夢なのに


胸の高鳴りが止まない…




寝返りをうつと
広い背中に顔がぶつかった



柔軟剤の香りに
微かに混ざる男の匂いを
胸いっぱいに吸い込んで



ああ


夢じゃなかった、と
安心したとたん


しっかりと抱いた腕の感触が
不意に
曖昧になった



からだの幅も
厚みも
抱きあった姿勢のまま


エアーとなった男の胸に
顔をうずめる



泣くなんて
たやすいこと



少し



呼吸を乱せばいい




眠りつつ髪をまさぐる指やさし
夢の中でも私を抱くの
俵 万智