バックパックを背負ったお客さんが来た日のこと。

カッパさんが

「これからお出かけですか?」と聞くと

お客さんはウキウキした様子で

「実はソロキャンプに行くんですよ」と答えた。

ソロキャンプ?

その魔法の言葉にカッパさんの好奇心の扉が開いた。

ソロキャンプ~♪

なんて素敵な響き。

仕事を終えたカッパさんはそれから5時間あまりパソコンの前に座り、

ソロキャンプのお勉強をした。

「フクちゃん!ぼく、ソロキャンプ始めるわ!」

だろうね。

言うと思っていたよ。

「今度の休み、アウトレットに行きたい。ついてきて」

それも言うと思った。

でも私は心を鬼にして「私は予定があるから一人で行って」と

突き放してやった。

いつまでも私がそばにいたら、カッパさんは成長しないからね。

カッパさんは少しだけがっかりしていたが、

意を決して「一人で行く」と宣言した。


さて休みの日。

私はホワイトデーに渡すお菓子を買いに街に出かけ、

カッパさんはアウトレットに行ってきた。

私が家に帰るとカッパさんはすでに帰宅していた。

背中が寂しそうだ。

“話を聞いて~フクちゃ~ん”オーラを全開で放出している

しかし夕食の支度があるし、

聞くのもなんか面倒くさいしで無視していた。

しかしちょっとそばを通り過ぎたときに、

カッパさんがすかさず話しかけてきた。

カッパさんは登山用品の店に行ったらしい。

ガタイの良い中年男性が対応してくれたようだ。

ソロキャンプをしたいのだが初心者で何もわからない。

なにから準備したらいいのか云々などをたずねた。

すると中年スタッフは

「うちは登山専門なので、そういうものは扱っていない」と答えた。

またシーズンオフなのでキャンプ用品も品薄らしい。

カッパさんは「セールはいつですか?」と聞くと、

「うちは命を預かる商品を置いているんです!値下げはしませんっ!」

と言い放たれたようだ。

おそらく相手が細っこい男性であれば、

カッパさんもムカッときて恫喝したかもだが、

スタッフはガタイの良い男性、しかも一枚も二枚もウワテだ。

カッパさんはスゴスゴと店を出た。

そっかぁ・・・槍ヶ岳とか八ヶ岳とか登山する人が利用する店なんだ。

河川敷のソロキャンプに、命を預ける器具は必要ないさね。

カッパさんの思い描くソロキャンプは、

のんびりと平地で折り畳みの椅子に座り、

自分で淹れたコーヒーを飲むと言うもの。

ソロキャンプと言うより野外のセルフカフェと言ったところか。

どこに命賭ける?

八ヶ岳仕様の登山用品なんか必要ないよ!

ホームセンターで全部揃うよ!

これは一流ソムリエに赤玉ワインを頼むようなもんだね。

あるいは一流フレンチでビッグマックをオーダーしたようなものだ。

あるいは・・・もういい!


それでもカッパさんは、

下町ロケットに出て来る佃製作所の水素エンジン用のバルブのようなものを

手に取りうっとりと眺めている。

どうやら今回の戦利品のようだ。

携帯用ガスボンベに直接装着して火力を起すものらしい。

ま、どうでもいいけど。


さて毎日アマゾンからぞくぞく届くキャンプ用品。

本当に本当に3日坊主にならないことを願う。