
東京の地下鉄サリン事件 は13年前の今日3月20日に起った。
当時私と夫は通勤に日比谷線を利用しており、事件当日の朝、夫が私より先に家を出て会社に向かった。
彼の乗った電車は途中で停車し「ここから先には進めないのでこの駅で全員下車してください」という趣旨の車内アナウンスがあったらしい。
訳わからず下車した駅のホームや駅周辺には、倒れたり座り込んだりして処置を待つ人々 がごったがえしていたという。
夫が乗った電車は、サリン事件で死者の出た電車の次の電車だった。
ぞっとする事件である。夫が、私が、誰でもが被害者になっていた可能性もあるのだ。
翌日、米CBSテレビ の東京支社勤務のランニング仲間Cさんから電話がかかってきた。
全米放映のCBSニュースでサリン事件の特集枠を組むのだが、英語で説明できる被害者を探している、あなた(夫)が現場にいたときいたのだけど、と。
夫が「被害者でなく次の電車に乗っていてすでに倒れている人々を見ただけ」と説明したが、それでもいいので、出演してもらえないか、と頼まれた。
承諾すると20分後にはTV局がまわしてきたタクシーが自宅に到着(その20分間にシャワーを浴びてスーツに着替えた夫)。米国CBSが建物の一部を借りて東京支局にしているという、日本の某民放TV局ビルへ。
スタジオで夫はイヤホンを付けカメラの前に座って、カメラテスト。
私は調整室の隅で、窓を隔てた夫の様子とモニターに映し出されるTV放送画像と、Cさんが夫のイヤホンに指示を送るのなどをマルチ鑑賞。
全米朝のニュースは生放送。サリン事件の報道が始まり、ニューヨークのスタジオのアンカーマンが「東京のスタジオに事件を目撃した**さんをお迎えしております。後ほどお話をきかせていただきます」と紹介。サリン事件の概要がまず放送される。
そして「実際に事件に遭遇された**さんに様子をおききしましょう」と質疑応答形式で夫が見た様子を語る。
サリン報道は終わりニュース番組は別のニュースへと移り、夫はお役目終了。
生放送なので、在米の夫の両親には電話はいれておいた。
夫は「ふ~緊張した~。でも両親がこのTV見ていたらまず第一声が何なのか想像はできる。母が絶対まず最初に「ヒゲ剃りなさいっ!」と言うはず。」
当時夫はヒゲをはやしていたのだ。
帰宅後、夫の親からの電話。大当たり~!
夫のおかあさん、「見たわよ~」などよりも前にまず「**、髭そりなさい!」と一言。
サリン事件の際には、私は夫より後で家を出たので、目撃にも出会わずに済んだ。
だが、その5年後の3月、同じ日比谷線で起きた「日比谷線脱線衝突事故 」にはニアミスしてしまう。
脱線して対向車両に衝突し、5名の乗客の方が亡くなられたこの事故で、私はその事故電車に乗っていた。
衝突して犠牲者が出たのは5両目。私が乗っていたのは2両目。
私が乗車するT駅では、ホームに出る階段は最後尾部分にあり、私が下車する駅では階段が最前部。普段はT駅でホームを歩いて前の方の車両に乗る。駅に着いたら既に電車が入ってきている時間だと、近いところで後ろの車両に乗ることもある。
事故の日、T駅ホームの着いた時、ちょうど電車が入ってきた。減速してまだ電車が動いている間、並行してホームを歩き始めたが、5両目あたりで「前の車両は混むから今日はこの辺で乗ろうかなあ」と思ったが、なんとなく足がとまらず、そのまま歩いて2両目の中ほどに乗車し、ドア近くに立った。
事故が起った際、ガン、ガン、と2度ほど衝撃があり、電車は停車。「しばらくお待ちください」の車内放送。
車掌さんも何が起ったのか把握できていないような放送が続き、確か「お客様に中に医者はいないか」という放送が続いた。
何があったのかはわからないまま「この電車はここで停車いたしますので、係員に指示に従って下車をお願いします」との放送で、3両目まで車内を歩き、線路内に下車し、線路のジャリの上を駅ホームに向かって歩く。
そこで目にしたのは、車両の側面がなくなり、席が倒れていて、床面が血だらけの5両目。
まだ中に座って動かない人と、車外で搬送を待つ人の姿も。
床には多くのネクタイが落ちているのも見える。な、何事が・・・まるで爆発があってふきとんだ人がいるような風景だった。
(後に、車内で怪我した人の救急止血に「誰かネクタイ貸して!」と言ったのに応じて、無言でネクタイを投げるしかなかった方がたくさんいたと報じられていて、床のネクタイの謎は解けた)

(写真は朝日新聞より。この車両はすいていたため被害者が少なかった対向車両だと思う)
サリンと日比谷線断線事故、この前後に、私はT駅で人身事故直後のホームに来てしまい、夫はJ駅で人身事故の全部を目撃してしまった。
我が家が日本を離れアメリカに引っ越しする時、日本を離れるのはものすごく淋しかったが、ただ一つ、通勤電車に乗る事がなくなるのは、ほっとした気分だった。
地下鉄サリン事件、日比谷線脱線衝突事故、被害にあわれてしまった方たちに改めてお祈りしたい。
本日のTシャツは、事件後東京のサリン事件が引き合いに出され報道されたりもした(ニューヨークにも地下鉄があり、テロ対策として地下鉄の危険性が語られた際に、東京でのサリンのようなテロの可能性という事で、改めてサリン事件が説明されていたりした)「ニューヨーク9・11テロ事件」の、事故現場での救助活動に参加派遣されたオーステイン消防隊の「9・11メモリアル追悼Tシャツ」。
(↓その翌年の、TH3「サリンメモリアルRUN」。かなり怪しい集団ですよね~このナリで走り回っていたら。)
