ホワイトカラーイグゼンプションの潰し方 | 秋山のブログ

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書籍についてはまたおいおい書くとして(実はフリーで書くよりもはるかに時間がかかる)、気になったTV番組があったため書いておく。

ホワイトカラーイグゼンプションについての討論番組であった。高市早苗氏が推進する立場で発言していた。
産経新聞によると「日本の労働生産性は低い。個人のニーズに応じた働き方ができるよう大胆に変える必要がある」とのことである。あたかも個人のためのような主張をしていたが、当然反対派からは、労働者の権利が損なわれるという指摘があった。

雇用者と労働者は対等でないから、労働基準法等の法律が必要であって、長年その法律を運用してきて、それが正しいことはより明らかになっている。ホワイトカラーイグゼンプションの導入は、労働者の賃金を下げたり、無償の時間外労働をおこなわせる例を多々生むだろう。一部の経営者が政府にこれを求めているのは、もちろんこれが本音である。労働者個人のニーズを重要視する奇特な経営者は、こんな法律がなくてもそのような体制作りをしているだろう。

高市氏は、「残業代ゼロ制度」という批判に対して「残業代込みだ」と反論したらしい。であるならば、ホワイトカラーイグゼンプションの適応に際しては、想定される残業時間にリスクプレミアムをつけた値段以上に賃金を上げることを義務づけるように法律を作るべきだ。残業代ゼロ制度でなければ、それに反対する理由はないだろう。

この法律が導入される時には、それこそ組合の出番だ。大幅増額でないケースを見つけるたびに団体交渉だ。増額しないのであれば、これは賃金の不利益変更に他ならない。

政府は導入に際して、高額所得者に限るという枠を作って、批判をかわそうとするだろう。一旦導入してしまえば、条件を引き下げるのは容易だとかの話もあるが、時に自分より少し恵まれた人間が損をすることを歓迎するという人間の好ましくない心理につけ込む方法でもある(賃金の減った分が他の中低所得層に移行することはほとんどない)。これはどこで線引されようが反対しなくてはいけない。

もうひとつ注意しなくてはいけないことは、賃金が下がることに反対することが、自己中的な考えであるかのような的外れな指摘がでてくる可能性である。自民党も民主党も認めているように、国民の賃金を上げることが、良い循環をもたらし、景気をよくする鍵である。本来それに完全に逆行するようなことをしてどうするのかという話だが、企業の利益と賃金と需要と雇用の関係をきちんと理解できていないからだろう。

どのように導入されるにせよ医師はまさにこの制度のターゲットだ。公立病院の多くは、医師が当然の権利に目覚めたことに対して何とかしようとしている。官僚時代から労働者の権利に疎い奈良県知事などは心待ちにしているだろう。
逆にこれを利用して、労働者の権利の確立と、正しい経済政策への世間の理解のきっかけになればと考え、何だか少しワクワクしている状況である。