16年まえのあなたは、こんなふうに
写真は「いま」
ちっちゃくって
きょとんとしていて
ちょっとおどおどしていて
それでいながら
ひたむき、な瞳だった
いまもおなじ
ひたむきな瞳
ひいおばあちゃんにそっくりの
澄んだやさしいふかい瞳
え?
きょうはとくべつな日なの?
ボクにはよくわかんないよ
ねえねのそばにいればご機嫌だよ
いつもの、ささみ
〜これは、年末閉店日に買いこんだストック
いつもの林檎、を、うさぎさんに
生湯葉を買いにいって、島豆腐をみつけたので
チャンプルーを
お祝いのための黒紫米のおにぎりと
うん♬
よしっ!
泡泡も、あるねっU^ェ^U
あれ?
せめて髪はとかしましょう、だって?
とかしたよ
ふわふわあ
あのね
ボク、遠い街の素敵なやさしい洋館で
ママが座ってた場所で
ご馳走食べるの好きだよ
銀のお器でお水を飲むなんて素敵な時間だもん
大好きなカウンターやお山で
美味しいものをいただくのも大大大好き
でもね
こうして
いつものソファでごろだら寝起きのまんま
お祝いご飯も、わるくないとおもうんだ
あなたは、ねえねをみてる
ひたむきに‥ねえねをみつめてきて
十六年になりました🐾
十六年前のきょう
名なしのボクに名前ができました
名前もない‥あ、正式名?の長いカタカナ名前はあったかな
家族もいない
‥あ、おにいちゃんたちはいたけれど
〜おにいちゃんたちはすぐにあたらしい家族をみつけたそう
ボクは、半年ちかく、ひとりぼっちでさびしかった
でも、ひっこみじあんで、愛想なし
ぶるぶる震えるだけの、ひどくひ弱そうなボク
みんな、素通りしていきました
そんなある日の年末
ボクがいたお店ちかくで研修をうけていたエリちゃんが、ウィンドウごしに
ボクをみかけました
なぜか、ボクは、そのときだけ
おもいっきり可愛いお顔をしたくなりました
エリちゃんは、そんなボクのお写真を撮っていきました
数日後のお正月明け
お店に電話があったらしく
「これこれの可愛いちいさな犬を飼おうかとおもいます。まだ決めてはいませんが‥」
でも、そのひとは、おかあさんの「介護」でいそがしく
なかなか電車でボクのいるお店にこられないようでした
それでも、そのひとを待つあいだに、なぜか
お店のひとが、ボクを「まかろんちゃん」と呼ぶようになりました
待ってるひとが、そんな名前をつけたらしいです〜まだあったこともないし、「飼う」ともきめてないのに
そんなひとが、やっとあいにきたのに
お店のひとがボクを綺麗キレイしてくれたのに
ボクはやっぱりブルブル震えるばかりで
可愛いお顔ができませんでした
そのひとは
「???この子、まかろんじゃない気がする!写真とぜんぜん違う、可愛くないし、ヨレクシャだし」
そんなことをいいはじめて、ボクのお隣のお部屋にいた子が気にいったようでした
「犬」とか「生き物」がニガテなそのひとには、ボクはただの「犬」、というか
おかあさんのために「ガマン」してむかえる
おかあさんのための「手間のかかる」「ぬいぐるみ」「慰める手段」
でもけっきょくそのひとは、ボクをお家にむかえることにきめたそうで
翌々日、「犬はコワイ」そのひとのかわりに
エリちゃんがボクをお家に連れてってくれました
到着すると、白いおっきなハウスに、ふかふか水色のベッドがあって
ボクのものがいろいろそろっていました
そうして、ベッドにいる「ママ」に
はじめましての、ご挨拶をしました
ママはわんこが大好きで、ボクのことをすぐに気にいり、とても可愛がってくれました
とはいえ、ボクのお世話をするのは、「ねえね」というひと
そのひとは、ボクを抱っこすることもできないし
ボクがそばにいくと、逃げそうにしました
だけど、ボクは、まだまだ心細かったので
ある日
ヨチヨチよたよた、無我夢中で、そのひとのお膝によじのぼりました
まだ600グラムの、ちっちゃなちっちゃな手足で、一生懸命でした
