Let's not fall in love 第1話 | BIGBANG ジヨン中心の何でもありの妄想日記*..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .

BIGBANG ジヨン中心の何でもありの妄想日記*..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .

妄想小説あり、イラストあり、日常あり、ダイエットありの、何でもありの何でも日記っ♪(´ε` )

楽しみましょう*\(^o^)/*

おそらく、ほぼ小説w








あの日、私達がこの場所で出会えた事はいったいどれくらいの確率だったのだろう。
私はこの私という人生の中であと、どれだけの出会いと、どれだけのさよならを繰り返すのだろうか。




* * * *




「お疲れ様でした」
ましろはそう言いながら、お店の従業員一人一人に頭を下げ挨拶をして片手に下げていたコートを従業員用の制服の上から羽織った。そして、ホテルの中にあるバーを出てそのままエレベーターへと乗り込んだ。ましろが最上階のボタンを押すとその小さな箱は静かなモーター音を立ててゆっくりと彼女を上へと運んでいった。
目的の階に止まり静かに扉が開いて、目の前にはポツポツと小さな灯りが灯った廊下が少し寂しげにましろが来るのを待ち構えているようだった。
ましろは慣れた足取りでコツコツと靴音を鳴らしてその寂しげな廊下を歩き、奥にある階段を少し足早に駆け上がった。
階段を登りきった所のドアを開けるとそこは広々とした屋上で、頬を刺すようなピリッとした冬の空気がましろの体を包んだ。
「う〜…さすがに寒いなぁ」
そう言って自身の体をぎゅっと抱えむとコートの襟元を片手で握りしめた。
ましろはそのままゆっくりと歩き、腰のあたりにある転落防止のために付けられている柵に両手を置いた。
東京の街の煌びやかな灯りがましろの瞳に映り、街の遠くの方で車のクラクションが鳴り響いていた。
ましろは仕事の後のこの時間が何よりも好きだった。誰もいないこのホテルの屋上で今日一日の事を振り返る。何の変哲もない毎日。そんな日常も幸せだと思えばそうなのかもしれない。
だけど…
「…退屈だなぁ」
ポツリと呟いたましろの声は街の騒めきに掻き消された。ましろは大きく息を吐いた。濃紺の空に白い靄が広がって風に流され薄くなり徐々に消えて無くなっていく。
「帰ろう」
入り口の方へと足を運んでいたましろの視界の隅で何か動いた。
ましろはその動いた何かの方へ視線を向けるとその紺色の暗闇の中をじっと見つめた。
「人だ…」
自分の発した言葉に背筋がゾワリと波打った。こんな時間に、こんな場所に来る物好きは私くらいの物だろうと思っていた。現に仕事終わりに何度も来ているこの場所で初めて自分以外の誰かを見かけた。
「まさか…自さっ…」
言いかけた言葉を押し戻すようにましろは自分の口元を両手で覆った。そして、入り口に向かっていた足をゆっくりとその人影の方へと向けると震える足取りで一歩ずつ進んでいった。距離が縮まって行くにつれ暗闇の中で佇んでいたその影が次第にはっきりとましろの瞳に映し出されていく。
ー男の人だ。
その男性は闇に溶け出してしまいそうな真っ黒なコートを羽織り遠くの方を表情もなく見据えていた。コートが風になびいてまるで羽のように見えた。

{D42F3B90-B3C8-457D-AD8D-DBAC22ECBE3A}

「綺麗…」
思わず漏れた声にましろははっと我に帰りその男性に駆け寄ると後ろからその人を抱き締めていた。
「早まってはいけません!」
「は?」
男性は後ろから抱き締めているましろを振り返るように見つめるとふっと目を細めた。
「違いますよ?」
「え?」
男性の反応とその片言の言葉にましろはつい呆けた声を出してしまった。そして、慌てて体を離すと勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさい!勘違いです!」
この冷たい空気の中にいても恥ずかしさでましろの体温は一気に上昇し顔が赤くなっている事が自分でも分かる程だった。
男性はくくっと口の中で篭ったように笑いコートのポケットから煙草を取りだした。そして慣れた手つきでその細く長い指に一本挟むとゆっくりと口元に持っていった。
カチンという音と共にましろの鼻先にオイルの匂いが流れてきた。
男性は火のついた煙草の煙を一口吸い込むとましろにかからないように顔を逸らして白煙を外へと吐き出した。
「俺、生きてると思う?」
男の急な質問にましろは顔を歪めた。
「え?…どういうことですか?」
戸惑うましろを横に男は飄々と言葉を続けた。
「いや、俺って生きてるのかなって」
「…それって、幽霊…ってこと?」
男は「さぁ」と首を傾げて見せ、明らかに怯えているましろを見て満足そうに笑っていた。ましろは怪訝そうな表情を浮かべ男を見上げている。
「死んでるようには、見えないけど…」
そう言うとおもむろに手を伸ばし恐る恐る男の肩に触れた。
それと同時にぐっと腰を掴まれ男の身体に引き寄せられていた。
「確かめてみる?」
「え⁉︎」
近づいて来たその顔は本当にこの世の物とは思えない程に美しく、そして今にも消え入りそうな程儚く見えた。
「…あなたは、誰なの?」
男はましろの質問に答える事なく、妖しく口角をあ上げて見せた。
その妖艶な唇はゆっくりとましろ唇に近づくとそれを重ね合わせ舌先で器用にましろの唇をこじ開けていった。

いきなりこんな事されて、抵抗しなきゃいけないのに…
なのにどうしても抵抗できない。
もっと…もっと…って私の身体が叫んでる。
ましろは彼の首に腕をまわすと自身へぎゅっと引き寄せた。
朦朧とする意識の中で彼の唇が離れて片方の口角が上がったのが見えた。
「…また、会えたらいいね」
そう言って彼は漆黒の夜の中にゆっくりと消えていった。
ましろはその闇に消えて行く後ろ姿を追いかける事も、声をかける事もできずただその場に力無く崩れ落ちた。そして今もまだ余韻の残る唇をそっと指で撫で先程の自分の行動に驚きを隠せずにいた。
自分からあんな風に求めるなんて…
自分でも信じられない。
そう思う反面、ましろの唇はジンジンと疼き頭の中には彼とのキスが蘇ってくる。
『俺が誰かって聞いたよね?…俺の名前はクォン ジヨン』
あの口付けの最中、彼は確かにそう言った。
クォン ジヨン。
「…ジヨン」
ましろは彼の名前をそっと呟いた。
その声は夜の闇へと広がり、誰の耳にも届かないまま静かに消えていった。

この日、何の変哲もない私の毎日は消えた。
彼との出会いが私から"退屈"という言葉を奪い去ってしまった。











Let's not fall in love  第1話            fin.



※画像はお借りしました。