西川潤([1974]1984)『飢えの構造:近代と非ヨーロッパ世界 増補改訂版』ダイアモンド社。


「援助症候群からの脱出の一歩は、協力を恩恵的なものととらえることをやめ、自立のための協力に進み出ることである。自立のための協力は巨大規模のものである必要はない。地方の資源をいかに地方の人間が、地方的創意とイニシアチプによって生かしていくか、その動きに協力することによってまた自らも多くのことを学ぴ取り、知識と経験をわけ合っていく、という過程が、双方にとっての自立的協力にほかならない。このような自立的協力はしばしば―つの井戸を掘ったり、その地方の手工芸品の振興に力をあわせたり、ごく些細な契機からはじまりうる。しかし自立的協力は双方が相手を人間として認めることから出発するがために、その場限りのものではありえず、より永続的な顔の見える関係をそこにつくることになる。そのような関係においては、国際機関がサヘルに井戸を数多く掘って立ち去った後、遊牧民が定住して生態系の変化をひき起こしたような事態は起こりえないだろう。自立的協力とは何よりも、他者の個別的な生き方を尊重した対等者同士の協力だからである。」