いまや聴く音楽は洋楽オンリー(しかもブリティッシュ専門)なわたしですが、いたいけな中学生時代はニューミュージックと呼ばれるジャンルにはまっておりました。
ニューミュージック……死語ですね。訳すと「新音楽」。なんのこっちゃ、ですが、wikipediaによると「1970年代から80年代にかけて流行した日本のポピュラー音楽のジャンルのひとつ。フォークソングにロックなどの要素を加え、政治性や生活感を排した新しい音楽」だそうです。
好きでしたねー。チューリップ、甲斐バンド、アリス、荒井(松任谷)由美、中島みゆき、松山千春……とくにわたしはオフコースの大ファンで、中学2年生から高校1年生の1学期くらいまで毎日欠かさず聴いていました(全アルバムを所有してました)。1982年にメンバーのひとり、鈴木康博(ギター)さんが脱退してからパタっと聴かなくなりましたが、それはヤス(鈴木)さんが好きだったからというより、ちょうどその頃に洋楽に目覚め、ロンドンに行くことしか考えていないミーハー高校生に変貌、日本の音楽には見向きもしなくなった、という事情からです。
あれから40年(!)、その間、なぜかロンドンではなくパリへ行き、のちに熊本へ移住してフランス料理店をやりながらフランス語の翻訳をせっせとするようになるとは、あの頃のわたしにそっと耳打ちしても決して信じてくれないでしょう。人生ってホントわかんない。無計画で行き当たりばったりで生きてるとこうなるんですよ、若い皆さん。でも意外と面白かったですよ、RPGのようで。
閑話休題。さて、そうやって「そんなきみもいずれは演歌とか聴くようになるんだよ」と歳上の人たちに言われつつ(内心「絶対ない」と思いつつ「かもですね~」とへらへら笑ってましたが)、いまだにブリティッシュ専門でパンクとかポストパンクとかエレクトロとかばっかり聴いている、高校生で成長がパッタリ停止したわたしですが、年に一度ほど、突然無性にオフコースが聴きたくなる「オフコース期」がやってきます。
ちょうど今、前触れもなくその時期が訪れたところですが、今回、聴いていてしみじみ思いました。世間知らずで多感な14~16歳当時、たった3年間といえど初めて夢中になった対象だったせいか(近くに小田さんのご実家(小田薬局)があったのでそこで売られてるグッズもやたら買いましたし、写真集も持ってました。30代のおっさん5人がゴルフに興じる写真をうっとり眺めている15歳……)、オフコース成分は細胞レベルでわたしの内部に染みついているようです。
とりわけ、男性像。そう、わたしには男兄弟がおらず(3人姉妹の長女)、父親は単身赴任でほぼうちにいなかったため、身近な男といえば学校の同級生のみ。でもふだんの話し相手はたいていは女子だったので、男子、および男性のメンタリティはほぼ謎に包まれていました。そんななかで、小田さんの歌詞に現れる男性像を、まるで乾いたスポンジが水を吸収するかのごとくに吸収していったのです。
たとえばこんな。
何も聞かないで。
何も、何も見ないで。
きみを悲しませるもの、何も、何も見ないで。
(Yes-No)
ここへおいで。
くじけた夢を
すべてその手に抱えたままで。
(愛を止めないで)
ぼくの行くところへ
あなたを連れてゆくよ。
手を離さないで。
(YES-YES-YES)
愛したのは
確かにきみだけ。
そのままのきみだけ。
(さよなら)
誰もあなたの
代わりになれはしないから。
あなたのまま
そこにいればいいから。
(I LOVE YOU)
ほらねー、こういう甘いセリフをさー、ちょっと絶叫気味に、せつなげに歌っちゃうんですよー。
何もかも許してくれる、しっかり抱き止めてくれる、どこかへさらってくれる気がしちゃうでしょう?
そう、15歳のわたしはね、小田和正にすっかり騙されたんです。
やばい、小田さんのあれは嘘だ。そんな男性はどこにもいない。誰もわたしを許してはくれないし、しっかり抱き止めてもくれないし、ましてやどこかへさらってもくれやしない、と気づいたのはいつだったか。
……え? そういう男性だっていないわけじゃない? あ、そう? じゃあ、わたしのせいか。ま、そんな気もしてたけどね(←負け惜しみ)。
そういう一途で包容力のある男性像のほかに、もうひとつ。
誰にもぼくの行く道を
止められない。
そうだろう、行かせてほしい。
きみはきみの歌うたえ。
ぼくはこの思いを調べにのせて。
(思いのままに)
何を見ても何をしても
ぼくはぼくのことばでする。
やりたいこともやるべきことも
今ぼくのなかでひとつになる。
(中略)
今こそ焦らないで、今まだ語るな
今ならまだ戻れる、今なら間に合う。
心はどこにある。心は、心は。
(決して彼等のようではなく)
恋愛を語っていないこの2曲、当時からとても好きでしたが、今聴くと歌詞がしみます(YouTubeを貼りつけようとしたら再生不可だったので断念しました)。
中学生のわたしに「生き方」を教えてくれたオトナの声として、当時すごく影響を受けた気がします。
中学生のわたしは、小田和正に騙されて、小田和正に教えられてきました。たぶん。
生きるのってホントに大変だし、孤独だし、嫌になるけど、
わたしはずっと音楽に救われてきました。
救ってくれる何か、どんなときも前を向ける何かが、誰にでもありますように。