■第35回 活動記録
Ⅰ実施日:2017年7月23日(日)
Ⅱ実施場所
セッション実施場所:千葉市新宿公民館
Ⅲ活動内容
セッション
Ⅳ参加者 計10名
乙ハヂメ、量産型小市民、ヨッシー、オガワン、陸、TOTO、さぁご、あやこ、朧竜、さとぅー(見学者)
Ⅴ活動内容詳細
セッション2卓実施。
(ⅰ) 「犯罪活劇RPG BADLIFE」 GM:TOTOさん
(ⅱ)「深淵 第二版」 GM:乙
詳細は下記の通り。
(ⅰ) 「犯罪活劇RPG BADLIFE」 GM:TOTOさん
(ⅱ)「深淵 第二版」 GM:乙
シナリオ「妖魔の市」
【予告編】
多彩の渦が流れる。
水なき場所にさえ、深淵の波音が響き渡る。
初夏の満月の晩。
龍の住む山の麓で、妖魔の市が開かれる。
そこではあらゆるものが売っている。
望むのならば、何だって買うことができる。
そう。代価を払えるのならば。
【各PC紹介】
PC①:レオナード(PL:量産型小市民)
テンプレート:移動判事
運命:
【91】運命の介添人
【58】過去を失った者
追加【23】沈黙の刻印
ある時以前の記憶を一切持たない移動判事。
己の過去を知らぬが故に、この閉塞しきった末法の世界の中で、自分の故郷は「法と理性によって統治された素晴らしい場所であって欲しい」という理想にも似た願望と、いずれそのような場所を自分の故郷と呼べる場所として永住したいという願いを持っていた。
手に入らないものはないという妖魔の市には、そんな場所を見つけることを願って訪れた。
若干独善的な気はあるものの、善良である彼は市の近くで知り合った二人の成年の為に協力を申し出るが、白昼夢で垣間見た軍服姿の黒髪の女性に、何度も何度も、幻覚、幻聴を問わずに己の理想を否定され続ける。
そして彼は、法と理性に拠る統治を願いながら、その願いを叶えるために「他者のものを盗む」行為に加担してしまう。
それを必要なことだったと自分に言い聞かせるも、予言をもたらす占い師に見えた際に、彼は再び軍服の女性を幻視する。
彼女の名は忠誠の公女ラプティーク。またの名を人形師。魔族にして忠義と誠実を司る者。彼女は告げる。彼は、彼女の作り出した“人形”であると。彼が自身の願いと思っていたものは彼女に植え付けられたものであり、その願いは偽物だと。そして、忠義と誠実の公女の子どもでありながらも不義を果たした彼を、己の操り人形では無い面白いものだとは認めつつも、不義に汚れた彼には理想の世界は到底たどり着けないと断言する。
全てを否定された彼は、茫然自失のままたどり着いた猫の王が営む店で、藁をもつかむ思いで「幸せ」を買ってしまう。
不義を起こしたことも、自らの出自も綺麗に忘却した彼は、確かに幸せだった。そして占いの「無いならば作ればよい」という言葉に従い、「他者に命令を強制する」魔具を持って、滅びた国土の奴隷をまとめ上げて自らの理想とする国家を作り上げてゆく。
それが、独善によって支配された独裁であると気付かぬままに。
PC②:エヴィル・レオード(PL:朧龍)
テンプレート:若き「真理の探究者」
運命:
【63】無垢
【08】呪われた出自
魔術書を危険なものとし、「そんな危険なものは我々が管理するべきだ」と、一種の選民思想的な考えを持つ似非魔術集団「真理の探求者」教団の若き構成員。
無垢なる魂を持ち、魔術や魔族からの干渉に対して強い提供力を持つ一方で、生まれながら持つ「鏡の心」の所為で、彼の瞳を見た者は自らの感情と向き合う事になってしまい、それが原因で家族からも故郷でも蔑まされており、教団内部でも厄介者扱いされていた。
妖魔の市へは、「教団の資金繰りの為に金目の物を調達する為」に指令が下った為だが、それが厄介払いの言い訳であったことは彼も自覚している。
妖魔の市に、強く求めるものが無い彼だったが、己の運命に対して真っ直ぐ立ち向かってゆく女戦士の在り様に心が少しずつ動かされてゆく。つまり、「人から嫌われるこの瞳をなんとかしたい」、と。
しかし、彼に告げられるのは残酷な事実。それは、「出自にまつわる呪いは決して解消されることはない」ということ。
占い師は告げる。
「そんなに嫌なら、そんな眼潰してしまえば宜しいのでは?」
人から疎まれること。視力を失うこと。二つを天秤にかけられたとき、彼はどちらも選べなかった。
それは、言うなれば問題からの逃避でしかなかったかもしれない。
