華厳経(けごんぎょう)
『華厳経』(けごんぎょう)、正式には『大方広仏華厳経』(だいほうこうぶつけごんぎょう)』(buddhaavataMsaka-naama-mahaa-vaipulya-suutra、महावैपुल्यबुद्धावतंसकसूत्र)は、大乗仏教の経典のひとつで、大方広仏、つまり時間も空間も超越した絶対的な存在としての仏という存在について説いた経典である。華厳とは別名雑華(ざっけ)ともいい、雑華によって仏を荘厳(しょうごん、仏像や仏堂を厳(おごそ)か飾ること。)にすることを意味する。原義は「花で飾られた広大な教え」という意味になる。
沿革
華厳経は、インドで伝えられてきた様々な経典が、3世紀頃に中央アジア(西域)でまとめられたものである。 華厳経の全体のサンスクリット語原典は未発見であるが、入法界品(にゅうほっかいぼん)・十地品(じゅうじぼん)などは独立のサンスクリット経典が存在する。
完本の漢訳として、
§ 東晋の仏駄跋陀羅(ぶっだばだら、359年 - 429年)訳の60巻本(「六十華厳」、旧訳、晋訳)
§ 唐の実叉難陀(じっしゃなんだ、652年 - 710年)訳の80巻本(「八十華厳」、新訳、唐訳)
がある。 また、唐の般若三蔵(はんにゃさんぞう)による「入法界品」のみを訳出した40巻本(「四十華厳」)もある。この他、チベット語訳完本も存在する。
中国では華厳経に依拠して地論宗(じろんしゅう)・華厳宗(けごんしゅう)が生まれ、特に華厳宗は雄大な重重無尽の縁起を中心とする独特の思想体系を築き、日本仏教にも大きな影響を与えた。
日本では審祥(しんしょう、しんじょう)が大陸より華厳宗を伝来し、東大寺で「探玄記」(たんげんき)による「六十華厳」の講義を3年に及んで行なった。東大寺は、現在華厳宗の本山である。
ネパールでは『十地経』(じゅうじきょう)とともに九法宝典(Nine Dharma Jewels)に数えられている。