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今回レビューをカマそうと思うのは…実はすでに1度記事としてアップしている楽曲である。しかもソレはこのブログの草創期に書いた記事であり、まだコンセプトが定まっていなかったこのブログにおいて1つの記事で2曲をレビュってしまったのである。これは彼女のデビュー曲がとある事情により両A面扱いとして発売されることになったからなのである。過去記事では限られたスペースと字数により、それぞれの曲に関して突っ込んだレビューが全く出来なかったというお粗末さ。それこそ穴があったら入りたい!そんなキモチなのでゴザイマス。(笑)

でなぜに今回ソレをまた蒸し返そうとしているのかというと…実は例の動画サイト(通称:ようつべ or YT? )に‘幻’とまで呼ばれた彼女のTVコマーシャルがうPされたからなのでありまする。そのコマーシャルとは江崎グリコから1983年の秋頃に発売された…

ファンシーキャル

というお菓子を宣伝するためのフィルム。このお菓子はティーンの女の子達をターゲットにしたシロモノで、ハート型のビスケットにきゃわゆいイラストが施され、裏面はチョコレートコーティングがされていた。雰囲気的には「キディランド」の姉妹品?のような風情が漂う商品だったのである。

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ファンシーキャルをほおばる美枝チャン18枚のクッキー入り裏にはチョコのコーティングピンクのトランク型したパッケージ

しかしこの商品…一旦発売されるにはされたのだが、商品自体に何らかの問題が発見されたのかなんなのか…

販売中止

という予想外の事態を喰らってしまったのである。そして、そのコマーシャル自体も早々とオンエア中止となりブラウン管から一切合財流れなくなってしまったという、いわば曰く付きの商品だったのである。これがこのコマーシャルが‘幻’と言われている所以なのである。個人的にもずっと見たかった動画…その願いが二十ウン年ぶりに叶ってしまった…という、うP主サマには大感謝といったキモチなのである。

そのCM内でコマソンとして使用されていたのが、表題の「ピンクの鞄(トランク)」というチューン。これは当初、高橋美枝さんのデビュー曲として発売される予定だった楽曲とも聞く。高橋美枝さんと言えば「ひとりぼっちは嫌い」という、かの傑作を引っさげて1983年11月21日にデビューされた方なのだが、実際のところはこちらの「ピンクの鞄」がA面曲としてプッシュされる予定だったらしい。しかし例のお菓子が販売中止という予期せぬアクシデントを喰らったおかげで美枝ちゃんプロジェクトはめちゃくちゃ。アイドルデビュー早々にしてケ躓いてしまったのである。でこの曲はというと…隅に追いやられる形となってしまい、最終的にはB面(表向きには両A面というフレコミだったのだが)に収録され世に出回ることになったのである。これこそが‘予定だった’の理由と言えるトコロなのである。

この曲において注目すべきはその作家陣…

作詞:松本隆 作曲:細野晴臣 編曲:大村雅朗

というヒットメーカーが大集結!ゴールデンどころかプラチナトリオ?とおぼしき、ものすごいメンツにより作り上げられた楽曲なのである。美枝さんの所属はCBSソニー、そして担当ディレクターは若松氏ときたら…そうなんです。80年代における太陽の女王、松田聖子さんのソレとまるっきり同じ布陣という豪華っぷり。タイトルに‘ピンクの…’ときてる時点で聖子風の高品質で正統派な匂いがプンプンと漂ってくるのでありまする。

豪華な作家陣、「スタ誕」出身、CBSソニー所属、グリコの新製品CMでお披露目

とコレ以上は不可能!?といった‘超’が付くほどの実に恵まれたお膳立て。なんせ美枝さんは所属先のソニーから直々に‘金の卵’と呼ばれていたほどの期待度1000%娘だったのである。なのでこれほどまでに気合の入りまくったデビューを準備してくれていた…というのは頷けるところでもあるのだ。

♪ふられたの 割と明るく 
 てのひらに ピンクの鞄(トランク)

細野氏らしいテクノっぽいサウンドを施した短いイントロに引き続いて、美枝ちゃんはこのように歌い始めるのである。鞄(かばん)と書いて‘トランク’と読ませるあたりが実に松本センセイらしい‘いいお仕事’っぷり。例のお菓子「ファンシーキャル」は…