しかし、妖魔の市での邂逅と経験は、彼にもう一つの真実を理解させる。幸福も、力も、誰からも疎まれない日々も、己の求める本当に大切なものは、己がリスクを背負い、代償を支払わなければ、決して得ることが出来ないということを。
妖魔の市より生還した彼は、後に教団から離別をする。人に疎まれながらも「見たいものを見続ける事」を決意した彼は、己の人生の新たな一歩を踏み出したのかも知れない。
PC③:アンジェ(PL:ヨッシー)
テンプレート:獅子の戦姫
運命:
【87】抑えられない感情
【75】守護者
追加【12】猟犬→解決
彼女に自由というものは無かった。魔物の封印を守る宿命を課せられたあの日から?否、「母親か戦士か」を選ばされたあの日から、ずっと。
思えば、妖魔の市で喋る猫と買い食いをしながら歩いたあのひと時だけが、彼女の感じ得た一時の自由だったのかもしれない。
夢で見た、荒野の烏たちからの怨嗟の声を聞いたときから。彼女は今回の結末を覚悟していたのかもしれない。
狂戦士たちを擁する傭兵集団「獅子王教団」の若き女戦士。教団の女性は若いときに、「子を増やすだけの存在となるか、そうでないなら戦士となるか」を選ばされる。戦士を選び、高い性能を証明し続けた彼女は魔族封印の役目まで課せられることとなった。
そんな生活から、彼女は自由を求め妖魔の市へとたどり着いた。
市の辻で出会った猫の王・イーツォを案内役とし、己の運命を掴み取るために黒衣の占い師から予言を得るための代価を告げられる。
「烏を一羽、持って帰って来てくださるかしら?」
アンジェは幻視する。荒野、烏に囲まれた黒衣の軍服の女性。彼女は云う。
「取引をしよう」
アンジェは首を縦に振った。軍服の女性が、黒衣の公女パルガ、己が封印すべき魔族だと薄々知りつつ。パルガを解き放てば、彼女を縛り付ける「獅子王教団」を滅ぼすであろうことも……
約束を果たし烏を占い師に手渡し、案の定パルガの封印は解かれ、魔族は彼女の前に現れた。契約に従い、獅子王教団をこれより滅ぼしにゆくと。
誰もが彼女は静かに魔族を見送るものと思った。しかし、彼女は魔族に剣を向ける。
自由になること。守護者としての運命を全うすること。その二つは、彼女の中では並立するのだった。
「その意気やよし!」
パルガはその圧倒的な力で彼女を殺めるも、彼女の覚悟に敬意を払い、彼女の亡骸を残して北へと飛び去ってゆく。
ラルハース南端。獅子王教団の入植地はその夜一晩にして滅び去るのであった。
女戦士の物語は、ここで終いとなる。
PC④:エラルド・カリウス(PL:さぁご)
テンプレート:貧乏貴族
運命
【13】変わり者の親族
【66】魔法の武器
器用貧乏で秀でた才能を持ち合わせぬことに劣等感を抱く若き貴族。
家族たちからも認められない、未だ何者にもなれない青年。
彼は叔父の遺言にあった魔法の武器を手に入れるべく妖魔の市を訪れる。
波音、せせらぎ、雫が溢れる音。水が無いところでも耳に響く水音。彼は深淵に呼ばれていた。混沌の盾。深淵を呼び出すその盾は、名の通り混沌をもたらす盾。
彼は、ただ其れを求めた。市で様々な誘惑が彼に持ちかけられるも、彼はそれらには靡かなかった。……いや、それらを得る覚悟が彼には足りなかっただけかもしれない。
彼は慎重であった。しかし、それは優柔不断とも言えた。何かを得るには、彼には覚悟が足りていなかったのだろう。いや……それ以上に。彼は、彼が本当に求めるものにすら気づいていなかっただけかもしれない。
彼が本当に求めたものは。何者にも成り切れぬ自分を変えること、もしくは、そんな自分でも誰かに認めて貰うことだったのかもしれない。
結論を言えば。彼は混沌の盾を手に入れた。
しかし、彼はそれをどうすることもできなかった。持ち帰り、家族の元へ帰った後も。
当然。混沌の盾とは秩序を維持せんとする者たちには危険物以外の何物でもない。或る日、彼の住まう屋敷は憲兵に囲まれ、家族たちからも問い詰められた彼は弾みで盾を活性化させてしまう。
突如発生した深淵の渦は、まずは彼の家族を深淵の渦へと引きずり込む。
自暴自棄になった彼は、盾の力を屋敷の外へと向けるのだった……
【GM所感】
異界と化した夜市。ゆらめく赤い光と大小の影。様々な匂いと言葉が入り交じった、初夏の夜とは思えぬ熱い空気。顔の見えぬ店主。怪しい通行人。しゃべる猫。不思議な売り物……。
