女優
女優。そう女優。私のなりたいもの。私を心の底から揺さぶってくれる仕事。
女優、じょゆう、actress、Schauspielerin。どこから眺めても素敵。
舞台に登場する私。そこへ注がれる数えきれない視線。私はその視線をすべて感じ、その光線によって刻まれ造形される。私が私でなくなる瞬間。
けれど、私を何より恍惚とさせるのは、芝居がはねた後の昂揚と倦怠、そしてどこから来るのか分からないなにがしかの絶望。誰かが私に水を持ってきてくれる。私はそれを飲む。
そのとき私は何者でもなくなる。抜け殻ですらなくなって、私は一人の女優でいるのです。
連絡
ああ、今日もまた一日が終わる。だが、なんとその油断を見透かしたかのように、終わったはずの物語の主役たる彼女から連絡がありました。髪を切ったと。だいぶ前から切った姿を見、もうそろそろ、さらに髪型が変わるころだと思っていただけに、この知らせ、なんとも不器用な、しかしそれだけに心温まる情報ではありませんか。
皆さん。彼女を甘く見てはいけません。いわゆるブレイクを果たしてから2年半。彼女は驚くばかりに変貌しています。とくに最近は、彼女はどんどん幼児化している。幼児化といえば、かつてDR.スランプアラレちゃんが、当初のセクシャルな子供からただうるさいガキに退化していったことが思い出されますが、彼女はどんなに幼児化してもガキにはなりえません。なぜなら彼女は生きた女だから。生きた女が幼児化というかたちでテレビという妖怪と戦っているのです。彼女はその妖怪の胎内でどこまで生きていけるのか。あるいはその胎内から踊り出て、我々の知らない新たな世界へと飛び立ってゆくのか。すべては、彼女の次の連絡を待つしかないでしょう。
完
名簿に名前のない女。どこをどうして生きてゆく。当てなき旅も幾歳ぞ。紆余曲折もありながら、つい先ほど便り来て、大丈夫です幸せですとの言葉です。謎のみ残る終結に、さぞ御不満も多かれと重々存じは致しまするが、もう交信のすべもなく、かくなる上は御見物の皆々様も、はっぴいえんどと思し召して、これよりいらぬ穿鑿のなさいませぬよう御頼み申し上げます。
日没
あああ、かくてぞまた日は沈む、南米エクアドルはそのようにして沈む、だがそのことのとの引き換えであるかのごとく、北米アメリカも沈んでいくのは、世の理(ことわり)であろうかと、あたしは強く思ったのでした。