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高橋美枝さんが出演されたグリコのコマーシャル『ファンシーキャル』の動画が動画サイトに投稿された際、記念として書いた記事『ファンシーキャルうp記念!「ピンクの鞄(トランク)」 高橋美枝 』は下記URLにあります。

『ファンシーキャルうp記念!『ピンクの鞄(トランク)』 高橋美枝 』
https://ameblo.jp/cherrycreekjp/entry-12552340510.html

 

高橋美枝さんの両A面のデビュー曲が、表題の『ひとりぼっちは嫌い』/『ピンクの鞄(トランク)』。発売日は、晩秋を迎えた1983年11月21日のこと。この曲は、あいにくオリコンTOP100入りこそは達成しなかったけれども、ひとまず最高120位というマイナーヒットとしての記録は残している。

 

 

 

日本テレビ『スター誕生』出身の彼女は、デビュー当時は若干15歳のムスメ。しかし、中学生とは思えないような、その落ち着きとマイルドな声質を兼ね備えた歌声が最大の魅力だったもの。所属はCBSソニーという、実に恵まれた環境にその身を置いていた。ソニー側では"ポスト聖子"としての期待も相当高かったとも聞く。実際、当時の雑誌記事に目を向けてみると、至るところにそのような記述が見られるのである。

 

 

「美枝はソニー伝統の正統派アイドルを受け継ぐ金の卵」
「ソニー期待のポスト聖子」

 

 

たしかに、彼女のデビュー曲に耳を傾けてみれば、それには合点するかと思われ。楽曲全般の出来栄え、クオリティの高さ、そして豪華な作家陣などなど、どれをとってみても聖子さん風の香りが色濃く漂ってくる作風になっているのである。

 

 

この両A面デビュー曲にて注目すべきは、片面に収められた「ピンクの鞄(トランク)」における豪華な作家陣だろうか。作詞は松本隆氏、作曲は元YMOの細野晴臣氏が手がけている。これは当時の新人アイドル歌手におけるデビュー曲としては「超」を付けてしまってもよいほどの破格ぶり。しかも、聖子さんの新曲?とおぼしき風情をしこたまに湛えた作りとなっており、当時のソニーが美枝さんを"聖子の後継者"として位置付けていたことが窺えるのである。

 

 

しかし、両A面と言えども、当初は『ピンクの鞄』が全面的にプッシュされる予定だった。同曲は、ご本人も出演したグリコの新製品『ファンシーキャル』のCMソングとして使われたのだが、発売してまもなくの頃に事件が勃発。そのお菓子が何らかの理由により急遽販売中止と相成ってしまったのである。

 

 

自身の記憶によれば、何度か店頭で見かけたことはあったものだし、ブラウン管を通して、特に夕刻の時間帯にてそのコマーシャルは見かけたもの。何の理由にて販売中止に追い込まれたのかは、今もってナゾなのだが、これは彼女の華々しいスタートをケ躓かせるアクシデントになってしまったことは言うまでもなく。

 

 

アイドル歌手としてデビューを飾ると同時に、大手企業グリコのCMに出演。そして、そのお菓子の箱は自信の楽曲である『ピンクの鞄(トランク)』を模したモノ。更に、そのデビュー曲がCM内でも流され...ときたのならば、美枝さん売り出しにおけるお膳立ては完璧だったと言える。

 

 

しかし、その販売中止というアクシデントにより、『ピンクのの鞄(トランク)』を披露する機会に恵まれなくなる。たしか、一度か二度ばかり、テレビ番組に歌うお姿を見かけた程度。その後は隅に追いやられるような形となり、人前で披露されることがなくなっていったのである。そして両A面扱いだったもう一方の楽曲『ひとりぼっちは嫌い』がメインとして、テレビ番組等にて披露されるようになっていった。なんとも実に勿体無い話である。グリコには販売中止というアクシデントの肩代わりとして、美枝さんに新たなるチャンス与えるくらいの心遣いは無かったものなのか...。

 

 

もちろん『ひとりぼっちは嫌い』も秀作には違いない。切ない歌詞、晩秋の風景を聴き手に描かせる旋律が、実に心地良い曲である。特に、この曲の歌詞は秀逸の出来栄え。

 

 

♪心がシュンとした日には 胡桃色した風の中
 背中をキュっと弓なりに 流れる雲を数えるわ
 Uh ひとりぼっちは嫌い
 
"シュン"や"キュ"という、可愛らしい擬音を織り込むのは、さすがの松本隆氏といったところ。ちょいとコミカルな描写を交えながらも、とある少女のセンチメタリズムを美しく描いた傑作なのである。この曲が未だもって根強い人気を誇るのは頷けるところ。

 

 

もしも美枝さんが『ピンクの鞄(トランク)』をメイン楽曲として歌い、それに関連するテレビCMが予定通りに放送されていたとしたら...。彼女は滑り出しはもっと素晴らしいものとなり...それこそ、同じ『スター誕生』出身の岡田有希子嬢と新人賞を争うくらいの存在にはなれていたのカモ。少なくとも、デビュー当時の彼女には、そういった未来を描かせる存在感と風格を感じさせてくれたのだから。

 

 

だから"あの"デビュー当時のケ躓きが"なおさら"痛く感じてしまったりで。あれさえなかったら...今となっては「たられば」話となってしまうのだが、なんとなくこのようなことを思い続けながら..気づけば20年以上の歳月が流れてしまったのである。

 

 

 

☆作品データ
作詞:松本隆 作曲:松尾一彦 編曲:川村栄二(『ひとりぼっちは嫌い』)
作詞:松本隆 作曲:細野晴臣 編曲:大村雅朗(『ピンクの鞄(トランク)』)
1983年度作品・CBSソニー