくると回りながら遠心力でゴミ袋を持っていこうとすると、なんだか目が回った。もう、3月だというのに暖かくならない風を恨みながらそのまま、すてんっ、と座り込んだ。太陽を見上げる。意外にも太陽は煌々と輝いていた。
「さむいよーー」
 太陽の光は暖かかったし、今は風が止んだので寒くないはずなのに、そう呟いている自分がいた。
 さむい、と言ったついでに、もーいやー、と叫んでみる。
私の声はどこにも響かず、空に吸い込まれていった。
 ここで座っていても、何も変わらない。誰かが私の替わりに、ゴミ袋を校庭の裏の焼却炉まで持っていってくれるわけではない。
 意を決して立とうとすると、私の目の前に手が差しのべられてることに気づいた。学ランの袖口から、学校指定じゃない黒のセーターが見える。
 顔を確認すると、知らない人だった。
「大丈夫?」
 その人は、私のことをのぞき込みながら質問してきた。社交辞令の様な冷たい響きだった。
 どこの誰だろうと思いつつ、「だいじょうぶです」と言い、得意の笑みを顔に浮かべて自力で立ち上がる。腕にぶら下がるゴミ袋は相変わらず重かった。
「持とうか」
 彼がまた口を開いた。本当は持ってもらいたかったけど、彼の容姿が私のことを遠慮させた。彼の容姿はとっても、私好みだったのだ。
「ありがとう」
 謙遜の意味で、そう言ったあと、急いでその場から離れようとゴミ袋を引っ掴んだ。
 何とか重いことを悟られないように、目一杯腕に力を入れる。そうやって、どうにか彼から私が見えなくなる角まで、ゴミ袋を運ぶ。腕が契れるかと思った。それでも、苦労して持っている姿は見られたくない。
 そして、角を曲がるとすぐゴミ袋を床に叩きつけてしまった。それほど腕が痛かった。
 後ろ髪を引かれるような思いと、さっきとは比べられないほどの疲労感が体にのし掛かって、体を重く感じさせる。
 さっきのように、床にへたりこむと、空を見上げた。空は、相変わらずの晴天だった。
「はぁ、」
 ため息をつくと、今度は空に吸い込まれず、私の耳に返ってくる。そのため息は私をもっと憂鬱にさせた。
「もーーーいやーーーーーー!」
 空に向かって叫ぶ。空は、私なんて関係なく何事も無かったように、青い。
「なーーんで、こんなにおもいのよーーー!」
 ひゅう、と吹く風が私の髪を空に打ち上げる。ストレートの髪は風に飛ばされて散らばる。
私の視界の中で、空が滲んでいく。気がつくと涙が、溢れていた。
 嗚咽もない、ただ流れ落ちる涙だった。

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