ちりとてちん 1/30 | 甲羅に似せて

甲羅に似せて

蟹は甲羅に似せて穴を掘るそうです。私も日々の想いを
蟹が穴を掘るように綴っていけたら・・・。

 今日は四草さんのエピソード。本名はしのぶさんて言うんですか。「端正な落語をする」って師匠の言葉にもへぇ~と感心。個性的なのにあまり自分のことを話さない彼のエピソードは、とても意外なものでした。


 まだまだお悩み中の喜代美ちゃんは、今度は四草さんの楽屋を訪れ、悩みを打ち明けます。「下手だからじゃないか。」と四草さんのアドバイス、きつ~。

 そんな四草さんですが、九官鳥の平兵衛を、年取ってうちに置いておけないと楽屋までつれてきていました。


 喜代美ちゃんは四草さんが四番弟子だったので自分と年が近いと勝手に思っていたようですが、本当は草々さんより年上とは私もびっくりしました。外見が年齢不肖で、精神年齢が意外と幼い感じがするからでしょうか。


 四草さんは、大学での商社マンだったんですね。確かにあの人を見下す感じはエリートっぽいかも。妾の子で、母親は沢山お金をもらって男をとっかえひっかえ、と説明する四草さんの表情はちょっと苦しげです。

 頭が良すぎて周りの人が馬鹿に見えてしまう彼がこれと見込んだ人が師匠とは、人を見る目は確かでした。


 人の気持ちに敏感なのにうまく関係が結べないのは、彼のおいたちと関係があるのかもしれません。向かい合う相手に思いやりを持てない、人間不信の部分があるようです。女たらしのようなので、女性に対してはその辺がうまくいくんでしょうか。


 修行中のある日、傷ついた九官鳥が徒然亭の庭にいたと、おかみさんが稽古中のみんなのところに持ってきました。「助かるかどうか、賭けましょうか。」と、血も涙もないことを言う四草さんに、「よし、俺は死ぬ方にかける。もし助かったら何でもお前の好きなものをやろう。」と、師匠が持ちかけます。


 賭け事好きの四草さんは、それから傷の手当てをしたり餌をやったり、珍しく一生懸命です。3人の兄弟子達も、生き物相手なのでつられて一緒に世話をしているうちに、九官鳥は元気になったようです。

 そんなある日、通りかかった師匠が、縁側で鳥かごを眺める四草さんに、「お前の勝ちやな。何がほしい。」と、たずねます。

 「これ。この九官鳥を僕にください。」

 それを聞いた師匠のなんともいえないいい笑顔!四草さんの頭をくしゃくしゃっと撫でて、すぅっと行ってしまいました。


 そのときの四草さんの表情は、それまで見た事のないものでした。ぽかんと目を見開いて、まるで少年のよう・・・。人を警戒したり軽蔑しながら心に鎧っていた何かが、急にはずれて、四草さんのほんとの姿が垣間見えたような瞬間でした。


 思えば、草若師匠は、落語の師匠である前に父親として、若い弟子達に接していたのではないでしょうか。父を知らない草々さんと四草さんにとって、師匠との絆が強いのは、その欠けている部分を師匠が埋めてくれたからかもしれません。


 思い出深い九官鳥は、今も四草さんにとって大事な存在のようです。落語の本番で出て行きながら世話を頼まれた喜代美ちゃんは、鳥かごを持って行き、袖で落語を聴いています。彼女のためか、四草さんは「饅頭こわい」をやってくれました。


 なんでもわかっているという風なのに、ある意味不器用で、そういう弱さを人前で出さないのでわかりにくかったのですが、根っこは真面目で素直な人なんだなあと思いました。喜代美ちゃんの小浜での騒動の時も、何か自分で思うことがあったような気がします。

 楽屋での四草さんは、他の人ともちゃんとあいさつができる大人な感じだったし、この頃天狗芸能によくお呼びが掛かるという話を聞くと、あの後、ずいぶん精進したんだろうなあと、勝手に感慨にふけってしまいます。


 それにしても、師匠はあんなに自覚症状があったら、もう病院に行った方がいいと思うんですが・・・。糸子さん、なんとか言ってあげて~。