
カリフォルニアに住んでいた時、家から歩いてでも行ける距離に小さな日本食品店があった。
物理的な距離は近くても、価格は日本で買う倍くらいする。欲しいものをほしいまま買っていては経済的に無理がくるのと、輸送料などを考えれば仕方ないとわかっていても、「これをこの価格で買わなきゃいけないのか!」と腹立たしいやら悲しいやらで、精神的には遠い店だった。
私はその店を「駆け込み寺」と呼ぶことにした。どうしても日本の味が欲しい時に駆け込める聖地。
オーステインに引越しを決めた際、オースティンにも一軒日本食品店があるのは知った。が、そこには行かないと決めた。
日本に住んでいた時、夫が高い輸入のコーンフレークを買うのを「なぜ日本のコーンフレークがいっぱい売られているのに高い輸入物を物を買うのか?」といつも思っていた。
米国に引っ越して立場が逆になってわかった。同じ物でも、日本と米国のでは味が全然違うのだ。
例えば、マヨネーズ。マヨネーズなんて米国でももちろんあり困るはずはないのだが、味が違う。日本のマヨネーズのほうが断然(私には)おいしい。
それでも、日本で「日本にいる外国人はなぜ地元日本のものでOKじゃないの?」と思っていたことを思い出し、自分は米国に住むなら郷に入り手は郷に・・で、地元製品で暮らしていこうと思ったのだった。
地元のスーパーで売られている、日本食品もどきで郷愁の味覚を騙し、日本の味も忘れてきた。というか、かなり味覚音痴になったように思う。
先日、目の検査にダウンタウンに行った帰り(目の検査後は眩しいので夫に連れて行ってもらう)、地元スーパーでもちょっと高級な「セントラル・マーケット」に寄った。
数年前は、ここで韓国製のあんこの缶詰や、日本製のインスタントきつねうどんがあって、それだけで嬉かったのだけど、今ではそれらは扱われていない。残念だなあ~とつぶやいていると、夫が店員に「ANKOはないか?」と尋ねている。
店員さんは「ウチでは置いてないけど・・」と、日本食品店の住所を教えてくれる。私が欲望にムチ打って「行かない」と決めたあの店を。
せっかく夫が教えてもらって行こうと言うのを無駄にするのもなんだし・・・
そうして、オースティンに住んで初めて、私はオースティン唯一の日本食品店「ASAHI」の門をくぐったのだった。
店内は、店ごと持って帰りたい日本の食品が並ぶ。ぐるりと見てから、心の要求度が高いものから選ぶ。家から近くもなく、テキサスの暑さなので、冷蔵や冷凍の物は全てパス。
一番に選んだのは、やはりあんこ。あんこの缶詰と、ドラ焼き。そして、なぜか「おたふくソース」に心引かれる。でも、おたふくソースに1000円近く払うのか。しばし葛藤の後思い切ってソースを買うことにし、ならばちゃんと日本のお好み焼きが作りたい、とお好み焼きミックスも選ぶ。

息子が好きなので、お餅等も買って、全部で70ドルほど。やっぱり高いよ~。。。
息子も日本の味のほうが好きなようで、いまだにサンドイッチやハンバーガーが嫌い。
お宝のように買った「ドラ焼き」など、私が独り占めするのは無理。今日は遊びに来た友達にまで「ドラ焼きを食べさせてあげていい?」と聞きにきた。
・・・しばし心の中で葛藤してしまった。米国人のその友達が、食べてみて嫌いだったら無駄になるではないか、貴重品のドラ焼きが。結局息子と半分こで食べるという案でOKを出した。友達も食べてみて嫌いではなかったようだ。
日本ではいつでも買えるなんでもない品が、そう買えるものでもないのだからね~、と、ふと食品保管棚を見て「えっ!?」
清水の舞台からとび降りるつもりで(は大げさだが)買った「おたふくソース」、お好み焼きソースを買ったつもりだったのに「やきそばソース」の方を取ってたっ!が~ん!おいしいソースを買ったから「お好み焼きミックス」もついでに買ったのに。。。ガックリ。
ソースごときで、こんなに一喜一憂するのもストレスになるので、やっぱり私は地元食品で生活していくのがいいかも。日本食品店「ASAHI」はやはり駆け込み寺にして。
本日のTシャツは、オースティンで開店してくださってる「ASAHI」さんに感謝して「ASAHI」の文字も入った、94年の「佐倉朝日健康マラソン」のシャツ。
この大会「健康マラソン」と軽く走れそうな名称だが、フルマラソン。佐倉がなぜか「SAKKURA」となっている。