トンネルラッシュ | ジャーナリスト藤原亮司のブログ

トンネルラッシュ

ガザ地区中南部の町ハンユニスと最南端の町、ラファへ。

トンネルには去年の夏にもぐったし、あまりにもどのメディアもトンネルトンネルとうるさいので行きたくなかったけど、ガザの状況を伝える絵を見せるにはやっぱり行っとかなきゃいけないかなあ、と思って行く。


その前に、ハンユニスの病院へ。

日本の医療NGOの支援に対し、現地の病院はどんなニーズがあり、どんな気持ちを持っているかをリサーチ。

ところがガザに来ていろんな病院を回っても、どこも対応がとてもおエラい。

「支援をしてくれるならしてもいいよ」とか、「コンタクトを取りたいのならまずそっちの要望と詳細を書いたメールを送ってくれ」とか。


ほんとに、役人根性というか、援助に慣れきって援助を当たり前と思う体質が染み付いてしまった、本人は援助の必要もあまりないハイクラスな人たち。病院のディレクタークラスの人たちの思考は、ほんとに唾を吐きかけたくなる。

やつらのくだらない役人根性や鼻の高さのために、本当なら届くはずの支援が、必要とする人たちに届かない。

「CTスキャンの機械がない」「リハビリ施設を作って欲しい」「医師を教育して欲しい」…。一体何億円の援助を期待してるのか。



ラファ国境沿いは、もうどこを見てもビニールハウスのようなトンネル小屋が密集し、ジェネレーターの音がぶんぶん鳴っている。

気楽に映像と写真だけ撮って帰ろうと思ってると、今回はどこに行っても断られる。知り合いの紹介のトンネルに行っても断られ、何件もふらりと訪れても断られる。

じっくり探せば撮れるトンネルもあっただろうけど、元々あまりやる気がなかったので、まあええわと思ってトンネル村にできたオープンカフェ(ただの露店だけど)に行ってコーヒーと水煙草をたのみ、ぼ~っとする。


そのへんのトンネルで働く兄ちゃんやおっさんと話してると、ギーンという嫌な轟音とともにいきなりF16が3機飛んできて旋回し、示威飛行を始める。

爆弾落とされたらえらいこっちゃ、と思いながらも、なんかどうでもいい気分で水煙草。ほんとにヤバイときは、おれたちよりもトンネル職人たちが先に逃げるはずだし、まあまだ平気かと思ってのんびり。

とはいえ、こんな開けた場所でビデオを向けると危ない気がしたし、軽く慌ててビデオを撮るか写真を撮るか迷っているうちにF16は去って行った。


ラファはさながらゴールドラッシュ。

トンネル職人や商売人たちが、土と汗にまみれて12時間の肉体労働。休憩時間に露店のカフェでコーヒーを飲み、猥談や軽口を叩く。

昭和の頃の日本の町工場の風景、鶴橋の商店街にあるボロい喫茶店の昼休み。

「そっちのトンネル、ようもうかってまっか?」

「いや~、親方がケチで安月給ですわ」

みたいな会話。

去年の夏に話を聞いたトンネルオーナーは言った。「トンネルは武器の密輸のためにあるのではない。サバイバルのためだ」。

とはいえまあ、金儲けのためだし、金儲けのためだと言い切って全然OK。食うために人は生きている。