貸本屋の風景 | 甲羅に似せて

甲羅に似せて

蟹は甲羅に似せて穴を掘るそうです。私も日々の想いを
蟹が穴を掘るように綴っていけたら・・・。

朝ドラ『ゲゲゲの女房』、もう4ヶ月目に入りましたが、少し感想を書いてみようと思います。感想というより、自分の10代の頃の昔話になりそうですが。


私の子どもの頃にも、近くに貸本屋があってよく通っていました。値段は一冊、大人30円、子ども15円くらいでした。当時は怪奇漫画が全盛期で、梅図かずおと古賀新一が双璧でした。


不思議なことに、そこでは水木しげるの漫画は読んだ記憶がなくて、やはりテレビでやっていた『ゲゲゲの鬼太郎』の印象が強いのです。最初白黒だったのがカラーになって、ちゃんちゃんこの黄色がまぶしかった。『悪魔くん』や『河童の三平』の実写版を観た記憶もあります。


雑誌に描く漫画家と貸本だけに描く漫画家がいるらしいと、おぼろげにわかってはいましたが、あのトキワ荘時代に、貸本漫画家がこれほどの貧乏をしていたとは、このドラマで初めて知りました。


そんな貧乏の中にあって、村井家が悲惨なことにならずに、清貧という言葉を思い出させるような、慎ましくも温かい家庭を築いているのは、茂と布美枝の人柄が大きいと思います。


特に茂の、漫画に賭ける気持ちの強さと、戦争を体験して生き延びて今までやってきた肝の据わり方は、観ていて清々しくなります。その強さの影にある、壮絶な戦争体験にも、思い至るのですが。


自分も学生時代、漫画を描いていたせいか、原画というのはとても大切なものという意識があるので、茂が出版社の人に原稿にお茶をこぼされたり、なくされたり、約束した原稿料を払ってもらえないということに、すごく怒りを感じたり、哀しくなったりしました。


一方で、そんなことには泣きごとひとつ言わず、次々と作品を描いていく茂はすごい人だなあと感心しました。自分が面白いと思ういい作品を、これからもどんどん描けるという自信があるからこそなんでしょうね。厳しい時代に生き残れたのは、描き続けることのできるしぶとさと才能があったからなのかもしれません。


作品の良さを理解してくれる編集者が現れて、茂の作品をほめてくれるところでは、涙が出ることもありました。自分で面白いと思って描いているものが評価してもらえないと、自分を否定されているようで、本当にそこはつらいんじゃないかと思いましたから。


隠れた才能が世に出るためには、それを見抜く眼力のある編集者の力もまた、欠かせないものなんですね。


これでもかという貧乏の後、テレビ時代に入って、ようやく水木漫画が評価される時代が訪れそうなので、これからが楽しみです。