妖魔の市では手に入らないものなど無い。対価さえ支払えるのならば。ただし心せよ。ただより高いものはない……
魔族が夜市を開いて、様々なものが売りに出される屋台を皆でウィンドウショッピング!時折魅惑的な売り物があったりするけど、思わぬ対価を求められるので注意しよう!がテーマの「妖魔の市」でございました。
今回は人間ドラマがフィーチャーされ、四者四様の物語が描かれたかと存じます。以下簡単に各PCごとへの感想を。
移動判事レオナードは、運命に翻弄された方。高尚な理念を語ってくださいましたが、GMとしては「過去を失った者」の運命が出た時点で忠誠の公女ラプティークの落とし子であることが決定しており、理想を唱え続けても「それは借り物の理想だよ?」攻撃、不義を行った瞬間に「お前は汚れた!」攻撃が決まるのでどっちに行っても行き詰まりが決まっていたお方(笑)。
まさか忘れっぽい猫の店で「幸せ」を買ってしまうとは思いませんでした。独裁者爆誕。深淵の大いなる運命の流れに巻き込まれた被害者と言えるでしょう。
しっかりとキャラを深掘りし、葛藤と、劇的な結末をしっかり描ききってくださいました。また、序盤に市へ強い動機を持てない青年二人を導いてくださりありがとうございます。善人ではあったんだけどねぇ……運命が噛み合いすぎましたねぇ……
迷える青年・エヴィルは、運命の渦の側を通り過ぎた人間といえるかもしれません。
彼は、何度か決断の機会がありました。目を失うこと、己を蔑む人間を殺し尽くすこと、今の日々を捨て去り戦乱の中に居場所を見つけること。
しかし、彼はその全てを受け入れず、疎まれることを受け入れ、その目で見たいものを見続けるためにただ生き続けることを決意しました。
劇的ではありません。傍から見れば何も変わっていないかもしれません。しかし、彼の内的な変化はきっと誰よりも大きかったのでしょう。静かならも生き様を描く、そんなPCでした。
戦姫アンジェは、運命に立ち向かった女性。
恐らくPLには、早い段階で今回の結末が見えていたのでしょう。早々にPCも何かを悟ったような振る舞いをするようになり、頑なに、一途に自由を追い求めた彼女の生き様は、苛烈かつ彩りに満ちた物語と相成りました。
クライマックス、まさかパルガに剣を向けるとはホントGMも予想していませんでした。しかし、理由を聞いて納得です。システム的には解決にはなりませんが、運命に真正面から立ち向かったキャラクターだったと思います。
貧乏貴族エラルドは、運命に流された存在。
「遺言に記された魔法の武具を手に入れる」、という目的は有りましたが、「それをもって何を成すか」という目標が欠如していたことに気づけなかったことが、彼の最大の不幸だったのかもしれません。
大いなる流れに流されるまま、求める武具「混沌の盾」を手にした後もそれは変わらず。結果、破滅の道に足を踏み入れることと相成りました。
劣等感やコンプレックスに非常に悩む様子が多いPCであったので。彼の本当の目的は家族や誰かに認められたい、受け入れられたいというものであり、武具を求めたのは切掛に過ぎなかったかのように思います。その、自分自身の本心にすら気づけなかった愚かさも、また人間らしく深淵らしいロールであったかと。
ランダムで色々な事件や邂逅が起こり、行く店ごとに様々な笑いや驚き、葛藤が勝手にPC達から湧き上がってくるセッションとなり非常に満足しております。
本来は、夢歩きにおいて移動判事や女戦士がまみえた苛烈な運命の導き手となる魔族の諸侯たちが、怪しげな店の胡乱な店主として不可思議な対価をPCたちに要求するのはGMとしてもロールしていて非常に楽しいものでした。
まぁ、今回のシナリオを上手く回す切掛になったのは、女戦士が早々に出会った「忘却と予言を司る猫の王」ことイーツォのお陰だったかなと(笑)。物忘れが激しすぎる、道化の化身でもある魔族の猫の存在が、狂言回しとしてGM的には非常に便利でした。
今回は人間ドラマが主体となりましたが。魔族主体の、もっと殺伐としたシナリオにもなりうるのがこの「妖魔の市」というシナリオギミックの面白いところです。また別の機会に立てられればと思いますので、是非再び運命の劇場でお会いいたしましょう。
ご参加いただきありがとうございました。
(7/24一部更新)