恋愛小説書いてます。 -3ページ目

亮介の日々

日当たりの良い静かな部屋に一人。

大きめの椅子に深く腰掛けながら、何やらじっと携帯の画面を見つめている。



KEメディカル、代表取締役、佐々木亮介。

そう、ここは彼のオフィスにある社長室である。



~了解しました。楽しみにしてます。~



このメールの送り主である山本まひろに、亮介は今ご執心なのだ。

そのため、さっきから何度となく画面を開いては嬉しそうに眺めている。



というのも、軽い雰囲気で誘いをかけたが、内心断られるのではないかと気が気ではなかったのだ。

昨日のまひろの様子から、少しは自分に好意を持ってくれているのは感じたが、まだはっきりと確信は持てない。

控えめな態度は単なる照れなのか、それとも本気で興味がないのか・・・

女心は海より深いとよく言われるが、まさにその通りだと亮介は思っていた。


何度も思い浮かぶのは、こっちまで思わず笑ってしまいそうになる、まひろの柔らかな笑顔。

耳に残る、少し高めの声。すぐに赤くなる頬やぷるんとした唇。


どうやら思いのほか、ハマッてしまったようだ。

昨日別れてから今まで、気が付けばまひろのことを考えている自分に、驚きすら感じている。



コンコン

「社長、そろそろ時間ですが」


亮介の腹心、専務の井澤から声がかかる。


「おお、ほな行こか」


名残惜しそうに携帯を閉じて、座り心地の良い革張りの椅子から腰を上げた。




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まひろの日々

老舗割烹での告白劇から一夜明けた月曜日。

まひろはいつもどおり会社に出勤していた。


職業はいわゆるOL。

広告会社で営業事務をしている。

仕事も丁寧で愛想も良く、職場での評判は上々だ。

気さくな性格や可愛らしさゆえに、密かに想いを寄せる男性社員も少なくないとか。

しかし、残念なことに本人はそれに一切気づいていない。


「ふう・・」


見積書を作成しながら、思い浮かぶのはただ一人。

佐々木亮介。その人である。

パーティーで声をかけられたのが全ての始まり。

最後は告白までされてしまった。

なんだか夢のような出来事の連続で、未だに信じられない気持ちでいっぱいだった。

思い出すとまだ胸がドキドキしてしまう。


ふと、携帯のランプが光っていることに気づいた。


机の下でこっそり画面を開くと、メールが1通届いている。


「佐々木さんからだ・・・」


心の中で呟いた。


昨日の帰りのタクシーで連絡先を交換したばかり。

まさか本当に連絡があるとは・・・まひろが内心驚きつつも少しホッとしているのにはワケがある。
と言うのも、見た目も性格も申し分なく、しかも社長なんてしているような人が、昨日出会ったばかりの自分に惚れたなんて、俄かには信じられない。



~今週金曜空いてる?~



メールはその一文のみ。あっさりとしたものだった。



~はい、空いてます~



すぐにそう返信したのは、まひろがこの男に少なからず好意を抱き始めていたからだ。誘われて、素直に嬉しいと感じ、心にポッと温かな火が灯ったように感じた。



そして夕方頃、亮介から返信があり、

~ごはん食べに行こう。仕事終わったら連絡して~


まひろのドキドキがさらに高まったのは言うまでもない。


それから数日、まひろは気がつくと亮介のことばかり考えていた。

今、仕事中かな。服装はどうしよう。どんな格好が好きかな。何を話そう。

頭の中はそんなことばかりが巡っている。

久々の恋の予感に、どうしても浮き足立ってしまう自分をなんだか可愛く思えた。



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二人っきり 4

そんな大人な攻撃に、不慣れなまひろはひとたまりもない。

顔は茹蛸状態、心臓はかつてないほどに脈打ち、頭は沸騰寸前である。

・・・ってすごい状態だな。


「て言っても、今日初めて会うたとこやけどな。まぁ一目惚れゆうやつやわ」



そんなセリフがためらいなくさらりと出てくるのも、亮介がこれまでに数多くの恋愛を経験してきている表れとも言えるだろう。

当然のことながら、まひろと亮介では経験値が違う。



「そんなこと分からないです」



赤い顔のまま俯きがちに答える。



「そうかー?こんなんインスピレーションやって」



「だって、今日会ったばっかりで、佐々木さんのことまだよく知らんし・・」



もごもごと歯切れ悪くまひろは反論した。



しかし、当の亮介はそんな様子さえもなんだか楽しそうに眺めている。

そう簡単に落ちてしまっては面白くない。

じわじわと、好きな女を追い詰めていくのが亮介流なのだ。

少しずつ、その存在を相手の心に焼き付けながら、最後には自分のことしか考えられなくなるぐらいに惚れさせるのが楽しい。

太古の昔より、男には狩猟本能が備わっていると言うが、亮介の場合それは顕著であるようだ。




「まひろちゃん、彼氏は?」


「いないです」



ラッキー!と心の中でニヤける亮介。

もちろん顔には出さない。



「ほな、俺と付き合おうや」



当然の流れとでも言うように、ためらいなく亮介は言った。



対するまひろは、


「なっ・・そんなこと簡単に言わないで下さい」



先ほどと変わらず、赤い顔のまま必死に反論した。


「なんで?俺も今女おらんし、ちょうどええやん」



「今日会ったばっかりですよ!?」



鼻息荒くまひろは食って掛かった。



「そうやけど、俺まひろちゃん気に入ってもーたしな。

・・・さっき、惚れた、って言うたよな」



ここぞとばかりに眼光鋭く、まひろの瞳を射抜くかのように見つめる。



「う・・・はい」



すっかりやられてしまったまひろは小さくなって項垂れた。



「まひろちゃんは俺のことどう思う?」



自信たっぷりな態度とは打って変わって、今度はどこか弱気さを感じさせる。ご機嫌を伺う子供のような表情を、まひろは少し可愛いと思ってしまった。



「どうって・・キライ、ではないです」



「そんな答えは聞いてない」



亮介は冷たく言い放つ。

まひろはその様子に少しうろたえた。



「そりゃ、こうして話してみて楽しいと思うし、

 好きか嫌いかって言われたら、好き・・やと思いますけど」



瞬間、亮介の目がキラリと輝いた。



「今、好き言うたな」



「い、言いましたね」



身を乗り出さんばかりの亮介の気迫に、まひろは圧倒されてしまう。



「じゃ、付き合おか」



にこやかに、そして無邪気にそう言ってのける亮介に、まひろはもう言い返す気もなくなってしまった。



「わかりました。でもいきなり付き合うのは無理なんで、

 これから佐々木さんのこともう少し知ってから決めてもいいですか?」



「それはつまり・・・」



まひろはふわっとした笑みを浮かべながら、



「お友達からよろしくお願いします」



と少し小首を傾げながら言った。

あまりに可愛すぎるその仕草にドギマギしつつも、亮介は頷くほかなかった。



こうして、出会ってたったの一日にして、二人の付き合いはスタートしたのだった。

今のところは、「お友達として」。



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