奥様が昨日から旅行に行っている。


彼女とは7年間、ほとんど毎日一緒にいる。

基本的に土日もいっしょ。

朝もいっしょ。

夜もいっしょ。


だからこういう時間は慣れない。

何をすればいいのか途方にくれてしまう。


友達も同僚も親もいる。

でも誰を誘う気にもなれない。


すごく自分がつまらない人間に思える。

ただ家にいて、ご飯を食べてぼーっとして。


彼女と出会う前はどうやって時間をつぶしてたんだっけ?

思い出せない。


『人生とは死ぬまでの暇つぶしだ』と言った人がいたけれど

一人でいると、それは真実だ。


彼女が存在してる時間は楽しいから足りなくて

「つぶす」のではなく

どうやって余すとこなく「使う」か考える。

同じ人生ならそっちのほうが良い。


そんなことばっかり考えてるのも

彼女が帰るまでの暇つぶし。


僕の奥様は見た目はキレイなのに

中身はちょっぴり「腐って」います叫び


つまり……BL好き。

本とか同人誌を買うほどではないけど

暇なときはネットで読んで

あらすじを僕にネチネチ話しては怒られてる。


今日も僕が同僚(♂)と電話してると横で

「浮気!?うわき~ドキドキドキドキ?」と嬉しそうにピョンピョン跳ねてる。

男同士で遊んだ話とかするとやたら喜ぶし。


ガチホモ(?)とか生々しいセックスとか

そういうのは苦手らしく、もっと精神的なもの――

例えば

【仲の良い男子高校生がチャリでニケツ】とかそういうのが一番萌えるんだってショック!

ほんっとこればっかりは一生わかりあえない。


そんな彼女が今までで一番悦んだ話。


高校のころ、グラウンドで一番の親友と柔軟してたとき。

相手の背中をぐいぐい押してたら、茶色い天使の羽ができてた。

(=僕の手が土と汗で汚れてたから)


なぜかこの話で奥様はぷるぷる身悶えてた…ツボだったらしい。


そんな変な人だけど、愛してるんだよね。


とりあえず奥様の妄想した僕が「受け」設定のお話を

嬉しそうに話すのだけは止めてくださいねマジでガーン


奥様と僕はよく一緒にコンビニに行く。


お菓子コーナーでもなく飲み物コーナーでもなく、

奥様が真っ先に向かうのは18禁雑誌コーナーだむっ


ずらりと並ぶHな漫画雑誌を見て

「やっぱり快×天の表紙はいいわ~!」

とか

「うっわ、×××(よく知らないけど有名な作家らしい)

描いてるよ!どうやって連れて来たんやろ」

とかブツブツ言う。


付き合っていた当初は

「恥ずかしいからやめなさい!」と注意していた。

最近では

(これも職業病っていうのかなー)と静観している汗


いつもはそんな感じなんだけど

今日に限って彼女は健全雑誌のコーナーに立ち止まって

ボーっとしている。

よくみると目線の先のあるのはいわゆるママ雑誌。


「なに?ほしいの?」


「んー、あのねー」


考え込みながら、奥様が語ったお話合格


「今日打ち合わせのあと、電車乗ったんだよ。

角に座れてラッキーと思ってたら

赤ちゃんを前に抱っこしたお母さんが乗ってきたのね。

『変わりましょうか?』って言ったんだけど

すごい笑顔で『大丈夫ですよー。ありがとうございます』

って断られたのー。

でね、すごいの。その後、私も彼女も30分ぐらい

電車乗ってたんだけど、その間ずっとずーっと

体を左右に揺らして赤ちゃんの背中を優しく叩いてるの!!

ずっと立ってて、重いし、足もつらいだろうに

ずっと笑顔でぽん、ぽん、ぽん、って。

横でその音聞いてたらなんか泣けてきて~。

母親って偉大だなって思ったの。

私のお母さんやひなみつ君のお母さんも、あんなんだったのかな?

私もいつかそうなれるのかな?

でもまだまだなれそうもないなぁ、

こういう雑誌よんで研究しなきゃいけないかなぁ……

ってな事を思ってましたダウン


目がどんどん潤んでくる。

奥様はよく思い出し泣きする人なのですしょぼん


僕は正直、結婚した今でも

『子供』ってピンとこない。

まだまだ二人で遊んでいたいって思ってしまう。


「うーん…まあ、まだその【時期】じゃないってことなのかなあ」

「うーん。そうだよね。自然に任せよっか!」


そういって笑った奥様が手に取った雑誌は

たまひよ系ではなくてエロ系でした。


とりあえずは今は仕事に生きる、っていう事なのかな。