山中惇史さんと高橋優介くんのピアノユニット、176(アンセットシス)の演奏会を聴きに行きました。
2台のピアノの鍵盤が合わせて176。それをフランス語読みにしてアンセットシス。
お洒落で気になるユニット名です。
山中さんが演奏会で高橋くんのピアノを聴いてとても魅力を感じ、一緒にピアノを弾かないかと楽屋で声をかけたのがユニットを組むきっかけだったそうです。
お二人は共にピアニストであり作曲家。
山中さんは30歳、そして高橋くんが26歳。
フレッシュな二人のダイナミックでピッタリ息の合ったピアノ演奏を堪能させてもらいました。
前半は、レスピーギの交響詩「ローマの祭り」です。ピアノだけの演奏会で披露されることは稀な曲ではないでしょうか。
フルオーケストラで演奏される壮大なこの交響詩を、山中さんが2台のピアノ用に編曲。
ピアノという楽器の可能性を探りながら、176の鍵盤をフルに使ってどこまで完成した作品に仕上げられるのかに挑戦した、ある意味、凄い試みだと思います。
『チルチェンセス・五十年祭・十月祭・主顕祭』それぞれの曲に描かれた内容も彩りも異なる4つの主題を、全身全霊込めて熱演する二人。
高橋くんの才能にキラリと光る何かを感じ取り、山中さんの試みを実現するこのユニットが誕生したことの喜びが全身に溢れるような、心に響く迫力ある演奏でした。
前半が終了し、調律師のお二人が後半に向けての音のの調整を念入りに行っています。
二人の若い演奏家と2台のスタンウェイ、本当によく頑張った、ありがとう!!…みたいな気持ちになり、隣席の若い女性と顔を見合わせて、「凄かったね、大御所の演奏も良いけど、才能豊かな若いピアニストの演奏も本当に素晴らしいね!」と、感動を分かち合いました。
そんな一期一会の出会いも嬉しいものです。
後半は映画音楽の作曲家、ジョン・ウイリアムズのナンバーから、映画、「スターウォーズ」より『アナキンのテーマ』『メインテーマ』、トークを挟んで「ハリー・ポッターと賢者の石」より『ヘドウィグのテーマ〜ハリーの不思議な世界』を演奏。
また、山中さんが作曲し敬愛するジョン・ウイリアムズに捧げる曲「Song for John」も初めて舞台で披露されました。
ジョン・ウイリアムズの承諾を得て、今年の秋に二人の演奏によるジョン・ウイリアムズの映画音楽のCDの発売が決まったそうです。
会場に詰めかけた聴衆の惜しみない拍手に応えて、アンコールも2曲、披露してくださいました。
地元、愛知県岡崎市出身の山中さんは、お若く見えるけれどとても才能豊かな音楽家で、トークの場面では大人の落ち着きと包容力を感じさせ、天然王子キャラの高橋くんを対等に尊敬しつつ、可愛がっておられるのを感じました。
高橋くんは「一番苦手なのは演奏」と言いつつも、ピアノに向かうと恐れ知らずのスイッチが入り、伸びやかに大胆に、かつ、繊細な演奏で聴衆を虜にする魅力を感じました。山中さんに対しては、年下だけど遠慮なく甘えられる先輩みたいな信頼関係があるのでしょうね。
3列目左端の席からは、華麗なる指の動きや、ピアノを挟んで目配せしたりニコッと笑い合うお二人の姿が間近に見え、微笑ましく思いながら聴いていました。
芸術家、演奏家としてのプロ意識もしっかり伝わってくるお二人の、これからの様々な挑戦や活躍に期待しています。
彼らを紹介してくれたピアニストの友人とも久しぶりの再会が叶い、二重、三重の喜びを味わえた日曜の午後でした。