朝ドラ「虎に翼」で「桂場等一郎」を演ずる松山ケンイチの演技が光る、なんて言うといかにも評論家的な上から目線になるので、松山ケンイチの芝居が好きだ、と言い直しておくね。

 

 謹厳実直な裁判官という役柄に少なからず戯画的な要素を取り込み、見事にキャラクターを完成させている、と、ここまでなら同じく裁判官である「多岐川幸四郎」を演ずる滝藤賢一もそうなんだけど、二人のあいだには決定的な違いがあるような気がする、って結局評論家的だなあ。 仕方がないか。

 

 桂場等一郎は、まぎれもなく松山ケンイチが演じているけど、ドラマを見ていると松山ケンイチの顔はしているものの、彼は桂場等一郎以外の何物でもない。 で、ちょいと横を向いて多岐川幸四郎を見ると、そこにいるのは多岐川幸四郎を熱演する滝藤賢一がいる。 そう見えるのは隠居、老化のせいだろうか。

 

 滝藤賢一は、ほかのドラマや映画TV・CMなどを見ても、滝藤賢一その人なんだよな。 無名塾の出身ということで、師匠の仲代達也に似ちゃったんだろうか、なんて考えたり…そういえば、目玉が大きいところも似てるよね、って目玉のサイズまで師弟関係で似るわけがない、と言いながら同じく無名塾生だった遠藤憲一も目玉大きいなあ、なーんてね。

 

 仲代の芝居は、まあ業界用語を使えばクサいの一言なんだが、これは塾生には受け継がれていないかもしれない。 役所広司も若村麻由美にしても芝居は抑制的だものね。 年代・世代もあるかもしれない。 山崎努も結構クサいし。

 

 何を演っても本人以外になれ(ら)ない役者の代表格は三船敏郎かな。 誰それが見たい、というファンたちにとっちゃたまらない。 役は二の次さ。 スターシステムというのはこういうことを言うんだろう。 市川右太衛門(北大路欣也のおとっつあん)だの、大川橋蔵だの、往年の東映時代劇はこれの代表選手かもしれない。 東映時代劇と言えば、山城新伍という役者がいて、役なりに演じて見せる数少ない準主役級だったが、かえってそれが邪魔して大スターにはなれなかったのかもしれない。求められるものがちがったんだなあ、と思う。

 

 

つづく