ちりとてちん 3/10 | 甲羅に似せて

甲羅に似せて

蟹は甲羅に似せて穴を掘るそうです。私も日々の想いを
蟹が穴を掘るように綴っていけたら・・・。

 一難去ってまた一難・・・今度は小草若さんが大変な事に。


 「ちりとてちん」は、主人公だけでなく登場人物それぞれの成長物語だなあと思うのですが、喜代美ちゃんに隠れた、陰の主人公は小草若さんかもしれないと思えてきました。

 「底抜け」が受けて、落語家としての自分の資質や能力について、考える暇もなくここまできてしまった彼ですが、昔から抱いていた落語へのコンプレックスが、草若師匠が亡くなった今も続くとは思ってもみなかったので、ことは相当深刻だなあと心配は尽きません。


 徒然亭のみんなが、四草さん以外、ここまで小草若さんが深く悩んでいる事に気づいてもいないのは、不思議なくらいです。自信家だった底抜け時代の性格からは、この状態は想像がつきにくいのかもしれません。

 木曽山君の初高座にてっきり出たと思っていたら、仮病ですっぽかしていたんですね。誰もそれを疑っていなくて、普段どおり接しているのが、本人にしてみれば辛い事この上ない状況です。心の支えの菊江さんの、出世払いでいいという言葉さえ、今の小草若さんには苦しいプレッシャーでしかありません。


 失敗したっていいから、自分で口にした以上、がんばって高座を務めればよかったのにと思います。泣いても笑っても、自分の実力以上のことはできないんですから。

 草若の跡取りとして、恥ずかしくないようにやらなければいけないという、心に描く自分でない事が、耐えられなかったんでしょうか。


 その後、小草若さんは、師走に催された徒然亭の落語会でトリをまかされ、今度こそ、草若師匠の跡取りとして「はてなの茶碗」をと言われますが、それもすっぽかしてしまって、寝床では徒然亭のメンバーが難しい顔をしています。出られなかった散髪屋組合の落語会で、代わりに草々さんが「愛岩山」をやったのも皮肉で、それを聞いた小草若さんは、ますます萎縮してしまったような気がします。


 四草さんは、「あんな奴、もうどうなってもいいじゃないですか。」ときついことを言って、出て行ってしまいます。部屋に戻ると、小草若さんの存在感ある赤い縞の布団がたたまれて置いてあります。

 九官鳥の平兵衛は、「はてなの茶碗」のくだりを覚えてしまったようで、繰り返し、小草若さんの口調をまねてしゃべります。小草若さん、ずいぶん練習していたんですね。


 もともと孤独な四草さんだからこそ、一緒に暮らしていた小草若さんの、拠り所のない不安な気持ちが、よくわかったのではないでしょうか。草若師匠が生きていた頃ならば、知らぬ振りを決め込むことも出来たのでしょうが、師匠が亡くなった今となっては、自分が見守って助けてやりたいけれど、どうすることもできないという苛立ちを感じていたような気がします。


 いっそ、やめてしまってもいいんだというのは、四草さんのどういう考えでしょうか。才能のなさを厳しく指摘していたという事は、苦労しても無駄だから違う道を探せということか、いったん振り出しに戻って、父親から離れて、本当に落語がやりたいか考えろという事なんでしょうか。

 私は後者であってほしいと思うのですが。


 みっともなくてもかっこ悪くても、あるがままの自分をさらけ出し出来ない自分と向き合う事で、人は思春期を乗り越え、成長していくのではないかと思います。

 手を貸すといっても、そこのところは自分で乗り越えなくてはならない壁なので、あとは、小草若さんになんとかがんばって乗り越えてほしいと願うだけです。


 草若師匠の三回忌にも小草若さんは現れませんでしたが、天狗座の鞍馬会長が、徒然亭を訪ねて来ました。草若師匠のお葬式以来です。散髪屋組合の落語会のときは、小草若さんが来ないと聞いて、帰ってしまったのでした。

 小草若さんを心配して来てくれたんでしょうか。・・・それとも?


 先週の予告に出ていた、やさぐれた小草若さん。この役は、ずいぶん振幅の激しい大変な役になってきましたね~。茂山さんに大いに期待して、また明日を待ちたいと思います。