
我が家の玄関の軒先に、鳥が巣を作っていた。
木の上に作られているのは良く目にしていたが、家の垂直の壁に見事にお椀を半分にしたような形状の素が作られている。良くできているなあ、どうやって壁にくっつけているのだろう、などと感心した。
それを見つけて教えてくれたのは息子だった。巣は、高さ3mくらいのところに作られている。普段はそんなところを見上げて見ないので気がついていなかった私に、「あの巣、中ににちゃんと鳥がいるんだよ」と教えてくれたのだ。昨夜の事だった。
今朝、出かけて帰宅し玄関に来たら、その巣から鳥が飛び立っていった。瞬間「あっ、驚かせちゃったのかな」と思ったが、飛び立つ際に何か落としていくのにも気がついた。よくある「鳥の落し物」かと思い、服などが汚れないよう一歩後ろによけた。
しかし「ボトッ!」と落ちたものは私が思った物ではなかった。それは体長2cm程の雛鳥だった。
雛鳥といっても、まだ産まれてくるには早すぎのような姿な気がする。驚いたが、とにかく「暖めなきゃ!」という思いで家に駆け込みタオルを持って戻ってきた。その1分にも満たない時間の間に、落ちた時にはプルプル動いていた小さ過ぎる体は、既に動かなくなっていた。
タオルに乗せてみたが、やはりもう全く動かない。私の親指より小さいくらいの雛鳥を見つめて立ち尽くしてしまった。
しばらくそのままいろいろな事を考えてしまった。
もしタオルを持って戻った時に無事であったとしても、鳥のことなど知らない私には、その後どうしてよいのかわからなかったであろう。
もしかしたら何かのアクシデントで、巣の中で卵がわれてしまったのだろうか。
親鳥は、事故で早く生まれてしまった雛を助けたい一心で、帰宅した私の姿に気づいて、私に雛を渡して望みを託したかったのではないだろうか。雛は私に向かって落とされてきたのかと。
ごめんね。助けてあげられなかったよ。
あまりに小さな小さな、そして綺麗な雛鳥の眠る姿を立ち尽くして見つめ続けるしかなかった。
静かな雨が、降りだした。
朝の小雨はいったん止んだが、夕方から激しい雷雨になった。
車を移動させようと玄関のドアを開けたら、母鳥は帰ってきていて、巣の中に収まっていた。大雨をしのげる巣の中で、母鳥が雛鳥のことを考えているのかどうか、私には知るすべもない。
本日のTシャツは、鳥の種類は違うが、ニワトリの「ルースター・ブルース・レコード」のTシャツ。
ブルースが生まれた街、メンフィスに行った際に購入したもの。