ちりとてちん 3/27 | 甲羅に似せて

甲羅に似せて

蟹は甲羅に似せて穴を掘るそうです。私も日々の想いを
蟹が穴を掘るように綴っていけたら・・・。

ひぐらし亭オープンに向けて、準備は着々と進んでいますが、喜代美ちゃんは何か手伝おうとしても、みんな気遣って用を頼んでくれません。


そこに1人の青年が親しげに喜代美ちゃんに話しかけてきます。すぐには気づかない彼女に、「草原の息子です。」と名乗る草太くん。「瀬をはやみ~。」と草原さんの口調を真似ていたのが、もう20才になったんですね。大学で日本文学を学ぶかたわらに落語の裏方を手伝っていて、今日は照明のバイトで来ていたのでした。

ほんとにそのまま大きくなったように、雰囲気が似ていてびっくりです。草原さん譲りの噛み癖もありましたね。

子どもの成長する様子を見ると、歳月の過ぎる早さを感じます。


みんなが気を使うから、見えないところで休んでいるように言われて、喜代美ちゃんは寝床でお弁当作りを手伝っています。「ほんとにきれいで凝ったお弁当ですね。私の学生時代のお弁当は、茶色いおかずばかりで、汁もれしたりひどかった。」と言う喜代美ちゃん。

「これは今日だけのものだから、どうにでもできるけど、毎日作るお弁当は子どもの体のことを考えて決まった時間でつくらなくてはいけないから、毎日作るだけでもすごいことだ。」と言います。


喜代美ちゃんがお弁当を師匠たちに届けに行くと、そこには糸子さんが天然振りを発揮しておしゃべりに花を咲かせています。喜んでお弁当を食べようとする師匠たちですが、尊徳師匠のお箸が入っていません。

こんなご馳走を前にして、お箸がないなんてと怒る師匠。「ごめんなさい、すぐ持ってきます。」と喜代美ちゃん。

そこで糸子さんは、「うちの主人は若狭塗り箸の職人ですが、主人が言うには、どんなご馳走もお箸がないと食べられない。お箸は食卓になくてはならぬ、名脇役なんだとか。」


なるほど。お箸のありがたみなんて、普段なかなか思い至りませんが、お弁当を持っていってお箸を入れ忘れたときに、困った事があります。確かに尊徳師匠のような気分になりました。


草太くんにもお弁当を持っていくと、最初だけでも照明をやってみないかと、喜代美ちゃんに声をかけてくれます。草原さんから、初日に出られなくて残念がっている事を聞いていて気遣ってくれたんですね。


そして初日、徒然亭の5人が横一列に並んで、順番に口上を話すのを、喜代美ちゃんは照明を操作して照らします。ひぐらし亭のひぐらしの意味にはいろいろなものをこめたと、それぞれが話します。

草々さんは「その日暮らし」という意味で、今は未熟でその日暮らしでもお客さんにそだてて頂けるようにという思い。

小草若さんは「蝉の蜩」に例えて、その一生をほとんど土の中で過ごす蝉のように、「底抜け」に長い修行であること。(底抜け排卵と草々さんに突っ込まれていました。)

四草さんは「一日中」という意味で、 ここで一日中飽きずに落語をやる噺家と、飽きずに聴きに来るお客様。どっちも頭の悪い連中がよってたかって一日中笑っていけたらということ。(頭悪い言うな!と小草若さんに突っ込まれていました。)

小草々さんは、若さ塗り箸をシンボルとしていることについて、幾重にも模様や漆を塗り重ねる若狭塗り箸のように、稽古や高座、公演を積み重ね、精進して行きたいということ。

草原さんは、「毎日皆さんに笑っていただき笑い声を聞かせていただくのが、上方落語の力になっていきます。どうかぎょうさん笑うて頂きますように。」と締めくくりました。


聴いている喜代美ちゃんの頭の中で、かつての順ちゃんの言葉が蘇ります。「ステージの真ん中ででスポットライトを浴びているだけが主役じゃない。人にライトを当てるのも素敵な仕事やな。」


何かの想いが喜代美ちゃんの心を満たしているようです。お腹に手を当てながら、何かを考えているようでした。


ついに念願の常打ち小屋がオープンしましたね。初日の口上に、徒然亭の人たちの想いの全てが籠められていて、何度も噛みしめるように聴き入ってしまいました。

最初は不可能と思い込んでいたことがこんな風に実現するなんて、夢は本気で願えば実現するものなんだなあと、自分のことのようにうれしいです。


そのうれしさから、ちょっと離れたところで、喜代美ちゃんはいろいろな事を思い返しながら、これからの事を考えているようです。同じ落語家同士でありながら、彼女1人が女性であることで、他の兄弟子達とは分け合えない悩みや不安をを抱えて、ひとりでこれから行く道を考えていかなければならなくて、その立ち位置が見ていて切ない気持ちです。


順ちゃんの大予言、新しい道はこの日から始まっているのでしょうか。