ちりとてちん 2/7 | 甲羅に似せて

甲羅に似せて

蟹は甲羅に似せて穴を掘るそうです。私も日々の想いを
蟹が穴を掘るように綴っていけたら・・・。

やっと師匠が入院してくれた~。みんなが気づいてくれた~。先行きは不安だらけだけど、そのことが1番ほっとしました。


 その頃、小草若さんは四草さんのところへ現れ、しばらくここに置いて欲しいと言います。弟子達がそれぞれの道を進んでいる中、小草若さんだけが、時が止まったかのように活路を見出せずにいたんでしょうか。マンションもついに手放すことになったんですね。「だから、草若師匠の弟子としての自覚を持てと言ったのに。」という四草さんですが、それ以上の毒舌はありませんでした。そこに草々さんから師匠入院の知らせが。


 小浜で糸子さんのかわりに家事をしていた小梅おばあちゃんは、なかなか帰ってこない糸子さんの電話での様子を心配して、徒然亭に現れます。


 師匠の病状を聞いた後の、弟子達の取り乱しようが、せつなかったです。


 小草若さんは、仏壇屋の菊江さんのところに、昔のように水をくれと言って立ち寄ります。座りなれた椅子に座って、呆然と空を見つめ、はらはらと涙を流す小草若さんの胸のうちはどれだけ複雑だったことでしょうか。なかなか自分の家に寄り付かなかった小草若さんも、そこに元気で父親が暮らしていると思えばこそ、自由に外で暮らしていられたのだと思います。


 いつも冷静な四草さん、鳥かごの水を代える手がぶるぶる震えてこぼしてしまいました。そのまま頭を抱える様子に、ショックが大きいことが見て取れます。普段気持ちをあまり外に出さないだけに、彼の心の中にある師匠の大きさに思い至りました。


 草原さんは、高座に上がる前なんでしょうか。楽屋の鏡に向かって、無理に作った笑顔が不気味でした。自分が辛くて泣きたい時、人を笑わせなければいけないなんて、こんな時は辛い仕事ですね。


 草々さんと喜代美ちゃんは、あの、もと壁があったところで背中合わせで呆然としています。「何で師匠が」と草々さんが涙を流すとつられて喜代美ちゃんも顔を覆い、抱き合って泣くしかありませんでした。思い出のつまったその部屋で、こんな悲しい出来事に見舞われるとは・・・。


 お見舞いに来た小草若さんに、「言うたらとめるやろ。」という師匠。「まだ懲りてへんのか。常打ち小屋のことでお母ちゃんにあんな淋しい思いさせたのに。」と小草若さんが言うと、師匠は「ひとし。・・・すまんなあ。」と、初めて息子の名を呼んで謝ります。死を前にしてやっと普通の親子に戻れたんですね。まるで喜代美ちゃんのお父さんとおじいちゃんのようただなあと思いました。もっと早く素直になれたらよかったのに・・・。ほんとは2人ともずっと素直になりたかったのに・・・。


 師匠の病室に1人残った喜代美ちゃんが泣いていると「泣くな。」と師匠は声をかけます。病気の師匠を見て、喜代美ちゃんはおじいちゃんが死んだ時を思い出していたんですね。

 身近な人の死はほんとにせつないものです。喜代美ちゃんと同じように、師匠もその辛さを知っています。その師匠がかけた言葉は、心に沁みるものでした。


「人が死ぬのには順番がある。年取った方から死んでいくのが道理や。消えていく命をいとおしむ気持ちが、だんだん今生きている自分の命をいとおしむ気持ちに変わっていく。そうしたら今よりもっともっと一生懸命に生きられる。もっと笑うて生きられる。・・・若狭、俺を笑わせてくれ。お前の創作落語で俺を笑わせてくれ。」


 師匠にこれだけの言葉をかけてもらって、喜代美ちゃんの心が決まったようです。途中から病室に入った草々さんも、「やってみます。」と言う言葉を聴いていました。


 徒然亭のみんなにとってかけがえのない存在。みんなどこか不器用で、師匠に励ましてもらいながら好きな落語を教わり、続けてきた弟子達にとって、師匠が手の届かない所に行ってしまうことなど、考えたこともなかったことでしょう。

 このショックの中から、みんながそれぞれ考えて何かを始める気がします。師匠の思いを汲み取りながら、何ができるのか・・・。


 身近な人の「死」の予感に向き合うことで出てくるなにか。それはなんだろうと考えながら、明日を待とうと思います。