テキサス女子ラクロス・キャンプ | 今日もTシャツ@TEXAS

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コレクションのTシャツのリスト作りも兼ねて毎日1枚づつにスポットをあてて掲載。Tシャツ掲載終了後はピンズのコレクションへと移行、続いて「貯まってしまったこんなもの」を掲載しつつ、日々の呟きを。→ほぼTシャツブログに戻りました。基本ランニング関連です。

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本日のピニーは、テキサス大学の女子ラクロス・キャンプのピニー。


息子の学校ジャズバンド、今日はテキサス大学のジャズ・フェスティバルに参加。

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フェスティバルは16の高校が参加し、2日に渡ってそれぞれがステージで演奏。




そして生徒たちは、ゲスト・ミュージシャン(フェスティンバルの最後にコンサートを行う)によるクリニックが受けられる。

今年のゲストは、作曲家のマリア・シュナイダー

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クリニックは、マリアさんの子供時代からプロになるまでの生い立ちの話。
どのように音楽に出会ったか、何を目指したか、どのようにトップの音楽大学に入ったか・・・などなどのエピソードが語られる。

これがものすごく面白かった。

ミネソタの周りは田んぼばっかりの田舎町に生まれ育ったマリアさん。

最初の音楽との出会いは、近所の「太ったガレスピー顔」のオバサン(以降Aさんとする)。
明るいAさんが、マリアさんがまだ小さい子供だったある時、夫と子供を同時に亡くされた。
悲しみに落ち込むAさんを励ますために、マリアさんのお母さんが夕食に招待。
夕食に来られたAさんはまだまだ落ち込んだままだったのだが、頼み込まれてマリアさんの家にあったピアノを弾き始める。
ピアノを弾き始めると、次第にAさんの表情が楽しそうになっていく。
マリアさんはAさんのピアノに惚れこみ、レッスンを受けたいと懇願。
そうして始まったAさんのレッスンはユニークで、コンテストで受賞するような演奏を目指すのでなく、感性を大切にするピアノ演奏とでも言うのか。

そのうち、マリアさんはビル・エバンス(ジャズピアノ)を耳にし、「なんじゃこりゃあ~!こういうのをもっと聴きたい!」とレコード店に走る。
(今だと「ネットで検索」なんだろうけれど、音楽を探すならレコード屋、情報を探すなら本屋に走って専門雑誌を手に取る、そんな時代、ね。ちなみにマリアさん、現在52歳。)
ギル・エバンスってビル・エバンスの親戚か?」などととにかくジャズのレコードをむさぼり、そうして知ったギル・エバンスに惚れこむ。

Aさんのもとで、どんどんピアノが上手くなったマリアさん。
高校生の頃のある日、ニューヨークから「ピアノコンクールで優勝した同年代の従姉妹」が家族の集まりでやって来ることになった。
コンクールで優勝した彼女の訪問にドキドキしていたマリアさん。
やってきた従姉妹が見事に弾いたモーツアルトに驚愕。上手かったのだ。
自分のピアノにも自身はあったものの、クラシックを基礎から学んで難しいモーツアルトを見事に演奏する従姉妹と、感性を大切に自由に弾きこなす自分は対照的であることを認識。

ギル・エバンスに師事したいと思うも、人から「ギルは人に教えるのは嫌いで弟子はとらないし、それにマリファナ吸っているからダメ」とアドバイスされ、諦める。

大学で作曲を専攻したかったものの、上記の従姉妹のいきさつもあり、自分が作曲を目指すなどおこがましいと遠慮して音楽理論を専攻。
それでも曲をつくっていたマリアさんに「あなた、才能あるから作曲の方に行くべき!」と勧めてくれた人がいて、その気になる。
「その人、学校関係者だからだからとその気になったけど、今思えば、事務室のアルバイトさんとかそんなので、全然音楽関係者でもなかったんだけど、とにかく自信を持てるそんな一言が欲しかったのね」と回顧するマリアさん。

大学卒業後、音楽大学のトップ校のひとつイーストマンの大学院で作曲を学びたいと願書を出すも、不合格。
不合格理由が「経験がたりない」。
諦めきれないマリアさんは、イーストマンの夏期講座に参加し、その間のできる限りの作曲をし、知り合いの演奏家たちに頼んでそれを演奏してもらい、「コレならどうよ!」と持ち込み、入学を許可される。

作曲に進んだマリアさん。
ある日、「やはりギル・エバンスの元で学びたい」と、意を決する。
大学寮に一つある公衆電話に立ち、ドキドキしながらニューヨークの番号案内に電話。
「ギル・エバンスの電話番号はわかりますか」
「はい、***-****になります」
うそ~!ギル・エバンスの番号が番号案内であっさり見つかっちゃったよ、おいっ!と更に興奮し、ドキドキしながらその番号をダイアル。
繋がった電話は、しゃがれた声で「ただいま留守にしています。ギルかマイルスかにご伝言をどうぞ」という留守番電話音声。
え~!これってマイルス・デイビスの声じゃん!!
あせってマリアさんは反射的に電話を切ってしまった。
というわけで、ギル・エバンスに師事の願いは進まず。
「あの日のあの電話の周りの景色、汗をかいてドキドキしている自分が、今でもはっきり思い出せます」と語るマリアさん。

やがて楽譜のコピーの仕事(と言ってもコピー機などもないような時代。インクをつけたペンで手書きで作曲家が仕上げた楽譜をオーケストラ全員分の数を手書きコピーする仕事)についたマリアさん。
毎日楽譜をコピーする日々。
ある時、作曲をしているという来客と事務室で出会い、「どんな曲が好き?」などという話から話がどんどん盛り上がる。
久しぶりに音楽の熱い話ができて嬉しかったマリアさん。
別れ際に2人は電話番号を交換。
数日後、その相手から電話がかかってきた。
「あのね、あの時は言わなかったけど、私ギル・エバンスの親友なのよ。で、今ちょうどギルがアシスタントを探しているの。」

ずっと憧れてきたギル・エバンス。
そんなひょうんな事で、マリアさんはギルのアシスタントに。
「会ってわかりました。昔のアドバイスはそのとおり。ギルは人に教えるなんて絶対しないし、マリファナ吸ってました。」

ギル・エバンスのアシスタントをしていて、ある日、普段は頼まれないアレンジの仕事を頼まれた。
コンボ向けにギルが作曲したものを、ビッグバンド用にアレンジしなければいけないが時間がないとうのだ。
マリアさんは、よし!とアレンジを手がける。
出来上がった楽譜を見たギルは「何てことだ!」とあわてふためく。
「違うだろ、展開が全く逆の思わぬ方向に向かって混沌とするのが俺のアイデアだったのに、規則どうりの展開になっているじゃないか!」

その一件もあり、マリアさんは心を決めた。
ギルの元は去って、自分のバンドを作り、自分の音楽をやっていく時が来たと。


話はピアノに座って、自分の作曲の仕方のアイデアを披露されたり、まだまだ面白い話が山済みだったのだけれど、全部書いているわけにもいかないけれど、とにかく面白かった。

話を聞いている高校生たちには、進路や人生を考える良い刺激になったはず。
ほんと、良かった。
マリア・シュナイダーのクリニック。


BGM:マリア・シュナイダー・オーケストラ