善意に見せかけた搾取 | 秋山のブログ

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日経ビジネスに2000万人の貧困という記事があり、書籍にもなっている。質の高い取材であるが、ひとつの記事だけ問題がある。ゴールドマン・サックスによる貧困層への投資を良いものとして捉えていることだ。

教育や訓練を受けた人間は、その生産性を増大させる。教育等を受けさせることによって、誰かの生産性が上がれば、総生産量は増大する。総生産量が大きくなって、それが適切に配分されることが理想なのだから、貧困層への投資はいいことのように思える。しかしこれは全体を俯瞰できておらず、大事な点を見落としている。教育にかかった費用は返済せねばならず、十分な利益になるほどの利息も払わなければならないことだ。
ピケティが証明したように、近年実際に働くよりも利子配当による収入の方が大きくなっているが、利息のために働く人間が増えるのだからそれを強める作用があるだろう。さらには、この制度があっても、貧困層はやはりそれを利用しなくても教育を受けられる層に比べて、大きなハンディキャップがある。中には利息のハンデをものともせずに、人生を改善できる例もあろうが、それは宝くじのようなものであり、この制度が機会均等を実現するものでないことは確かである。
この貧困層への投資は、既に米国でかなりおこなわれていて、スティグリッツ教授がその著書で多くのページをさいて問題を説明している。米国で増やした利息奴隷を、日本でも増やそうという試みに他ならない。貧困層を支援し、機会均等を実現するなら、官から民へは全く正しいことではない。