ピンク色のトランク型した‘てのひら’サイズの小さな箱に18枚のクッキーが封入

といった商品。それこそこの楽曲はソレに沿わせまくって作り上げたモノ…ということになるのである。もちろんCMで使用された部分も♪てのひらに~の箇所からなのは言うまでもないか。それにしても歌の出だしから♪振られたの~ってのを持ってきて聴き手の触角をビビっと動かさせるあたり…さすがは松本センセイでゴザイマス。

♪あなたの匂いのする 都会にいたくない
 心のファスナーから 涙がにじむから

♪雨にぬれたレールの上 歩きたい気分よ

心のファスナーから涙がにじむ…なんとスバラシイ比喩表現なのか。ファスナーから液体がジワリとにじみ出てくる様を聴き手にパっと浮かばせるという巧みな技。ここでも松本センセイはスバラシイお仕事をされているようでゴザイマス。

雨にぬれたレール=つるりんコンと滑りやすく危険…この彼女はふられたことにより気分がクサクサ。もう私の人生なんてどうなっていもいい!という自暴自棄に陥っている状態からの発想なのか、おそらくは。

♪ふられたの 好きってきいて
 そのあとの静けさ
 何年も受話器握って 
 待っている そんな気がした

携帯もメールも無い頃の曲…人に意思を確かめる際は、それこそ手紙か電話の2種類くらいしか手段が存在しなかった時代である。重大なことを質問した後の…電話のむこうで黙られてしまうあの重くどんよりとした空気…うん、自分にも似たような経験が1度や2度はあったような。ソレはたしかに♪何年も受話器握って~待っている~まさにこの表現どおりの嫌なモーメントでゴザイマシタわ。

それにしてもこの曲のタイトルになっている‘ピンクの鞄’ってのはナニを意味してるのだろうか。実はそこら辺りに関してはこの曲の最後に‘隠し玉’として控えているのでゴザイマス。ほら…見てよ。

♪想い出と着替えを少し
 つめこんだ ピンクの鞄(トランク)

ふられたことにより‘あなたの匂いのする都会にいたくない’と感じた主人公様。そして傷心旅行(センチメンタル・ジャーニー)カマし(注:行き先は2番の歌詞から真冬行きだったことが判明)を決意した彼女のトランクがピンク色してた…というワケなのである。但し、この傷心旅行は空想上の…それこそバーチャルなものなのかと思われるのである。なぜならばここで唄われているピンクの鞄(トランク)とは…

♪てのひらに~ピンクの鞄(トランク)

‘てのひら’サイズだからなのである。パッキングにおけるプロフェッショナルがどんなに頑張ったとて…てのひらサイズの鞄(トランク)に着替えまでをも詰め込めむのは至難の業かと思われるのである。(笑)

いやはや…それにしてもクオリティが非常に高い作品である。これだから‘聖子のボツ作品’‘聖子の亡霊を背負った美枝ちゃん’などと、よからぬ噂を囁かれてしまうのもいた仕方のないところと言えようか。この曲は聖子さんが歌ってもなんら違和感のない仕上がりっぷりでありまして…それこそご本家様が歌ったらオリコン1位なんてかる~くゲットできたのでは?と思わせるような高品質。

この曲はオリコン120位を記録(「ひとりぼっちは嫌い」とのC/Wとして)したものの、100位入りを逃してしまうという結果に。CMは流れないわ、テレビでのお披露目(実は1度だけありまして動画が手元に^^)もないわ...しかも事実上の裏面扱いじゃなぁ。これだけ気合の入った高品質作品が…

販売中止の商品のせいでスポットライトを浴びず仕舞い

ってのは実にもったいなかぁ~そんな風に感じてしまうのである。完璧とも思えるお膳立てをしていた美枝陣営、そしてCMに出てご愛嬌を振りまいたご本人の美枝ちゃんだって…

♪心のファスナーから 涙がにじむから

こんな心情だったのではなかろうか、おそらくは。未だもって悔やまれる24年前の秋に勃発した出来事でゴザイマシタとさ。

☆作品データ
作詞:松本隆 作曲:細野晴臣(1983年度作品・CBSソニー)
参考商品:グリコ「ファンシーキャル」(1983年発売・江崎グリコ)