泣く大人

《引 用》

好きなひととは、ずっと一緒がいいに決まっている。
一人の時間も大切、というような言い方もある。
そうかなあ、と思う。
だってもともと一人なんだから、それ以上一人になって、どうするのだろう。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
私はいつもそばにいてくれる男のひとが好き。ほんとうのことを言えば、会社にも行ってほしくない。
床屋だけは別。床屋に行って、髪が短く清々しくなり、いい匂いをさせて帰ってくる男のひとと再会する幸福のために、床屋の１時間だけは離れて待っていてあげる。
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女友達にその話をすると、みんな呆れ顔をする。
そんなにいつも一緒じゃわずらわしい、と言う。
そうかなあ、と、私は疑う。
ㅤㅤㅤㅤㅤ
いつもいつも一緒にいてくれることが無理でも、
いつもいつも一緒だと思わせることは可能なのに。

「いつもそばにいてくれる男」
                                                        / 江國  香織

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《異  聞》

好きなひととは  ずっと一緒じゃなくていい
一人の時間こそ大切、という生き方もある
それは だめなのかなぁ、と思う
だってもともと集団のなかに生きているのだから  
さらに纏わりついて どうするのだろう
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
私はいつもそばにいる男のひとが苦手
週末だけ一緒にすごせるのなら  
その週末に向け全力になる

床屋は例外
床屋に行って、できたての温い泡を盛られ
蒸しﾀｵﾙの下で生き返る男を 最初に見る幸福のために 床屋の一時間を同伴して待つ
ㅤㅤㅤ
そんなことは 思っているだけで 口にしない
いつも一緒じゃ 早晩 飽きられ
見向きもされなくなるんじゃなかろうか
そうでなければいいのに、と わたしは怯える
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いつもいつも 別々の旅に出かけても
いつもいつも 同じ場所に帰ることは可能なのに

「いつもそばにいない女」
                                               /cc


ネイル 目  一度始めたらエンドレス笑い泣き