承前

 

 さて組織ができて、それぞれの部署がそれぞれの役割をきちんと果たしていけば、Aさんの事業は順調に進んでいきます。 でも組織が大きくなればなるほど、部署と部署の役割分担が重複したりあいまいになったり、また連絡がきちんと届かなかったりと、思うように組織が動かないことが出てきます。

 

 そこで考え出されたのが事業そのものではなく、様々な部署のあり方=かたちや役割分担のしかたなど、組織がうまく動くために点検や補修をする、管理ための部署です。

 

 機械や自動車がちゃんと働くために定期的な点検や補修が必要なのと同じく、事業を効率よく進めていくためには、組織が滞りなく動かなくてはなりませんし、そのための点検や補修が必要です。

 

 専門用語では組織防衛という言葉を使います。

 

 この組織そのものを維持するための部署は大変重要です。  

 重要であるがために時として、いやほとんどの場合、Aさんが始めた事業の目的を超えて組織の一番の目的となってしまいます。

 

 目的を果たすためには組織がうまく動かなければならない。 組織がうまく動くためには常に点検と補修を怠ってはならない。 だから点検と補修は何よりも優先して行われなければならない、といういかにも的を射たような理屈がまかり通るのです。

 

 本来の目的を二の次にして組織防衛が最優先になった最悪の例を、私たちは嫌というほど見てきました。

 

 かといって組織なしに大きな目標・目的を手に入れることはかないません。

 

 好むと好まざるにかかわりなく組織と無縁ではいられない私たちは、この、宿命ともいえる組織の欠陥を克服する知恵を持たなければならないのです。

 

おわり