ちりとてちん 2/9 | 甲羅に似せて

甲羅に似せて

蟹は甲羅に似せて穴を掘るそうです。私も日々の想いを
蟹が穴を掘るように綴っていけたら・・・。

 今回は、病気のことがみんなの知る所となった草若師匠のほっとした優しい笑顔が見えて、よかったなあ、やっとここまできたなあという思いでした。


 小梅さんが師匠の付き添いをしていると、現れたのは和田家の人々。二手に分かれようとしたのにけんかになって・・・という話を喜代美ちゃんがすると、「おまえはほんとにおもろいなあ。おまえと話しているとほんまにおもろい。」」と笑って師匠は言います。それを聞いて、喜代美ちゃんは、小さい頃おじいちゃんに同じことを言われたのを、思い出します。

 「おかしい人間が一生懸命生きてる様子はほんとにおもろい。落語とおんなじや。」

 

 久しぶりにこの場面を観て、また涙ぐんでしまいました。おじいちゃんの、人間に対する温かい眼差しを感じて、じーんときます。


 「小さい時から見たり聞いたりしてきたことをしょうもないと思ってるかもしれんけど、それはほんまにおもろいんやで。」と、師匠は言います。


 それを聞いて閃いたのか、喜代美ちゃんは小次郎さんの宝くじをネタにして、即興で、落語をやり始めます。笑いながら師匠は言います。「それがお前の創作落語やな。」「お前の宝物や。大事にしいや。」

 無理にこうだと決め付けて教えず、自分の中から自然に出てくるように声をかける師匠の教え方はすごいなあと思います。ほんとに喜代美ちゃんは、落語の中から出てきた登場人物のような感じがします。

 お前の宝物や、というのは口癖でしょうか。弟子をほめる時、よく使いますね。自分の中にある、自分でも気づかない長所をそんな風に目上の人に言ってもらったら、その言葉こそ宝物だとも思います。


 そして、喜代美ちゃんの頭をなでるのもくせでしょうか。よく草々さんが喜代美ちゃんの頭を撫でていますが、自分も師匠にされていたので、自然と喜代美ちゃんにするようになったのかなあと思いました。若かりし頃の四草さんもされてましたね。

 私も小さい時、泣いてワーッとなった時、母親に頭を撫でてもらってイライラした気分がすーっと抜けていくのを不思議だなあと思った記憶があります。・・・なんででしょうね。スキンシップでほっとするのと、頭にはいろんなツボがあるというから、なにかそういう効果があるんでしょうか。

 言葉と態度両方で、しっかりと弟子達を教え、愛情で包み込んでくれた師匠。病気のことを考えると、それだけに辛くなってきます。


 師匠はドクターに、1日だけうちに帰してほしいと頼みます。

 数日後、家に帰った師匠は、紋付袴で弟子達の前で、一時間以上かかる大ネタ「地獄八景」をやります。最後に弟子達に稽古をつけるつもりだったんですね。病気がわかってからこれを聴く、喜代美ちゃんたちの表情は複雑でせつなげです。

 おかみさんが亡くなったときには逃げてしまった師匠も、今回はしっかり向き合って、1番大切な落語で弟子達に自分の生き様を見せてくれたんですね。庭先では、近所の人たちも聴いています。


 「その道中の陽気なこと!」という台詞に胸をしめつけられるようです。


 笑いながら泣いてしまうというか、泣きながら笑ってしまうというか、今回はそんなお話でした。笑うことと泣くことは、針の指す方向は正反対でも、感情が揺れるという意味で似ているのかもしれません。

 落語の中には、そんな風に、人間のいろいろな感情が、聴いているうちに湧き上がってくる面白さがあるんだなと思います。ただ面白いだけでなく、その中には、器用に生きられない人たちの日々の姿が描かれていて、共感したり自分のことに引き寄せて考えたりする、先人の知恵と見守る眼差しを感じます。


次週は、哀しげな予告編でしたね。静かに待とうと思います。