珍しく本の紹介をしましょう。

 

 「明日の 子供たち」という本です。

 

 著者は有川浩。

 

 私が読んだのは、いつもの百円コーナーで購入した二〇一八年の幻冬舎文庫版ですが、初版はさかのぼること四年の二〇一四年、同じく幻冬舎だそうです。

 

 私は、本を紹介するときにあらすじなどを書くことを好みません。 次に読む方の想像力を邪魔してしまうのではないか、とおそれるからです。 かといって内容に全く触れないわけにもいきません。 というわけでいつもわけのわからない大づかみな文言でお茶を濁すことになるのです。

 

 さてそこで「明日の 子供たち」なのですが、内容については、児童養護施設を舞台にした群像劇、ということだけ申し上げておきましょう。 それより久々に本を紹介したくなったその理由です。 

 

 知的好奇心を満足させてくれる本や、謎解きを楽しませてくれる本、実生活に役立つ本、華麗なファンタジーの世界に連れて行ってくれる本、物事を考える上で参考になる本、その他もろもろはあっても、いい本、とざっくりくくれるものはそう多くないような気がします。 この本がそれでした。 あくまで私にとっては、という但し書き付きですが…読み終わるまでに四から六回くらい、まぶたを拭わなければなりませんでした。 私は、という但し書き付きですが…

 

 エンターテインメント小説として成立していて、その上で私の内にあった無自覚な蒙をいくつも啓いてくれたことも書き添えておきたいと思います。

 

 最後にちょっとだけ評論めいたことも…

 有川浩の作品は何冊か読んだことがあります。 彼の作品には、基本的に善意の人しか出てこないのです。 甘い!とおっしゃる方もおられるでしょうが、私にはそれがとても心地よい。 宮部みゆきが、人の毒というか悪意に焦点を当ててしまう、業のようなものと対照的だと感じます。気が向いたらお読みくださいますように。