そのひとは、手を添えてくれることもなく、ただじっとしていました
〜ほとんど、hold up状態
それでも、ボクはちょっと安心して、そのままねんねしてしまいました
が、、物心ついたときからの緊張がすこしほどけたのか
つい、おねしょをしてしまいました
そのひとは、お膝がつめたいなあ、とおもったけど
ボクがあんまりすやすや寝ているので、起こしたくないからと
足がしびれてもずっと、半時間くらいそのままでした
いつのまにか、そのひとの手がボクの背中にそっと添えられていて
ボクはますます安心して、ぐっすりでした
ママは、そんなねえねの姿に呆れて
大笑いしていました
‥‥‥
そのあと
たくさんたくさんの
たくさんの物語
こうして
ボクには、家族ができて
ふかふかベッドとお家ができて
名前ができました
いつしか、ボクとそのひとは
かけがえない家族になり
かけがえないパートナーになりました
そのひと、は
ボクのねえね
ボクの大好きなひとになりました
あ、ボクは
ふかふかベッドなんて、なくてもいいです
なんなら、お家もなくてもいいです
〜あったほうがいいけどね
可愛いお洋服もおリボンもいりません
お出かけもご馳走もなくてもいいです
そんなものなくても、ボクをぎゅーしてくれるひとがいたら
ほんとは、それだけでしあわせなんです
そうね‥わかってる‥
あなたには、綺麗なお洋服もおリボンも
お出かけもご馳走も
いらないんだよね
わかってる
あなたがほしいのは
抱きしめてくれる腕と
にっこり笑いかけてくれる笑顔と
いつもやさしくみつめてくれるまなざしと
まかろん♡
ってよびかける、しあわせそうな声
あなたの目が‥耳が‥
みえなくなってきこえなくなっても
きっと
それは、みえて、きこえるのでしょうね
そうあれたら、と心からねがってきた
あなたが
みえなくなっても‥ねえねの目に‥姿が‥
きこえなくなっても‥ねえねの耳に‥声が‥気配が‥足音が‥
いつか、そんなときがきても
みえて、きこえたら
そうあれたら、とねがいつづけてきた
まかろんの物語
まかろんとねえねの物語
まかろんとねえねとママの物語
たくさんたくさんの物語
あのとき
おっきな大都会のちいさなサロンの片隅で
このちいさなちっぽけな、動くかたまり、は
せまい狭い「檻」のなかで
お日さまの光も
あんよの下のやわらかな土も
ふうわりながれゆく風も
なにもしらないですごしてるのだなあと
そう、おもった
ちっとも愛してなんかなかったし
好きでもなかったし
というか、そばにくるとかorさわるとか、100%ゴメンだったけれど
ママのためのガマン、しかなかったけれど
いつのまにか、手をのばしてた
お家に帰ろう
まかろん
と
そのとき赤い糸がつながった

あなたがきてから
ひとり、またひとり、とかぞくを送り
そのたんび
あなたのちいさな背中はおおきくなった
母がヤキモチを焼いた、まかろん
母がさいごの夕暮れ、その名前だけを何度もなんども何十回も呼び叫んだ、まかろん
ありがとう
あなたに
ありがとう
ママに
さいごの最幸の贈りもの
いのち、の贈りもの
ママ
たくさんいっしょにあそんだね
たくさんあそんでくれたね
たくさん、ねえねにナイショのお話したよね
こっそり、お肉とかご飯、くれたよね
ねえねに叱られたよね
たくさんたくさん、撫で撫でしてくれたね
お散歩には一緒にいけなかったけど
たくさんたくさんたくさん、お膝で愛おしんでくれた
ありがとう
おぼえてるよ
ずっとずうっとおぼえてるよ
ママとのお約束
おぼえてるよ
ずっとずうっとおぼえてるよ
ボクは、ママろん、で、パパろん
ねえねのそばにいるよ
あの夕暮れ、お約束をした
かならず、きっと
love you
十六年
192か月
835週間
5,845日
♡⃝⋆˻˳˯ₑ⋆♡⃝まかろん&ねえね♡⃝⋆˻˳˯ₑ⋆♡⃝
🐾母からのさいごの最幸のおくりもの🐾































